絵本作家インタビュー

vol.144 イラストレーター・絵本作家 丸山誠司さん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回は、『にんじゃサンタ』などユニークで楽しいユーモア絵本が人気の、イラストレーター・絵本作家の丸山誠司さんにご登場いただきます。独特な視点と畳み掛けるダジャレに抱腹絶倒な『おしろとおくろ』などは、一体どうやって生まれたのでしょうか? 最新作『だるまなんだ』や『しろずもう』の制作エピソードや、次回作についても伺ってきました。(【後編】はこちら→

イラストレーター・絵本作家・丸山誠司さん

丸山 誠司(まるやま さとし)

1968年、岐阜県生まれ、愛知県育ち。大阪府立大経済学部卒、Masa Mode Academy of Art卒。イラストレーター・絵本作家。書籍装丁や雑誌、広告のイラストレーションを手がける傍ら、絵本を制作する。主な絵本作品に、『にんじゃサンタ』『おこさまランチランド』(以上PHP研究所)、『ふじさんです』(教育画劇)、『こんなことがあっタワー』(えほんの杜)、『おしろとおくろ』『しろずもう』(佼成出版社)、『だるまなんだ』(おおなり修司文、絵本館)。
丸山誠司と越智あやこのホームページ http://maruxocchi.com/

いつも自宅前の公園で遊んでいた少年

丸山誠司さん

一番昔で覚えているのは、5歳の時に引っ越しをしたことですね。それまではおじいちゃん、おばあちゃんの近くに住んでいたのを、全然違うところに引っ越した。両親が共働きだったのでもともと保育園には行っていたんですが、新しい保育園に行くのがイヤでね。母親が仕事に行く前に自転車の後ろに乗せられて行くわけですが、走っている途中で後ろから飛び降りちゃったこともあったくらい。しばらくしたら、楽しく遊べるようになったんですけれどね。

その保育園から小学校卒業するまで一緒だった友だちが、ヤンチャというかスポーツが得意な子で、一緒に外でばっかり遊んでましたね。雨の日は、自分のマンションで鬼ごっこして怒られるとか(笑) あとは住んでいるマンションの目の前がわりと大きな公園で、ほとんどそこにいた感じですね。同じマンションの子たちと野球や缶けりするのも、地域のソフトボールチームの練習も、近くの田んぼで捕まえたカエルを持ってくるのも、全部その公園。

絵は、引っ越す前の保育園や、小学校の写生大会で描いた絵が、市の賞に入選したりしていましたね。絵を描くのは好きだなと何となく思っていました。褒められて喜んでいた感じかも(笑) 

小学校高学年の頃には、漫画などを模写するのが流行りました。『宇宙戦艦ヤマト』、野球漫画の『ドカベン』、『Dr.スランプ アラレちゃん』とか。絵が好きな奴らが4、5人でノートに模写して。小学校6年生の頃の夢は、「漫画家になること」。『天才バカボン』に一番ハマっていて、赤塚不二夫さんみたいなギャグ漫画の漫画家になりたいと思っていた。「人を笑わせたい」みたいな気持ちが今につながっている……のかな? 意識したことはまったくありませんけどね。

イラストレーターとして東京へ

大学3年生の時に、昼間は大学に行って、夜にMasa Mode Academy of Artという絵の専門学校に行き始めました。会社に就職した時に、デザインも含めて絵に関係したことが仕事になったらいいなと、漠然と思っていたんです。

4年になった時、ちょうどバブル期で、周りの就職活動の話を聞いて、もうちょっと絵の学校に行きながら、様子を見ようかなって。そうしたらバブルがはじけた(笑) 翌年少し就職活動したものの採用されず、学校の先生のようにイラストレーターになれたらいいなぁと思って、当時描いていた絵をファイルにして、イラストレーションのエージェントなどに見せに行くようになりました。

また河原淳さんという、有名なイラストレーターの方が絵の添削をされていたんです。僕は当時大阪に住んでいたけれど、東京から課題が送られてきて、絵を描いて送れば、添削されて戻ってきた。いろんなデザイナーさんのお話しを聞いていると、イラストレーターという仕事は、出版社の多い東京の方がいいらしいと。結局、東京の河原先生のところに行っちゃえ!となったんですよね。

