絵本作家インタビュー

vol.44 絵本作家 山本祐司さん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、『ぶっぶーどらいぶ』などで絵を描かれている山本祐司さんです。『パパのるすばん』をはじめとした5冊の絵本「かぞくえほん」シリーズで初めて作・絵の両方を手がけられたという山本さん。絵本づくりへの思いや、地元での活動、子育てについてなど、じっくり伺ってきました。
今回は【後編】をお届けします。 (←【前編】はこちら

絵本作家・山本祐司さん

山本 祐司(やまもと ゆうじ)

1966年、京都生まれ。大阪デザイナー専門学校、セツ・モードセミナー卒業。『ぶっぶーどらいぶ』『すなばでばぁ』(文・中川ひろたか、主婦の友社)、「かぞくえほん」シリーズ(ポプラ社)などの絵本のほか、『ビーズのてんとうむし』(作・最上一平、童心社)、『児童書版 ホームレス中学生』(著・田村裕、ワニブックス)といった児童文学の挿絵、雑誌・広告、ヤクルトカレンダーの絵など幅広く活躍中。
トコトコネット http://tokotokoyu.exblog.jp/

「もう一回読んで」と言われる絵本をつくりたい

絵本作家・山本祐司さん

「かぞくえほん」シリーズの前にも、ほかの出版社から絵本をつくってみませんかと声をかけてもらって、ラフをつくって見せたりはしてたんです。でも、全然未完成のままで……今回は、絶対出版するからって熱心に言ってもらって、それで本気でやるようになって、完成させることができました。

初めて作・絵の両方をやってみて、大変さはわかったんですけど、でもこれからも自作絵本をつくっていきたいと思ってます。一回出すと、なんか癖みたいに、どんどん続けて出したくなるんですね。目覚めてしまったような感じで。

絵本づくりはおもしろいです。個展に出す作品とはまた違って、絵本なら、全国の本屋さんでいろんな人に見てもらえるし。自分の絵本が本屋さんに並んでるのを見たときは、やっぱりうれしかったですね。作・絵を手がけた絵本はまるで、自分の分身のようです。

次は動物の絵本をつくりたいですね。まだアイデアを出してるような段階なんですけど。1年ぐらい前から、家でウサギを飼ってるんですよ。なんか急に飼いたくなって……ぽるちゃんっていう名前なんです。ウサギの絵本とかもかわいいかな。

子どもに絵本を読んであげたとき、好きな絵本だと子どもは必ず「もう一回読んで」って言うでしょう。そんな絵本をつくっていきたいです。それから、お母さんにも読んでほしい。お母さんって、子育てや家事で、息がつまりそうなこともあると思うんです。そういうときに、ほわーんと息抜きしてもらえるような、お母さんがちょっと楽になるような絵本をつくっていきたいです。

小学校の昇降口に描いた大きな壁画

うちの息子たちは今、上が小学校5年生で、下が2年生です。今年の夏、息子たちの通ってる小学校で、僕の描いた絵を壁画にするっていうイベントをやったんですよ。校長先生が昔、美術の先生だったんですね。それで、そういうのが好きみたいで。

駅とか海とか、実際にあるお店とか、学校の近くの風景を描いた僕の絵をもとに、壁画を描きました。原画を映写機で下駄箱の脇の横6メートル縦3メートルの壁に映して、下書きまで描いてから、色塗りは子どもたちでやったんです。高いところは脚立に乗って。顔だけ、僕が描いたんですけどね。みんな楽しそうに色塗りしてました。子どもは絵がうまくて、 天才だ!と思いました。夏休み明けに初めて見た子とかは、驚いたみたいですけど。楽しかったですね。

写生会とかにも声をかけられて、奥さんと一緒に参加して、子どもたちに教えたりしてます。地域密着型の絵本作家なんですよ。

壁画の写真、廊下の山本さんコーナーの写真

▲子どもたちと一緒に描いた小学校の昇降口の壁画。廊下には、壁画のもととなった絵や山本さんの絵本を飾ったコーナーも。

子どもたちの中には、将来、絵本作家やイラストレーターになりたいって思う子もいるかもしれない。本当になるには、やっぱり描き続けるしかないです。あきらめず、続けること。やり続けた人しか、なれないから。初めは下手でも、続けていれば上手くなっていくし。

ただ、いい加減な気持ちで、うまいこといってなれたらいいわって程度の思いではだめなんです。それでは絵本作家やイラストレーターにはなれないし、もしなれても続けられない。真剣に、絶対になるんだ!ってくらいの決心がいる。失敗したら一生貧乏かもしれないけど、それでもいいってくらいの覚悟が必要だと思います。

大事にしよう 子どもとの時間

絵本作家・山本祐司さん

僕は家で仕事をしてるから、子どもが小さかった頃は、子育てにかかわらざるをえなかったんです。仕事中でも泣いてたら見に行って、おしめを変えたりしてました。

家にいると、あんまり働いてるって思ってもらえなかったりするんですね。絵を描いてなくても、いろいろアイデアを練ろうと考えてたりすることもあるんやけど、ただ座ってるだけ、みたいに思われて……(笑)「そこにいるんだったらちょっと手伝ってー!」って、すぐ呼ばれるんです。特に赤ちゃんの頃は大変でしたね。

でも、家で仕事していても、切り替えはすぐできる方なんですよ。仕事部屋にいるときだけ仕事、それ以外の部屋にいるときは家族と過ごす。別に何をしてるわけでもなくて、ただ一緒にいるだけだけど。土日は仕事をしない、とか、日曜日は子どもと一緒にキャッチボールするとか、そういうのは特にないけど、会社勤めで毎晩帰りが遅い人は一緒にいることだって難しいやろうから、一緒にいられるだけで幸せです。家族にはとても感謝してます。

振り返ってみると、子どもが小さいときっていうのは、本当にちょっとしかないんですよね。ほんの1年から3年くらいでしょう、一番かわいいその時期を大事にしてほしいですね。できるだけ、子どもと一緒にいたらいいんちゃうかな。そうしないともったいないって思います。


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