Vol.43 『ぴょーん』作者・まつおかたつひでさんインタビュー
赤ちゃんとの絵本の時間を楽しみたい、すべての方へ。選りすぐりの赤ちゃん絵本の誕生秘話や、作家さん・編集者さんが絵本に込めた思いを伺いました。赤ちゃん絵本を楽しむヒントが詰まったインタビュー、今回は、まつおかたつひでさんにご登場いただきます。
『ぴょーん』は私が初めて幼児向けにつくった絵本です。私は人付き合いが苦手なのですが、小さい子どもは大好きなので、編集部から「幼児が最初に出会う科学絵本を」とリクエストをいただいた時はうれしかったですね。幼児の本能を刺激するような絵本をつくりたいと、前から思っていましたから。
『ぴょーん』のアイデアは、仕事でアメリカに行った帰りの飛行機で思いつきました。乗り物では寝られない体質なので、いつも仕事のアイデアを考えることにしているんです。その時も、飛行機の中で幼児のための科学絵本について考え始めました。そうしたら急に飛行機が大きく揺れて、体が「ぴょん!」と跳びあがるような感覚を体験して…そこから、いろいろな生き物が「ぴょーん!」と跳ぶというアイデアをひらめいたんです。その場ですぐにラフを描き、帰国後に編集部に見せて、『ぴょーん』が完成しました。
どんな生き物をどんな順番で登場させるかは、わりとすんなり決まりましたね。カエルや猫、犬、バッタ、ウサギなど、子ども達に馴染みのある生き物達を中心に考えていきました。絵本は横開きが多いですが、跳びあがるというテーマに合わせて、上下の動きが出るように縦開きにしています。また、幼児が理解しやすいように、見開きふたつのストーリーを連続するような展開で構成しました。
『ぴょーん』が出版されたのは2000年なので、来年で20周年。中国や韓国、フランス、ロシア、アルゼンチンなどでも翻訳出版されています。
長く愛される絵本になった一番のポイントは、絵本の中の動物達が正面を向いていることだと思っています。まっすぐ読み手の方を見つめているように描いているので、子ども達は見られているような気分になって、つい絵本の中に引き込まれてしまうんです。人間以外の哺乳動物を観察していてもわかることなんですが、小さいうちは特に見られていることに敏感なんですね。この絵本を読んでもらっていると、「ぴょーん」のくり返しの中で何度も見られている気持ちになって、気づけばとりこになってしまうのかもしれません。
『ぴょーん』は幼児向けではありますが、生き物の形は正確に描いてあります。カエルの足の指は前が4本で後ろが5本とか、トビウオの尾びれは上が短いとか、そういうあたりですね。絵本をきっかけに、赤ちゃんのうちから少しずつ自然科学に親しんでもらえたらいいなと思います。
絵本の読み聞かせは子どもの思考力を育みます。でも、本物の自然を見たり体験したりすることも大切です。赤ちゃんを抱きしめて、自然観察を一緒にしてみてください。お母さん、お父さんの感動が子どもの感動とシンクロし、自然を好きになれば、子ども達が虫や小動物を怖がることもなくなるはずです。
まつおかたつひでさんの絵本『うわーっ』に直筆サインを入れていただきました! ミーテ会員3名様に抽選でプレゼントします。
プレゼントの応募は締め切りました。当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
松岡 達英(まつおか たつひで)
1944年、新潟県生まれ。科学絵本の第一人者として、数多くの科学絵本を執筆。『バッタロボットのぼうけん』(ポプラ社)で産経児童出版文化賞・美術賞、『野遊びを楽しむ百年図鑑』(小学館)で小学館児童出版文化賞、『イモリくんヤモリくん』(岩崎書店)で日本絵本賞など、多数の受賞作がある。ミリオンセラーとなった『ぴょーん』(ポプラ社)の他、『だんごむし うみへいく』(小学館)、「あまがえるりょこうしゃ」シリーズ(福音館書店)など作品多数。近作に『どっち?』(ハッピーオウル社)がある。
アトリエ.グリーンワークス http://www.gw-gallery.com/