絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、『へんしんトンネル』などでミーテでもおなじみの、あきやまただしさんです。「まめうし」や「たまごにいちゃん」といった、子どもたちに大人気の個性的なキャラクターは、どのようにして生まれたのでしょうか。全国を飛び回っての絵本ライブや子育てにまつわるお話も伺いました。
今回は【後編】をお届けします。 (←【前編】はこちら)
1964年、東京生まれ。東京芸術大学デザイン科卒業。『ふしぎなカーニバル』(講談社)で第14回講談社絵本新人賞、『はやくねてよ』(岩崎書店)で1995年日本絵本大賞受賞。主な作品に「へんしん」シリーズ(金の星社)、「まめうし」シリーズ(PHP研究所)、「たまごにいちゃん」シリーズ(鈴木出版)、「パンツぱんくろう」シリーズ(講談社)、「さかさのこもりくん」シリーズ(教育画劇)などがある。
http://www.akiyama-tadashi.com/
▲まめつぶくらいの小さな子うしが主人公。冒険いっぱいの毎日を描く『まめうし』(PHP研究所)
キャラクターづくりは、漫画を描いていたときのノウハウがすごく活きていますね。毎週4キャラずつ登場させるような漫画を描いていたことがあって、そのときつくったキャラが500くらいあるので、それを小出しにしたり、また新たなキャラをつくったり……いずれにしても、ただのくまさんとかうさぎさんではなく、一発で名前を覚えてもらえるような、インパクトのあるものにしています。
キャラクターの顔は、丸を基調にしてるんですよ。子どもが自分で描けるかどうかってところからキャラづくりを始めるので。線を描くと漫画的だと言われたりもするんですけど、子どもは塗りたくって絵を描くというよりも、まず線を描くでしょう。だから線を見せるような形にしています。
くちばしがあるとか、眉毛がつながってるとか、そういう記号みたいなパーツがあって、それさえ描けば、多少配置が違っていてもそのキャラになっちゃうというのが、いいキャラだと思うんですね。そっくり描くのは子どもにはちょっと難しいけど、パーツさえ似せて描ければ「まめうし」になる。そんなシンプルなキャラクターづくりを心がけています。
キャラクターの個性を大事にしていきたいっていうのは、常にありますね。それはそのまま、子どもたちへの思いでもあるんです。自分の世界を見つけたら、まっしぐらに突き進んでほしいなと思っています。
絵本って、エンターテイメントとして相当な力があるなと思うんです。ただ読むだけで子どもを熱狂させることができる。これは僕にとっても驚きでしたね。長さもちょうどいいし、おもしろくなければ引っ込められる手軽さがあって、肩ひじ張らず、何度でも楽しめる―― それが絵本の魅力かなと思います。
とはいえ、絵本もきちんとつくり過ぎると、すぐに飽きられてしまうんですよね。なので僕は、最後のページで結論を描いたりせずに、可能性を残すようにしているんです。その方が子どもたちも自由に楽しめますしね。自分のその先の創作にとっても大事なことなので、広がりを感じられるような絵本をつくるようにしています。
絵本は夜寝る前に読むという方がほとんどかと思うんですけど、僕はいつでもいいと思うんですよ。眠気をこらえながら読むよりも、しつこく子どもにせがまれても嫌じゃないと思えるくらい、大人もコンディションのいいときに、たっぷり時間をかけて楽しんでもらえるといいですよね。
絵本を楽しめば楽しむほど、その時間は子どもにとって大切な思い出になると思うんです。子どもと親がコミュニケーションをとるときに、絵本が真ん中にあってくれるといいな、そしてそれが子どもにとってかけがえのない思い出になれば、本当にうれしいな……そんな気持ちで絵本をつくっています。
ロングセラーの絵本ばかりが売れ続けて、なかなか新しい絵本が残らないのが現状ですけど、絵本の可能性ってまだまだあるなと自分の中では思ってるんですね。まだ誰もやっていないような表現っていうのがきっとあるはず、と絶えず考えています。これからも、その可能性を探りながらチャレンジしていきたいですね。
子どもが赤ちゃんだった頃のことを振り返って思うのは、かわいかったなぁということと、本当にあっという間だったなということ。もちろん、今もかわいいんですけどね。
僕の場合、仕事に活かそうと思って子育てをしているところもあったので、子どものいいところも悪いところも、すべて受け入れることができたんですよ。遊ぶときは徹底的に遊んだし、ケンカしてわざと怒らせてみたりもしたし……いろんなことを極端にやってみて、子どものおもしろいところを引き出していきました。それはもう、全力投球ですよ。全力でやらないと、子どもの本質は引き出せませんから。面倒くさいことも、とことんまでやろうっていうのがポリシーでした。子どもにとっては、おもしろいお父さんだったかもしれませんね。僕自身は、幸せな子育てをさせてもらったなぁと思ってます。
子どもの自然な成長に任せるっていうのは、子育てにおける僕の一つの課題でした。僕の絵本全体のテーマにもなってるんですけどね。親がああだこうだと言わなくても、子どもは自然に育っていくんですよ。親はそれを見守りながら、サポートしてあげればいいんです。何があってもちゃんと戻る場所があるんだよっていう安心感を持たせてあげていれば、大丈夫。
ちょっと成長したかと思ったら、こわくなってまた子どもに返りたくなったりして、行ったりきたりもあるけれど、子どもはちょっとずつ成長していくものなんだと、僕自身、子どもたちを見ていて実感しましたからね。無理強いせずに、自然体に任せるのが一番だと思います。
そのためには、親の我慢も必要です。平常心で子どもを見守り続けるっていうのは簡単なことではないけど、とても大事なことですからね。といっても、ただただ甘いというのではなくて、厳しく言うべきときは厳しく言う。緩急ですよね。難しいかもしれないですけど、親が子どもを通して自分を見つめるっていうのが、子育ての本質でもあると思うんですよ。親が自分を高めていければ、子どもも自然と成長していくんじゃないかと。僕自身も、子育てを経験したおかげで、だいぶ我慢強くなりましたよ(笑)