絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、「ばけばけ町」シリーズを始め、独特のユニークな作風で人気の絵本作家・たごもりのりこさんです。子どものころから絵本好きだったというたごもりさん。図書館司書や骨董屋、さらにはちんどん屋の経験もあるというユニークな経歴が生み出した絵本の魅力について伺いました。
(←【前編】はこちら)
図書館司書や骨董品店での勤務を経て、絵本作家・イラストレーターに。主な作品に、『ばけばけ町へおひっこし』『ばけばけ町のべろろんまつり』『ばけばけ町でどろんちゅう』『ごっほんえっへん』(岩崎書店)、『おったまげたと ごさくどん』(文・サトシン、鈴木出版)、『狂言えほん そらうで』(文・もとしたいづみ、講談社)、そのほか「なにわのでっちこまめどん」シリーズ(文・村上しいこ、佼成出版社)などがある。
Tagoya illustration http://tagoya.org/
▲風邪をひいたかのこちゃん。ぬいぐるみのらのこちゃんにも風邪がうつってしまいました。一緒にお留守番しながらしりとりをはじめたところ……。『ごっほんえっへん』(岩崎書店)
小学生の頃に、近所の絵画教室で油絵を習っていたのですが、そこはよくあるような、花が飾ってある花瓶を生徒が囲んで、真剣に描くような絵画教室ではなく、養護学校の美術の先生が副業で開いている教室でした。生徒数も少なかったし、机の上に乗って遊んでばかりいたし、先生が出産後は赤ちゃんを連れて来て、私がおむつ替えをするような、だけど自由に絵を描かせてもらえる楽しい空間でした。
そして『マカロニほうれん荘』や『ブラック・ジャック』など、あの頃の人気マンガが置いてあって、読むのが楽しみだったのを覚えています。今思うと私は小学生の頃、体が弱くて学校を休むことが多く、忘れ物も多くて教室の壁に貼られた忘れ物グラフがいつも1番になるような子で、さらに少しいじめられてもいて……。学校ではおとなしくしていたので、そのぶん絵画教室で自由に楽しく過ごせたのは、すごくよかったと思っています。
あと小学生の頃は扁桃腺(へんとうせん)が弱くて、1年を通じて熱が出やすかったため学校を休むことが多く、夏でも1ヵ月ずっと休むこともありました。そのあと、手術をして扁桃腺をとってからはよくなったんですけど、その頃の体験をモチーフにしたのが『ごっほんえっへん』(岩崎書店)です。
病気で学校を休んだ時の、「今ごろ学校ではみんなどうしているのかな?」という寂しい気持ちを表現しました。じつはこの話、マンガで一度発表したものを編集さんが気に入ってくださって、絵本にすることになりました。
ところがこれが難しくて大変な作業でした。セリフがしりとりで言葉遊びになっているのも大変でしたが、(マンガの場合)コマになっている絵を、見開きごとに1枚の絵にまとめるのも苦労しました。ただその分、思い入れも多い作品ですね。
『ごっほんえっへん』の表紙を開くと、まず見返しに、お話に出てくるぬいぐるみの型紙があって、最後のページにもしりとりすごろくがのっています。これは、読んでくれた子どもは絶対遊んでくれる!という自信がありました。何しろ自分が子どもの頃からこういう細かいページが大好きで、ずっと飽きずに見ていたから!
▲ケーキが好きなあまり盗んだものは!?『ばけばけ町でどろんちゅう』(岩崎書店)
子どもの頃から、絵本などに描かれている細かい絵を見るのが大好きで、ずーっと見ながら、頭の中でそこを歩いている自分をシミュレーションしていました。
あと、絵本に出てくるケーキ屋さんのショーウィンドウに並んでいるケーキを眺めることなんかも好きでしたね。絵本に出てくるおいしそうな食べ物を見ているときは、目と脳と胃袋が全部絵本とつながっているんですよね。
たとえば『ばけばけ町のどろんちゅう』(岩崎書店)に出てくるチーズケーキも、読者の方に「とてもおいしそう」とよく言ってもらえて本当にうれしいです。
そしてこの作品の見返しにも、そのチーズケーキの作り方をのせています。ちょっと過剰サービスかな?とも思うこともありますが、なにより自分が子どもの頃から、こういう細かいページが大好きなので、読んでくれる子どもたちが喜んでくれるはず!とやらせてもらっています。
もしかしたらこういうサービス精神は、ちんどん屋をやっていた頃に培われたものなのかもしれません。
▲言葉遊びとともに次から次へと動物たちが登場する、楽しいあいうえお絵本『あいうえおかしなどうぶつえん』(WAVE出版)
新作『あいうえおかしなどうぶつえん』(WAVE出版)は、本文作が川北亮司さんで、私は挿絵を担当させていただきました。言葉遊び絵本で、あいうえお順におよそ50種類もの動物が出てくるので、それぞれのサイズのバランスを取るのが難しかったですね。
この動物をもっと大きくしたいとか、躍動感を大きくしたいというのもあったけど、最後は動物たちが一同に集まってくるので、本来の動物のサイズに比べておかしくならないように気をつけました。
じつは「あいうえお」の絵本はシリーズとして、第3弾まで刊行を予定しているので、三巻通した場合のバランスや、どのように子どもが出てくるかとかを話し合いながら決めています。続編も楽しみにしていただけるとうれしいです。
そしてこれはさらに先の話ですが、いつかはスケートをテーマにしたお話を描いてみたいと思っているんです。ここ数年、フィギュアスケートに夢中で、シーズン中は時間を削って見ています。まずはあこがれの白いスケート靴を買って(笑)、スケート場で滑ってから、絵本の内容を考えようと思っています!