絵本作家インタビュー

vol.148 絵本作家 宮野聡子さん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回は、「宮野家のえほん」シリーズなど温かい理想の家族像を描き続けている絵本作家・宮野聡子さんにご登場いただきます。子どもの頃からの絵本好きで、子どもの本の専門店での勤務歴もある宮野さん。デビュー作や人気作の制作秘話などを、キャラクターと内装デザインを手がけたイタリア料理店「プルーニャ」で伺いました。
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絵本作家・宮野 聡子さん

宮野 聡子(みやの さとこ)

1976年、東京都生まれ。女子美術短大情報デザイン科卒業。子どもの本の専門店勤務時代に、『ももちゃんとおかあさん-宮野家のえほん』でデビュー。絵本作品に『宮野家のえほん たっくんのおてつだい』(以上アリス館)、『あいちゃんのワンピース』(作・こみやゆう)、『えんそく おにぎり』(以上講談社)、『パンツちゃんとはけたかな』(教育画劇)。紙芝居の作品も。
ちいさなえほんカフェ http://miyanosatoko.at.webry.info/

『あいちゃんのワンピース』と『えんそくおにぎり』

『あいちゃんのワンピース』は、私が児童書店を、こみやさんは出版社を辞めた時期に一緒につくりました。ある時、日本の絵本界をもっと盛り上げたいねなんて話をしているうちに、「一緒に何かつくってみようか」という話になったんです。後日、7作くらいラフをつくってお見せしたら、これを気に入ってくださって。その後講談社さんで出版できることになりました。

私のブログのトップ画像には、この絵本の絵を使っています。ブログの名前は「ちいさなえほんカフェ」というのですが、いつか絵本カフェを開きたいという思いがあります。そんなことがあって、お店のキャラクターと内装のデザインを手がけたイタリア料理店の「プルーニャ」で、私の部屋から持ってきた絵本を数冊並べています。

次に出た『えんそくおにぎり』は、「季節と行事のよみきかせ絵本」シリーズの一作で、多くの作家さんがさまざまな季節の行事と食材をテーマにつくっているものです。編集の方から、「ハンバーグ、コロッケ、たこ焼き……」と子どもが好きそうな料理を並べたリストをいただいて、その中から一番好きなおにぎりを選びました。

作品をつくる時は、常に読んでくれる子どもの顔を想像しています。お弁当を開くシーンはどんな表情して見てくれるかなとか、新作の『パンツちゃんとはけたかな』の表紙だったら、「これとこれが好き」って言ってくれるかなとか。楽しい時間ですね。

実は、同じ主人公で続編が出るんですよ。「行事と食べもののよみきかせ絵本」シリーズで、タイトルは『おぞうにくらべ』。今年の12月に講談社から出版される予定です。

あいちゃんのワンピース

▲あいちゃんは最近背が伸びて、お気に入りのワンピースが小さくなってしまいました。あげちゃう? いや! では、お人形の洋服につくり直してあげましょう。『あいちゃんのワンピース』(講談社)。作は、こみやゆうさん

えんそく おにぎり

▲今日は初めての山登り遠足。きみちゃんは、お母さんと一緒に大好きなおにぎりをつくります。うまくできるかな?『えんそく おにぎり』(講談社)

実話から生まれた新作『パンツちゃんとはけたかな』

パンツちゃんとはけたかな

▲ピコちゃんは、近頃ひとりでパンツがはけるようになりました。でも、くまちゃんの絵がついたパンツだけはいつも後ろ前。その理由はね……『パンツちゃんとはけたかな』(教育画劇)

紙芝居の『ねずみくんとかばくんのみずあそび』(作は岡山真子さん)は、初めて動物を主人公にした絵を描きました。これを編集の方が気に入ってくださって、『パンツちゃんとはけたかな』は実現しました。

決まりきった動物ではつまらない気がして、見たこともない、だけど親しみが持てるキャラクターにしたいと、ピコちゃんは生まれました。いつも「犬ですか? それとも羊?」と聞かれるんですが、一応犬です(笑) 頭の辺りが羊っぽいかな。プードルがモデルなんですよ。

当時2、3歳だった知人の娘さんがモデルです。「うちの子、猫ちゃんのパンツをはく時は、いつも後ろ前にしちゃうの」って困っていました。絵はお尻の方についていたんだけれど、どうやら猫ちゃんには自分と同じ方に向いてもらって、お話ししたり、一緒に歩いたりして欲しかったみたい。パンツがモコモコして歩きにくかったと思いますけれど(笑)

これも続編が出る予定です。お昼寝をテーマにした絵本です。続編が出るってうれしいですね。子どもたちも「また会えるんだ」という楽しみができますよね。ただね、続編はハリネズミの子が主人公なんですよ~。この子、ピコちゃんといつもに一緒にいるんですが、既に存在が気になっている、という方もいらっしゃって(笑) 名前は次作で明らかになるので、楽しみにしていてくださいね。

安心できる人の声によって読まれた言葉こそ、子どもの心に染み込む

子どもの頃から絵本が好きで、子どもの本の専門店で働き、絵本作家になった私にとって「絵本の魅力」とは、人の温もりを感じられることです。鉛筆や絵の具の筆跡に作者の息遣いを感じますし、例えば写真絵本でもファインダー越しに写真を撮った作者の眼差しが見えます。人の手を通して表現された世界だからこそ、安心してひたることができる。

もちろん親子のつながりということもありますよね。小さいお子さんであれば字が読めないわけですから、大人の言葉を介して物語を伝えてもらう。人と人とのふれあいをより深める存在としても、絵本に魅力を感じています。

子どもの娯楽って小さい頃ほど数少ないので、読み聞かせの時間を大切にしてあげて欲しいと思います。子どもの読みたいという欲求を、なるべくその時に叶えてあげるのが理想ですね。「忙しいから後で」ってあると思うんですけれどね。

ただ絵本って、大人が時間をつくってあげないと、子どもだけでは100%味わい尽くすことはできないと思います。見ているだけでもいいとは思うんですが、それだけでは絵本を100%味わえたとは言えないですよね。安心できる人たちがそばに寄り添って、その声によって生み出された言葉こそ、子どもの中にスッと染み込んでいくと思います。だから、子どもが絵本を読んでと持ってきた時は、少しだけでも時間を割いてあげて欲しいと思います。

イタリア料理店 プルーニャ

<取材協力>
 イタリア料理店 プルーニャ

http://www.facebook.com/tavolacaldaprugna

東京都世田谷区大原1-15-12
TEL: 03-6750-2242
営業時間:午前11時~23時



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