絵本作家インタビュー

vol.27 絵本作家 たちもとみちこさん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回は、『アニーのちいさな汽車』の作者・たちもとみちこさんにご登場いただきます。「子ども」をテーマに、さまざまなジャンルで作品を企画・制作するレーベル「colobockle(コロボックル)」をディレクションしているたちもとさん。遊び心いっぱいの独特の世界観は、小さい頃の記憶が原点となっているようです。
今回は【前編】をお届けします。 (【後編】はこちら→

絵本作家・たちもと みちこさん

たちもと みちこ

1976年、金沢市生まれ。大阪芸術大学デザイン学科卒業。制作会社で3年間勤務後、独立。絵本作家として活躍する一方、グラフィックデザインやイラストレーション、映像、雑貨のデザインなども手がける。主な絵本に『アニーのちいさな汽車』(学研)、『てぶくろ』(ブロンズ新社)、『ことりのゆうえんち』(PHP研究所)、『おほしさま』(教育画劇)、『ニノのまち』(ピエブックス)などがある。
http://www.colobockle.jp

幼稚園の頃から、夢は「絵本作家」

絵本作家・たちもと みちこさん

小さい頃は、外で活発に遊ぶ子どもだったんですが、雨の日は家の中で絵本を読むのが好きでした。特に好きだったのは、世界の絵本シリーズです。アメリカ、ドイツ、フィンランドなど、世界各国のお話が絵本になったシリーズなんですけど、『ボタンくんとスナップくん』とか『王様の好きなピックル・パイ』とか、タイトルだけでもユニークな絵本ばかりで、すごく気に入っていて、よく読んでいました。絵を描くのも好きでしたね。幼稚園の先生や近所のおばちゃんに「上手だね」と褒められると、うれしかった記憶があります。

幼稚園の頃には、詩のようなものを書いて、それに合わせて絵を描いたりしていました。その頃から、いつか絵本を描く人になれたらいいなと夢見るようになって。芸大に進んだのも、絵本作家になりたかったからなんです。でも、自分なりに絵本について探っていくうちに、絵本だけではなく、映像やおもちゃ、雑貨など、子ども向けのマルチメディア全般に興味を持つようになったんですね。大学の卒業制作では、子ども向けのアニメーションとそれに関連した絵本や積み木などのおもちゃをつくりました。

卒業後は、子ども向けのCD-ROMやビデオ、テレビ番組制作などをしている会社に入社して、映像制作の仕事をしていました。

素直な気持ちで描けた、はじめての絵本『アニーのちいさな汽車』

『アニーのちいさな汽車』

▲お誕生日にちいさな汽車をもらったアニーが森をお散歩するお話『アニーのちいさな汽車』(学研)

絵本を描きませんかという依頼をいただいたときは、長年の夢がかなうのでとてもうれしかったんですけど、絵本に対する思い入れが強かった分、なかなか描けずに苦労しました。やはり、絵本をつくるからには、何度読んでも飽きのこないような、普遍的なものにしたいと思っていましたし、ちゃんとしたものを出さないと……という意識が強すぎて、なかなか手がつけられなかったんです。

でも、学研の月刊誌「Pooka」の綴じ込み絵本の依頼がきたときは、締切もあり、追い込まれたときに、急にふっと力が抜けて、すごく素直な気持ちで描くことができました。そのときにできあがったのが、デビュー作となった『アニーのちいさな汽車』です。それ以来、絵本を描くことができるようになりました。

主人公のアニーはこぐまなんですけど、人間の子どもと変わらない生活をしているんですね。お父さんとお母さんにすごく愛されていて、近所の人たちにもあったかく見守られていて、素直にすくすくと育っている子として描いたんですけど、そんなあったかい雰囲気もあって、読む人に安心感を持ってもらえる絵本になったんじゃないかなと思います。

『はだかの王様』や『てぶくろ』といった名作絵本シリーズの絵を描けたのも、貴重な体験でしたね。昔から伝わっているお話は本当にいいものが多いので、普遍的要素をそのままに、今の子どもたちでもすっと入っていけるような絵本にできればと思って、チャレンジしました。今はまた『3びきのくま』という名作絵本をつくっているんですよ。

これからも、その絵本を読んだ子が大きくなってまた自分の子どもに読ませたいと思えるような、世代を越えて読み継がれる作品をつくっていきたいなと思っています。

想像の余地があるからこそ、絵本は楽しい!

絵本作家・たちもと みちこさん

絵本の魅力は、たった1ページの絵からも、いろんなことを想像できることだと思うんです。

私は子どもの頃、『ちびくろ・さんぼ』の絵本が好きだったんですね。ホットケーキがすごくおいしそうで。でも今見ると、ホットケーキといってもただ線で描かれているだけなんですよ。線だけのホットケーキでも、子どもの想像力って本当にすごい! すごくおいしく感じることができるんですね。だから絵本って楽しいんじゃないかなと。

なので、絵本をつくるときはいつも、想像の世界にひたっていられるよう工夫してるんです。昨年12月に出したアニメーションのDVDについても、そこにこだわりました。曲に合わせたショートストーリーがちょっとした出来事でどんどん続いていく『つづきのおはなし』という作品なんですけど、見終わってみてよく考えてみると、お話はあるようでないようなものなんです。2割くらいストーリーがあって、8割くらいは自然にそのストーリーに合うストーリーをつけたすような、何度見ても新たな想像がふくらんでいく作品になればいいなと思いました。

DVD『つづきのおはなし』

▲昨年12月に発売された初めてのDVD『colobockle animation つづきのおはなし』(クリエイティヴ・コア)

絵本の場合、自分のペースでめくって想像していけるんですけど、映像だとどうしてもただ見せられるだけで受動的になってしまいがちなので、いろいろと想像をめぐらすことで、お話の世界に参加してもらえたらうれしいですね。

それと、この『つづきのおはなし』で意識したのは、「かわいい」「たのしい」「おもしろい」「さみしい」「うつくしい」「ふしぎ」など、人間のいろんな感情がぎゅっとつめこむということ。なので、こわいシーンもあれば、やさしいシーンもあるし、すごく不思議なシーンもあります。30分の映像を見る間に、いろんな感情を味わってもらえたらと思ったんです。

人の気持ちにしても、勉強や仕事にしても、将来の夢についても、何に関しても想像力ってとても大切だと思うんです。子どもたちには、絵本を通じて、想像力を健全に養っていってほしいですね。


……たちもとみちこさんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→


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