絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、フェルトや布、色とりどりのビーズを使って描かれた絵本『ぽんぽこしっぽんた』「チクチクさん」シリーズが人気の絵本作家*すまいるママ*さんです。3児のパパで、自然遊びを一緒に楽しみ、お子さんから絵本のアイデアをもらうことも多いそうです。絵本に込めた思いや、読み聞かせ体験談をお聞きしました。
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1974年生まれ。岐阜出身。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。サンエックス株式会社を経て、2004年よりステッチアーティストとして活動。主な作品に『はなになりたい』(ヴィレッジブックス)『ぽんぽこしっぽんた』「チクチクさん」シリーズ(以上、PHP研究所)『ぞうさんがびっくり』(教育画劇)『おさんぽさんぽ』(フレーベル館)などがある。
*すまいるママ*オフィシャルWebサイト:http://www.smilemama.net
とにかく工作が大好きな子どもでした。父親が製本の仕事をしていて、使えなくなった紙をもらってくるので、家にたくさんあった紙を使って工作をしていました。とくにテレビでやっていた『できるかな』が好きで、見た物は全部つくっていましたね(笑)。子どもだから完璧にはつくれなかっただろうけど、途中で親が手伝ってくれるわけでもなく、自分なりに最後まで完成させていました。
あと、友だちに超合金のおもちゃを見せびらかされても、親に買ってもらえないと思っていたから、紙で似たようなおもちゃをつくって遊んでいましたね。だからいまだにやっていることは変わらないんですよ(笑) 紙がフェルトになっただけだし、動物をモチーフにして、擬人化するのが楽しい、好きだということも変わっていません。
小学生になると、つくるより絵を描く時間が多くなり、勉強のノートのはじっこは、いつもらくがきだらけ。最初は親に見られると、「らくがきばかり描いて! 勉強していない!」と怒られていたけど、高学年になると怒られなくなってきましたね。「どうせ言っても描くから」という諦めもあったと思うけど、図工の授業でつくったものを見て、「そういうのが得意な子なんだ」と理解されたというのも、あったのかなと思います。
小中学生ぐらいの時はマンガ家になりたかったけど、高校になった頃からデザインがおもしろそうだな、イラストの仕事もしてみたいな、と思うようになり、大学はグラフィックデザイン科に進みました。大学卒業後はキャラクターデザイナーとして会社に勤務して、その後、絵本作家デビューが決まったことで独立しました。
ちっちゃい頃、幼稚園入る前ぐらいにお祖父ちゃんに褒められて、嬉しかった記憶が今でもあります。小さな折り紙を膝の上で折っていたら、それを見たお祖父ちゃんが、「すっごい器用だな」と褒めてくれて。器用って言葉の意味も知らなかったけど、とにかくそれがすごい嬉しくって、それから折り紙が大好きになった。子どもって褒められると嬉しいんですよね。“褒めて育てる”と言うけど、実感として良いことにつながるんだろうなと思います。
うちの子どもも3人とも工作が好きで、紙とはさみ、のりを使ってよくお店屋さんごっこをしています。部屋中すごいことになるんです。もちろん自分も参加しますよ! でも、ポイントで参加するようにしていて、全部は手伝わず、「もっとこうしたらいいんじゃない?」とアドバイスしたり、子どもが苦労しているところだけ手伝ってあげています。そして、つくった物を見て、「よく思いついたね」「上手だね」と褒めてあげています。実際、褒めてあげるとどんどん上手になっていくんですよ。
読み聞かせもよくしています。寝かしつけの前は、必ず読んであげていますね。うちは夫婦で絵本の好みが似ていて、動物がたくさん出てきて、あまり難しい話ではない、絵だけでも楽しめる絵本が好きです。最初のうちはこだわって、この絵本は僕が好きじゃないから読まないと決めたりしていた時期もあったけど、僕が好きじゃなくても、子どもが何度も読んでと持ってくる絵本というのもあるんですよね。