東京へ来ようと思ったきっかけは、「日仏会館ポスター原画コンクール展」に入賞して、渋谷のパルコで授賞式があったことですね。生まれて初めて渋谷というところへ来て、渋谷の交差点で「パルコどこですか?」って聞いたのを覚えています(笑) その時、副賞で、自分の描いたポスターをシルクスクリーンで100枚刷らせてもらったんです。1週間くらい東京に泊まって、工房に通って元の版づくりをして。そこで東京を見たのが、気持ちの上でのきっかけだったと思います。

デビュー作『にんじゃサンタ』。絵本のネタのきっかけは、家族!

僕は紙の絵本を出す前に、パソコンでみる絵本を手がけています。イラストレーションの仕事をしている時に、絵の雰囲気が絵本に向いているんじゃないかと、ちょくちょく言われてたんですよね。そんな中で紹介されたのが、「おはなし絵本クラブ」(ソフトバンク クリエイティブ、現在は終了)。イラストレーションの仕事のうちの一つという感じでした。

そこで「クリスマスネタで」とリクエストされて、考えたのが『にんじゃサンタ』なんです。だいたいネタを考える時は、奥さん(イラストレーターの越智あやこさん)としゃべっていて出てくるんですよね。クリスマスね、サンタだよね……。と、いろんな話をしながら、子どもが好きなものって何だろうと考えた時、ふと、当時娘が行っていた保育園で、男子が「将来、俺は忍者になるんだ!」と言うシーンを思い出したんです。あれ、そういえばサンタって見られちゃダメなんでしょう、それって忍者だよね!って、そこで忍者とサンタが結びついた(笑)

絵本のネタのきっかけは、家族ということが多いですね。『おこさまランチランド』は、娘が保育園の頃、外食するっていうとお子様ランチを食べていたんで、じゃあ、お子様ランチの絵本ってできるんじゃないのって。

『ふじさんです』は、私の義理の母が、「富士山はデカいからしゃべったらうるさいやろうね~」って言ったんですよね。何の話をしていてそういうことになったのか覚えていないんですけれど、それがきっかけです。「そりゃうるさいだろうな」ってみんなで言って。で、こうなった(笑) そんなんばっかりですよ。

最初に本の形になったのも、『にんじゃサンタ』です。せっかくつくったので本にしたいと、プリントアウトして出版社の方に見ていただいたんです。結局パソコンのものとは全然絵が違うものになりました。もともとはBGMやナレーションがついて、絵ももっとあっさりしたものでした。絵本を出すというのは初めてだったので、本の大きさに対して原画をどのくらいの大きさで描こうとか、画材をどうしようかとか、その辺から悩みました。いろいろ教えていただきましたし、話も前半と後半の一部だけ対になっていたのを、全部対称にして、絵の構図も揃えるというアイデアを出していただきました。

実は今年の夏に、『にんじゃサンタのなつまつり』という絵本を出すんです。ついに続編が描けることになりまして。お話はもう決まっていて、まさに今描こうかというところです。にんじゃサンタがなつまつりに行くというお話……そのままですね(笑) にんじゃサンタだからなつまつりはこうなのねって感じですかね。

にんじゃサンタ

▲我々はにんじゃサンタなのです。今日も揃って修行なのです。ひたすら走って、飛んで、投げて! いよいよ訪れたクリスマスイブににんじゃサンタたちは……。『にんじゃサンタ』(PHP研究所)

おこさまランチランド

▲レストランに来た仲良し4人組み。おこさまランチランドで遊びます。 空飛ぶオムレツにスパゲッティスライダー……。あれ、チキンライス山の上に旗が刺さってない? 盗まれたんだ!『おこさまランチランド』(PHP研究所)

ふじさんです

▲私は富士山。大昔はよくしゃべったり相撲をとったりしていました。ある日出かけようとしたところに、ある頼みごとをされて……『ふじさんです』(教育画劇)


……丸山誠司さんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→


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