絵本作家インタビュー

vol.20 絵本作家 あいはらひろゆきさん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、累計100万部を超える人気シリーズ「くまのがっこう」の作者、あいはらひろゆきさんです。あいはらさんが絵本の魅力に気付いたのは、お子さんが生まれてからとのこと。『くまのがっこう』誕生エピソードのほか、読み聞かせや子育てで大事にしたいことなど、たっぷりと語っていただきました。
今回は【後編】をお届けします。 (←【前編】はこちら

絵本作家・あいはら ひろゆき

あいはら ひろゆき

1961年、宮城県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大手広告代理店のマーケティングプランナーを経て、2000年バンダイ入社。バンダイキャラクター研究所所長として数々の調査研究に従事するかたわら、絵本作家、エッセイストとしても活躍。主な作品に、「くまのがっこう」シリーズ(ブロンズ新社)、『りんちゃんとあおくん』(ポプラ社)、『おひさまむらのこどもたち』『ラベンダー』(教育画劇)、「フラニーとメラニー」シリーズ、「くまのこミン」シリーズ(講談社)、子育て本『だれだってネオパパ』(岩崎書店)などがある。

シンプルだからこそ伝わる 大切なメッセージ

てをつなご。

▲父と娘との親子愛をやさしく描いた『てをつなご。』(教育画劇) 白を基調とした儚げな絵は植田真さんが手がけた。

絵本って、すごく制約が多いんです。テキストの量もページ数もすごく少ないし、子どものためのものなので複雑な表現もとれない。でも、だからこそ絵本は、ある種の哲学というか、大切なメッセージを伝えてくれるんだと思うんです。

たとえば僕の絵本でいうと、『てをつなご。』は、手をつなぐことの大切さ、すばらしさだけにしぼりこんでつくりました。子どもは少しでも不安になると、必ず手を伸ばしてきて親の手を握るし、親も子どもと手をつないでいることで、その温度を通じて自分の子どもに対する愛情とか、子どもからどれだけ必要とされているのかといったことを感じるんですよね。こういう大切なメッセージをひとつでも受け取ることができれば、それだけでその絵本は十分価値があると思います。

アニメーションや映画、小説のような媒体は、高度で情報量が多いために、どうしても複雑になりがちですよね。確かに現実の社会はものすごく複雑なんだけれども、本当に大事なことって、もっとすごく単純だと思うんです。「生きることって何?」「友だちって大事だよね」「食べるって楽しいよね」「僕はお母さんのことが大好き」とか。絵本はそういう、生きていく中で本当に大切なメッセージや思いを強く訴えることのできるメディアで、それはほかのメディアとは勝負にならないくらい、絵本のすばらしいところだと思います。そして、自分が作家としてそういう作品をつくることができるというのは、すごくうれしいことです。複雑な今の社会だからこそ余計、絵本は重要だと思いますね。

大切にしよう 思い出のつまった絵本

毎日のように繰り返し読むというのは、絵本ならではですよね。何度も読む中で、その絵本にはいろんな思い出がつまっていく――だから大切な絵本になるんです。中身のメッセージというのももちろん大事だけれど、絵本を通じて親子で過ごした時間とか会話とか温もりといったものが、本当は一番大切なんです。テレビの前でアニメを見るのと決定的に違うのは、そこだと思います。

思い出のつまった絵本は、汚れても捨てたりせずに、大事な宝物として、長く大切につきあっていってほしいですね。ぼろぼろになってテープで貼ってあるような絵本でも、破れてしまったことだって思い出ですから。僕の場合、最初に読ませた絵本は、絵本の角が子どもの目を傷つけたりしないかと気になって、全部の角にガムテープを貼るなんて親馬鹿なことをしてました。そういうのを見るのは懐かしいですね(笑)

誰にでも何冊か、本当に好きだという絵本があると思います。特に好きだという絵本は、思い出がたくさんつまっているはずなので、読まなくなってもどこか箱に入れてしまっておいて、子どもが大人になったときや結婚するときに渡してあげると、おしゃれだなと。親にとっても子どもにとっても、いわば宝物みたいなものですから、そういう大切な1冊に出会えることのすばらしさも感じられるとうれしいですよね。

親が笑顔なら、子どもも笑顔になる

よく公園なんかで遊んでいると、子どもがときどき振り返って親の様子を確認したりするでしょう。お母さんが笑顔で見守ってくれているのがわかると、また安心して遊びますよね。親子関係って、そのくらいの距離感がちょうどいいと思うんです。転んだからって、「大丈夫!?」なんてすぐに走っていかないで、どーんとベンチのあたりで見守ってるくらいがいいんじゃないかなと。

だから「くまのがっこう」シリーズには、大人を一切登場させていないんです。大人が出てくると、そこで完結してしまいますからね。ジャッキーが困ったときは、ある種の友情や兄弟愛でもって、同年代のおにいちゃんたちががんばって助けてくれます。その代わり、子どもたちだけという不安感を出さずに、ちゃんと親から愛されているんだという感じが伝わるように、テキストはお母さん的な語り口調にしています。親が見守ってくれているからこそ、あんなに元気に楽しく暮らしていられるんですよ。

子どもを見守る親は、いつもニコニコ、笑顔でいてほしいですね。子どもって親の顔、特に母親の顔を見てるんですよ。お母さんがニコニコしてると子どもも安心するし、ダンナも安心する。そうすると家族全体が幸せになれるんです。ガミガミ怒って、子どももギャーギャー泣いてたりすると、どんどん負のスパイラルにはまっていってしまう。それを避けるためにも、子どもの前では無理をしてでもニコニコするって決めるといいと思います。

子どもが小さい時期ってあっという間に過ぎてしまうし、その時期ってあとで振り返ると本当に宝物のような時間じゃないですか。だからその間は、できるだけニコニコと、笑顔で過ごせるといいですよね。毎日ニコニコだなんて、子育てはそんなにのんきなものじゃありません!と言われてしまうかもしれないけれど、僕はそういう家庭が理想的だなと思います。


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