絵本作家インタビュー

vol.36 絵本作家 あきびんごさん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回は、デビュー作『したのどうぶつえん』で日本絵本賞を受賞された、あきびんごさんにご登場いただきます。芸術家であり、幼児教育の研究家という顔も持っているあきびんごさん。還暦で絵本作家デビューするまでのいきさつや、絵本と子育てについて思うことなど、熱く語っていただきました。
今回は【後編】をお届けします。 (←【前編】はこちら

絵本作家・あきびんごさん

あき びんご

1948年、広島県尾道市生まれ。東京芸術大学日本画卒。幼児教育の研究家として、さまざまな教材・教具・文具を開発。絵画や染付などの個展活動や、絵画教室も行っている。2008年、デビュー作『したのどうぶつえん』(くもん出版)で第14回日本絵本賞受賞。そのほかの絵本に『したのすいぞくかん』『あいうえおん』(いずれもくもん出版)がある。また、教育書に村上潔の名で『北風ママと太陽ママ』『太陽ママになろう!』(PHP研究所)がある。

絵本で育もう、子どもの創造性

あいうえおん

▲これ1冊で、「あいうえお」が好きになる!『あいうえおん』(くもん出版)

僕の絵本でおすすめしたいのは、どんどん付け足すこと。たとえば「あひるの あかちゃん あまえんぼ」ってところには、「あかいベンチ」とか、「あそんでる」とか、他にもいろいろな答えがあるから、書き込んでいく。『したのどうぶつえん』に、自分の考えついた動物を書き込んでいく。名前だけじゃなく絵も。するとその絵本は、世界に一冊しかない本に成長していくんです。それが、ものづくりのはじまり、創造のおもしろさ。見るだけの人から、踊る人になっていく。

僕の絵本についていえば、いっぱい書き込まれて、ボロボロになっても使われている絵本こそが幸せな絵本。少年時代の僕の思い出になっている絵本は、みんなそういう本です。

能力を、「問題を解く力」と「問題をつくる力」にわけると、創造性は、問題をつくる力なんです。まじめ勉強の世界は解く力ばかり。でも、世の中に出ると、つくる力の方がうんと役に立ちました。そして、つくる力は子どもの時から練習していれば、身につきやすいんです。

子どもを“子ども扱い”するのはやめよう

したのすいぞくかん

▲“したの”シリーズ続編『したのすいぞくかん』には、だじゃれだけでなく回文も!(くもん出版)

以前、「幼児と母親の色の好み」について実験したことがあります。80色の中から好きな色を選ぶのですが、子どもたちに人気があったのはカナリア色や梅鼠(うめねず)といった中間色で、僕もびっくりしました。大人の選んだ色とあまり違わなかったんです。「子どもは原色が好き」という先入観があったから、びっくりしたんですね。原色しか与えられなかった子どもは、原色の中からしか選べない。僕も、美術方面に進まなかったら、24色しか知らないかもしれません。

僕が芸大に行ってびっくりしたのは、子ども時代の育てられ方の違いでした。多くの人は、わが家と違って、子ども扱いされることもなく、最初から文化的に育てられているのです。中間色の服を着て、ピカソを見て、モーツァルトを聴いていた。だから、教科書のピカソを見ても僕のようにたじろいではいない。

子ども扱いされて育った人は、60歳になっても感覚的には未熟なまま。でも、子ども扱いせずに育てられた人は、生涯そのままの感覚でいられる。三つ子の魂百までっていうけど、小さい頃に与えられたもので、大きな損得がでてしまう。

だから『あいうえおん』は、半分はあいうえおの遊びの絵本ですが、半分は90枚の画集のつもりでいます。子どもの時から絵画的なものに接していないと、ピカソがわかるようになるのは難しいんです。

子育ては親が成長する絶好のチャンス

絵本作家・あきびんごさん

今、子育て中のお母さん方には、子どもが生まれたのをきっかけに、自分をもっとおもしろく変えていくことをすすめます。子どもと一緒に自分も育てていく。幸せっていろいろな答えがあるでしょうが、成長し続けることが一番の幸せだと僕は思うんです。

子どもは、親が成長し続けるために、神様がおつかわしになったんだと。自分ひとりだったら「もうこのままでいいや」って思うかもしれないけど、子どもがいたら「このままではいかん、子どもとともに成長しよう」って思わないですか。そんな風にとらえて、子どもと一緒に成長していってほしいですね。

今は動物や植物の図鑑の絵本をつくっています。「子どもが小学校を卒業するくらいまでに、これだけは知っていてほしいな」ってものを描いているところ。僕には子どもはいませんが、「もしいたら、何を与えるだろう」とか、「子どもの時、どんな本がほしかったか、どんな本ならボロボロにしたか」と考えて本づくりをしています。すると、あいうえおや図鑑といった知的な基礎に眼が向いてしまいます。できるだけ教育的で、美的で、詩的で、できるだけおもしろくてあきないものを、与えてあげたいですね。子ども扱いでなく、人間扱いで。


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