心に残っていく絵本というのは、子どもの方で判断していくものなので、親が一方的にこれは良い絵本、悪い絵本と決めつけないで、とにかく色んな絵本をたくさん読んであげる時間をつくることが大切だと思っています。だから自分好みの絵本も読みますし、親戚からもらった絵本も読むし、自分が小さい頃読んでいた絵本を子どもに読んであげることもあります。
自分が小さい頃好きだった本に、「カロリーヌ」というシリーズがあって、カロリーヌという女の子と動物がたくさん出てくる話なんですけど、動物が色んなことをしている絵を毎日見て楽しんでいたんです。大人になっても、どのシーンが好きだったと覚えているぐらい好きな本で。最近、それを子どもたちにも読んであげたらすごく気に入って。やっぱり似ているんだなと思いましたね。
読んであげる時に気をつけていることは、子どもがじーっと絵を見ている時はまだめくらないとか、ページをめくるタイミングや間を大事にしています。絵を眺めながら、この子はこんなことしているね、と声を掛けることもあります。
子どもたちに以前、「パパが絵本を読んでくれる時は、絵本に出てくる動物ごとに声を変えてくれるから楽しい」と言われて、すごく嬉しかったですね。それからは読み聞かせの時、動物ごとに思いっきり声を変えて読んでいます。
あとは、自分でセリフを変えたり、話の細かいところを変えてもいいと僕は思っています。その子によって、絵本の楽しいと思う部分はそれぞれだと思うので、おもしろがっているページを、読むたびにふくらませてあげることができると思うんですよ。そうすれば、読むたびにその子なりの絵本になると思うし、好きな絵本がより好きになると思う。子どもの顔を見ながら、自分も楽しみながら、その絵本の世界に入り込んで読んでもらいたいですね。
▲はりねずみのチクチクさんは、背中の針と糸でみんなの着られなくなった服を使える物にしていきます。現在シリーズ3作まで発売中。『チクチクさん』(PHP研究所)
小さい子に絵本を見せると、まず表紙を触りますよね。普通の絵本だと、キャラクターの顔を触ったりすると思うんですけど、僕の絵本の場合、まず顔を触って、それから小さな立体的なビーズの部分や、花とか飾りとか、色んな細かいところをあちこち触るんですよ。そうやって子どもたちが反応してくれる姿を見ると、とても嬉しいですね。
小さな子どもたちには、クレヨンとか色鉛筆にはなじみがあるけど、フェルトってまだあまりなじみがないんじゃないかと思います。僕の絵本が何かをつくってみたいと思うきっかけになってくれるといいなと思いますね。
お母さんたちにも、「チクチクさん」シリーズのように、小さくなった子ども服などをリメイクするというのに挑戦してもらいたいなと思っています。はりねずみのチクチクさんが、使えなくなった洋服を使えるものにしていくお話なんですけど、思い出が詰まった子ども服って、いっぱいありますよね。そういう使えなくなってしまった服などを使って、子どもたちが喜ぶようなものをつくることが、大変なことじゃなくって、楽しいことだということを、絵本を通して伝えられたらいいなと思って描いています。
親子で楽しめるワークショップを開くことがあるんですけど、例えばはりねずみのモビールづくりなんかは、布を三角にいっぱい切って、はりねずみ型のフェルトに布をボンドで貼っていくだけなので、3歳ぐらいの子どもでもカンタンにつくることができます。見本どおりにつくる必要はなくって、いびつでも全然いいんですよ。世界にひとつのモビールを親子で一緒につくるのってすごく楽しいので、ぜひ試して欲しいですね。
子育てって大変なことも多くて、大人として接しているとつらい時間が多くなってしまうけど、読み聞かせでも、物づくりでも、遊びでも、親子で一緒に楽しみながら接していればいいのかな。自分もまだまだ勉強中ですが、一緒に成長していければいいんじゃないかなと思っています。