Vol.5 『やさいさん』作者・tupera tupera 亀山達矢さんインタビュー
赤ちゃんとの絵本の時間を楽しみたい、すべての方へ。選りすぐりの赤ちゃん絵本の誕生秘話や、作家さん・編集者さんが絵本に込めた思いを伺いました。赤ちゃん絵本を楽しむヒントが詰まったインタビュー、今回はtupera tuperaの亀山達矢さんにご登場いただきます。
娘が1歳の頃、財布からカードを出す遊びにはまっていたことがあったんですね。様子を見ているうちに、カードを引き抜くのが楽しいんだなって気づいて。それで、箱に切り込みを入れて、野菜の絵を描いたカードを差し込み、すぽーんと抜いて遊ぶ「やさいカードばたけ」(※)というおもちゃをつくったんです。
それからしばらくして、片側のページが上や下に開くしかけ絵本をつくろうというお話をいただいんですが、それなら「やさいカードばたけ」の野菜を抜く動きが使えるな、と結び付きました。そうしてできあがったのが、『やさいさん』です。
野菜の顔は、かぶは女性だな、じゃがいもはおじさんだな…といった感じで、インスピレーションとノリでどんどんつくっていきました。その一方で、野菜や葉っぱの色合い、形、質感などは、本物を意識して制作しています。シンプルな中に、遊び心と真面目な部分の両方が合わさっているので、そのギャップを面白がってもらえたらうれしいですね。
※「やさいカードばたけ」のつくり方は『tupera tuperaの手づくりおもちゃ』(河出書房新社)で紹介されています。
僕らの作品づくりの原動力は「いたずらしたい」「笑わせたい」という遊び心。それは赤ちゃん絵本の場合も同じです。『あかちゃん』では、まんまるの版型を生かして、誰もがお母さんになってしまうしかけを実現しました。赤ちゃんだけでなく、読んであげる大人も笑顔になれるんじゃないかと思います。赤ちゃんとのコミュニケーションツールとして、一緒に楽しんでもらいたいですね。
0、1、2歳のための絵本は、お話がわかるようになってきた子に向けた絵本とは全然違って、何がウケるのかわからないので、とても難しいです。でもだからこそ、つくり手としてはやりがいも感じて、挑戦したくなります。世の中にはたくさんの赤ちゃん絵本があると思いますが、僕らとしては、今までにないような赤ちゃん絵本を生み出していきたい。そしてそのためには、つくり手である僕ら自身が面白がりながらつくっていきたいなと思っています。
プレゼントの応募は締め切りました。当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
tupera tupera(ツペラツペラ)
亀山 達矢(かめやま たつや)
1976年、三重県生まれ。1978年、京都府生まれの中川敦子とのユニット「tupera tupera」として2002年より活動をスタート。絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、舞台美術、アニメーション、雑貨など、様々な分野で活動中。『かおノート』(コクヨ)、『やさいさん』『くだものさん』(学研)、『うんこしりとり』(白泉社)、『いろいろバス』(大日本図書)、『パンダ銭湯』(絵本館)など著書多数。NHK Eテレの工作番組「ノージーのひらめき工房」のアートディレクションも担当している。(profile photo by RYUMON KAGIOKA)