絵本作家インタビュー

vol.27 絵本作家 たちもとみちこさん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回は、『アニーのちいさな汽車』の作者・たちもとみちこさんにご登場いただきます。「子ども」をテーマに、さまざまなジャンルで作品を企画・制作するレーベル「colobockle(コロボックル)」をディレクションしているたちもとさん。遊び心いっぱいの独特の世界観は、小さい頃の記憶が原点となっているようです。
今回は【後編】をお届けします。 (←【前編】はこちら

絵本作家・たちもと みちこさん

たちもと みちこ

1976年、金沢市生まれ。大阪芸術大学デザイン学科卒業。制作会社で3年間勤務後、独立。絵本作家として活躍する一方、グラフィックデザインやイラストレーション、映像、雑貨のデザインなども手がける。主な絵本に『アニーのちいさな汽車』(学研)、『てぶくろ』(ブロンズ新社)、『ことりのゆうえんち』(PHP研究所)、『おほしさま』(教育画劇)、『ニノのまち』(ピエブックス)などがある。
http://www.colobockle.jp

小さい頃の記憶をたどると、アイデアが湧いてくる

絵本作家・たちもと みちこさん

私は小さい頃の記憶をたどるのが好きで、絵本のアイデアも、記憶をたどっているうちに湧いてきたりします。子どもの頃住んでいた家やその近所の様子を思い浮かべて、そこを徘徊してみたり、昔不思議だなと思ったこととか、すごく楽しかったこととか、そういう記憶をもとに、空想の世界をふくらませていく感じですね。

小さい頃に母親とサイクリングしたこと、自転車で坂を上ったときにキャベツ畑が広がっていたこと、虫をつかまえて遊んだり、雪で遊んだりしたこと……どちらかというと、自然と戯れて遊んだときのことの方が、鮮明に覚えていますね。草の匂いとか、裸足で歩いた土の感触とか、些細な経験からも、想像が広がっていきます。同じ匂いを嗅ぐと、その頃の記憶にすーっと戻っていけたりするんですよ。

子ども時代の経験って、大人になってもすごく重要だと思うので、子どもたちにはたくさんのよい経験をさせてあげてほしいですね。できるだけいい環境で、いいものをたくさん見たり、いろんな体験をしたりする中で、それぞれの得意分野を見つけていくんじゃないかなと思います。そんな風に子どもが出会うもののひとつとして、自分も作品をつくり続けていきたいですね。

アナログ&デジタルで仕上げる、独特の世界観

絵本作家・たちもと みちこさん

私の絵は、クレヨンやパステル、アクリル、鉛筆など、いろんな画材を使って柄を描いて、それをコンピュータに取り込んで、コンピュータ上でコラージュして仕上げています。

3年間映像制作の会社にいたとき、アニメーションにしやすいように、手や足、目など、各パーツごとに分けて素材づくりをしていたんですね。それまでは、コンピュータなんてちょっとやだなとか思ってたんですけど、アナログな素材をコンピュータで動かしたり融合させたりできるというのは新たな発見で、それを絵の手法にも取り入れてみたらおもしろいんじゃないかと思って、今の描き方にたどりつきました。

布やボタン、葉っぱなんかを使うこともあります。一枚の絵の中にもいろんな要素を盛り込むことができるので、想像もふくらむんじゃないかなと思っています。

参加型の絵本なら、絵本の世界をさらに楽しめる!

『世界の民族衣装』

▲colobockle(コロボックル)のブックレーベル「Janetta Book」の第一作目『世界の民族衣装』(Colobockle.Inc)

絵と文で楽しむ絵本のほかに、『ニノのまち』(ピエブックス)や『あーんあーんあーん』(コクヨS&T)など、手を動かして参加する絵本もつくっています。私は小さい頃から工作や手芸が好きだったので、読むだけでも十分楽しいんですけど、参加すればもっと楽しく、絵本の世界に入っていけるんじゃないかなと思って。

2007年には、colobockle(コロボックル)のブックレーベル「Janetta Book」の第一作目として『世界の民族衣装』というしかけ絵本を出しました。

世界の民族衣装を各国の特徴とともに紹介する絵本で、組み合わせを変えて遊んだり、国旗を見てどの国かを当てたりして、楽しみながら学べるんですよ。男の子は「こんにちは」女の子は「ありがとう」という言葉をそれぞれの国の言葉で言っているので、いろんな国の言葉を知ることもできます。最後のページでは、自分の空想の国の衣装や国旗を描けるようにしています。

教育というとおおげさですけど、こんな風に参加しながら楽しく学べる知育絵本は、今後もつくっていきたいですね。


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