絵本作家インタビュー

vol.122 絵本作家 亀岡亜希子さん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回は、愛らしいオコジョのタッチィが活躍する『ねんにいちどのおきゃくさま』の作者・亀岡亜希子さんにご登場いただきます。パステルで描かれる自然豊かな四季の風景は、生まれ育った山形での暮らしの影響が大きいそう。美術教師だったお父様による読み聞かせ、自然と動物に囲まれて育った幼少の頃の話などを伺いました。
今回は【前編】をお届けします。(【後編】はこちら→

絵本作家・亀岡 亜希子

亀岡 亜希子(かめおか あきこ)

1971年、山形県米沢市生まれ。東北生活文化大学生活美術学科卒業後、上京しデザイン会社に入社。その後「ちひろ美術館・東京」に学芸員のアルバイトとして勤務。『ねんにいちどのおきゃくさま』(文溪堂)で絵本作家デビュー。『はるをさがしに』『なつのやくそく』『あきにであったおともだち』(以上文溪堂)『つばめたちのきせつ ビジューとフルール』(教育画劇)などがある。
Akiko Kameoka Home Page http://www.kameehon.com/top.html

自然の中でよく遊んだ子ども時代

亀岡亜希子

山形県の米沢市で育ちました。そんなに山の中というわけではないけれども、自然には恵まれていて、遊ぶ場所が結構ありましたね。雑草だらけの広い広場があって、友だちとどんぐりを拾ったり、草を結んで罠を作ったり、落とし穴を作ったりとか、よく外で遊んだ記憶があります。

幼稚園の頃から絵はよく描いていました。私には一卵性双子の姉がいるんですけど、姉やいとこと集まって、よく絵を描いていました。

父親は中学校の美術教師で、よく読み聞かせをしてくれました。絵の指導はそんなにされた記憶がありませんが、小学生の時に読書感想画の課題が出て、家でシートン動物記の『狼王ロボ』の狼の絵を描いたんですよ。それを机の上に置いておいて、朝起きたら、父親が勝手に直して上手くなっていたことがありました(笑) 「もうちょっと」と思ったんですかね。

父親の部屋には色んな画材があって、高校生の頃、勝手にパステルを持ち出して使ったのがはじまりで、今もパステルで絵を描いています。父親の影響は大きいと思います。家族で私が絵本作家になったことを喜んでくれて、よく感想を聞かせてくれます。

小学校の時から高校生の頃までは、ずっとマンガ家になりたいと思っていて、雑誌に投稿もしていました。だけど高校の頃、日本の絵本作家さんの画集をまとめた『日本の童画』という画集に出合ったんです。いわさきちひろさんや味戸ケイコさん、茂田井武さんの作品をまとめた1冊(7巻)が大好きで、特に味戸ケイコさんの絵にすごくあこがれを持ちました。さみしげな少女と光と影が描かれていて、色んなことを語りかけてくるその絵を見た時に、"1枚の絵で物語を語る"ということにすごい興味を持ちました。

マンガ家になりたかったぐらいなので、ストーリーを考えることも好きでした。そのふたつを組み合わせたのが絵本だということに興味を持ち、それから絵本を描きはじめました。

小さいけど、好奇心旺盛なオコジョを主人公に

美大を卒業してから絵本作家としてデビューするまでに、デザイン会社に勤務したり、美術館の学芸員のアルバイトをしたりして、トータルで12年間働きました。ちなみに双子の姉とは仲が良く、興味があることはだいたい同じで、美大もいっしょに入学しましたが、卒業後、姉は両親が教師だった影響で教師になりました。私は絶対なりたくないと思ったんですけどね(笑)

ずっと絵本作家になりたくて、美術館の仕事をしながら出版社に持ち込みをしていました。編集の方にアドバイスをいただいて勉強にはなったんですけど、出版にはなかなかいたりませんでした。だけど、ある人と人とのつながりがきっかけで、文溪堂の編集者の方に作品を見て頂ける機会があり、デビュー作『ねんにいちどのおきゃくさま』を出版することになりました。

『ねんにいちどのおきゃくさま』の主人公、タッチィはオコジョ。子どもだけではなく、大人の方にも「オコジョってなんですか?」とよく聞かれます。イタチ科というと、「ああ?」となるんですけど、あまり聞き慣れないみたいですね。

主人公はあまり絵本で見かけない動物がいいなと考えていた時に、たまたま書店でオコジョの写真集を見つけました。クリスマスの絵本を描くことになっていたので、オコジョは冬でも冬眠しないし、冬になると毛が白くなって、夏になると茶色になるという見た目もかわいい。だけどちっちゃいくせに獰猛(どうもう)で肉食、そういうオコジョにほれ込んでというか、ぜひ主人公にしたいなと思ったんです。

ねんにいちどのおきゃくさま はるをさがしに
なつのやくそく あきにであったおともだち

▲オコジョのタッチィが主人公『ねんにいちどのおきゃくさま』『はるをさがしに』『なつのやくそく』『あきにであったおともだち』(文溪堂)

山を見れば季節がわかる、そんな環境が絵本にも反映されています

その後、オコジョのタッチィを主人公に『はるをさがしに』『なつのやくそく』『あきにであったおともだち』と、季節ごとに全部で4作出させていただきました。はじめに出した絵本がシリーズ化してもらえたのはうれしいですね。

私の作品に自然と季節の風景がよく出てくるのは、出身地の影響があると思います。盆地なので、どこを見ても山なので、山を見れば季節がわかるというか、山の色が季節によって違うので、そういう見てきたものが影響していると思います。

冬は雪が降って、それが春になって溶けて、花が咲いて。夏は夏で緑が鮮やかで。山形は東北だけどとても暑いんですよ。蝉が朝からミンミン鳴いているし、カエルの鳴き声が夜中もガーガー聞こえる。秋は紅葉があって、それが終わると冬がくるという、季節折々がハッキリしているので、それが絵本に反映されているんだと思いますね。

じつは2月と3月に、『はるをさがしに』が、山形で開催される親子向けの企画「親子でたのしいオーケストラ」の中で、山形交響楽団のオリジナル音楽の演奏に合わせて朗読されます。作曲家の方がおっしゃるのは、オコジョのタッチィにはオーボエとか、女の子にはバイオリンとか、登場人物ごとに楽器を決めて演奏するらしいです。

山形には福島から避難している方が結構いらっしゃるので、被災者の方は入場無料ですし、入場料は被災地に全額寄付するということです。まだ私も見ていないのですが(取材は2月中旬)、3月の公演に行くのでとても楽しみです。


……亀岡亜希子さんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→


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