絵本作家インタビュー

vol.127 絵本作家 岡田千晶さん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回は、絵本『うさぎくんとはるちゃん』『だいすきのしるし』などで、子どものあたたかく豊かな表情を描き続けている岡田千晶さんの登場です。ご自身でも3人の子育てを経験し、絵本に登場する小さな女の子は、「娘さんたちに似ている」と言われることも多いとか。ご自身の子どもの頃のお話や、子育て中の読み聞かせ体験などをお聞きしました。
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絵本作家・岡田 千晶

岡田 千晶(おかだ ちあき)

大阪府生まれ。セツ・モードセミナー卒。絵本作家・イラストレーター。ボローニャ国際絵本原画展2010ほかの入選、入賞歴がある。絵本作品に『うさぎくんとはるちゃん』『だいすきのしるし』(岩崎書店)、『ぽっつんとととは あめの おと』(PHP出版)、『ちいさいわたし』(くもん出版)、『もうすぐもうすぐ』(教育画劇)、童話の挿絵に『ラッキーセブン』(ポプラ社)、『ムカシのちょっといい未来─ユウレイ通り商店街1』『ダンス・ダンス!─ユウレイ通り商店街2』(福音館書店)など多数。
ホームページ:http://okada-chiaki.com/

主人公の気持ちになって、絵本の世界を表現しています

だいすきのしるし

▲お母さんが来られなくなり幼稚園の発表会に一人で頑張ることになった主人公の気持ちを描いた絵本『だいすきのしるし』(岩崎書店)

『ちいさいわたし』と『だいすきのしるし』は、まず話を読ませていただいて、絵をイメージして、その話の世界を表現したいという気持ちで描いていきました。どちらも読んでいると引き込まれていく感じで、私自身が主人公になった気持ちで絵を描いているという感じでした。

いつも絵を描く時は、絵の中でその子が本当にそこにいるような空気感を目指して描いています。悲しい時には悲しい、嬉しい時には嬉しいと、同じ気持ちになって描いています。だから自分の子どもを重ねて描くと言うよりは、自分が子どもの頃とか、今まで見てきた色んな子どもが、すべて混ざっていると思います。

『だいすきのしるし』は、描きながらうるっときちゃって大変でした。一人で描いている時は、タオルを首に巻いて、泣きながら描いていました(笑) 私はリビングを仕事部屋にしているので、子どもたちがいる時は、泣くのを我慢していました。

泣かそうとする話よりも、頑張って何かを乗り越えるような「よく頑張ったね」と言いたくなるような話に弱いんです。

以前、『だいすきのしるし』を、読み聞かせ会で読ませていただいた時も、うるっとくるのが分かっていたので、話の内容は考えず、ただただ文字を追って読んでいました。本当はみんなの反応が知りたいので、気になるんですけど、聞いてくれている子どもたちの方も一切見られませんでした。

子どもが小さい頃、読み聞かせをする時も、『100万回生きたねこ』(講談社)とかを読むと、どうしても涙が出ちゃうので困りました。子どもたちに「お母さん、泣いている~」と言われたくなくて、気づかれないようにするのに苦労しました。

以前長女と映画を見に行った時も、私のツボにすごくはまる内容の映画で号泣してしまったら、長女に「恥ずかしいからやめて」と言われて、席を離れられたことがあります(笑)

読み聞かせ、自由に絵本を選ばせていました

ちいさいわたし

▲小さくて上手くできないことがたくさんある子ども。そんな子どもの今の瞬間がいとおしくなる絵本『ちいさいわたし』(くもん出版)

子どもが小さい頃には、毎晩必ず読み聞かせをしていました。図書館で借りたり、読み聞かせ絵本雑誌の『おひさま』(小学館)を定期購読したりしていました。

あと、関西弁で書かれた昔話の絵本があって、私は関西出身なので関西弁は上手く読めるし、子どもたちにも受けていたので、得意になって読んでいました。おかげで子どもたちは、関東で育ちましたが、関西弁を理解できるぐらいにはなっていると思います。

だけど、私が「今日は、この絵本を読ませたい」と選ぶというのは特になくて、毎晩子どもが「今日はこの本を読んで」と選んでくるのを読んでいました。

いちばん上の娘は、「14ひきの」シリーズ(童心社)が好きで、『14ひきのおひっこし』を何度も読んでと持ってくるので、私がだんだん読むのに飽きた時は、ページを開いて「この中に蝶は何匹いる?」と探させたりしていました。

真ん中の娘は物語が好きだったので、小2の時にはすごく流行っていた「『ハリー・ポッター』を読んで」と言ってきて、少しずつ読んで聞かせたことがあります。娘の友だちのお母さんに、「娘さん『ハリー・ポッター』の話をするけど、自分で読んだの?」と驚かれて、「いや、私が読んで聞かせた」と言ったら「なんだ~」と笑われたなんてこともありました。

他にも長編の物語本を「読んで」と言われて、読んであげたことがあります。大学生になった今でも読むのが好きで、リビングに絵本などを置いておくと、いつの間にか読んで感想を言ってくることがあります。

息子はウルトラマンとか車や恐竜がたくさん載っている図鑑を持ってくることがあったけど、普通に読んであげていました。あの頃は私も恐竜の名まえが、かなり詳しくなっていました。

だけど物語にはあんまり入っていけなかったみたいで、真ん中の娘が選んだ絵本を読んでいると、知らないうちに他の遊びをはじめたり、どこかに遊びに行ってしまうようなこともあったんですけど、「ここに座って聞きなさい」とは強要せず、好きなようにさせていました。

その時は正直、これでいいのかとちょっと迷ったんですけど、今思うとそれでよかったなと思います。

嬉しかった寝る前の読み聞かせの時間

岡田 千晶さん

子育て中はとにかく忙しくて、あわただしく時間が過ぎていくので、やるべきことを済ませて子どもが寝る前の静かな読み聞かせの時間は私にとっても嬉しかったですね。

子どもが小さい時は「早く大きくなって欲しい」とばかり思っていましたけど、今になると、もっとあの時間を楽しめばよかったなと思います。

わが家は私たち両親が絵を描くのですが、家族でスケッチに行ったりすることは特にありませんでした。今思えばそういうことをすればかったのに、とは思うんですけどね。家に画材はたくさんあるので、「色えんぴつ欲しい」と言われたら、「はい」とすぐ出せる環境ではあったのですけど……。

子育て真っ最中の方は、その時その時を楽しんでもらいたいと思います。でも、本当にあわただしくて精一杯だと思うので、難しいとは思うんですけどね(苦笑)


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