絵本作家インタビュー

vol.95 絵本作家 青山友美さん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、『うみのいえのなつやすみ』や『ぼくのしんせき』などの絵本で注目を集める絵本作家・青山友美さんです。絵本作家・山本孝さんの奥様で、2歳の娘さんのお母さんでもある青山さん。絵本作家になられたきっかけや絵本の制作エピソード、子育てについてなど、いろいろとお話を伺いました。
今回は【後編】をお届けします。(←【前編】はこちら

絵本作家・青山友美さん

青山 友美(あおやま ともみ)

1974年、兵庫県生まれ。大阪デザイナー専門学校編集デザイン科絵本コース卒業。メリーゴーランドの絵本塾で学ぶ。主な絵本に『狂言えほん しどうほうがく』(文・もとしたいずみ、講談社)、『うみのいえのなつやすみ』(偕成社)、『ぼくのしんせき』(岩崎書店)、『ねこはなんでもしっている』(イーストプレス)、『たかこ』(文・清水真裕、童心社)、『せつぶんのひのおにいっか』(講談社)などがある。

鬼の一家が大慌て!?『せつぶんのひのおにいっか』

せつぶんのひのおにいっか

▲鬼の一家に、悲劇の日がやってくる!?『せつぶんのひのおにいっか』(講談社)

新作の『せつぶんのひのおにいっか』は、文字通り節分にまつわる行事絵本です。編集者さんから、節分のならわしにとらわれずに自由につくってください、と言っていただいたので、鬼をメインに考えてみました。

アイデアのきっかけになったのは「鬼は外、福は内」という決まり文句。「鬼は外」ってことは、もともと鬼は中にいたの? それなら家の中に住ませてしまおう!ってことで、人間のおうちに鬼の一家が住んでいるという設定にしたんです。人間には鬼たちは見えていないので、知らずに一緒に暮らしてるんですが、節分の日が近づくと、鬼たちが慌てはじめて……というお話です。

見どころは福の神がやってくるところ。窓からぶわーっと大群で現れるんです。換気して新鮮な空気が入ってきた、みたいなイメージで描いてみました。節分の日を境に春が来るということで、最後には梅の花を描いて春の訪れを表現しています。どんな感じか、絵本を手にとって見てもらえたらうれしいです。

私の絵本づくりは、自分がおもしろいと思うかどうかが基準。自分が見ておもしろくなければ堂々と人に見せられないので、そこは大事にしています。お話については、教訓めいたものとか、メッセージ性の強いものをつくるつもりはなくて……むしろそういうのはできるだけ避けて、自由に楽しんでもらえるものをつくりたいなと思っています。

子どもとの絵本の時間は、笑顔と幸せがいっぱい

たかこ

▲ぼくのクラスにやってきた、ちょっと変わった転校生のお話『たかこ』(童心社)。清水真裕さんの第2回「絵本テキスト募集」優秀賞受賞作

うちの娘は今2歳半なんですが、絵本は0歳の頃から読んであげてましたね。『ぽぽんぴぽんぽん』(福音館書店)や『おばけのブルブル』(講談社)、『だるまさんが』(ブロンズ新社)など、気に入って何度も読みました。『コップちゃん』(ブロンズ新社)にいたっては、好きすぎて破っちゃったりして(笑)

無理に一日何冊と決めたりはせず、娘が絵本を持ってきたら一緒に見る、という感じで楽しんでいます。

今、娘がはまっているのは、『ぼくらの地図旅行』(福音館書店)。なぜか本棚からスッと選んで持ってきたんですよね。文章をそのまま読むわけではなくて、絵を見て「電車やね」「救急車やね」なんて指をさしながら見るんです。実生活と直結してるものを見つけると、うれしそうにするんですよね。「昨日見たなあ」なんて話しながら見ています。私も西村繁男さんの絵が好きなので、娘がこの本を気に入ってくれてうれしいですね。

親子で絵本を読んでいるときって、たぶん難しいことを考えたり、イライラしたり怒ったりってこと、ないと思うんです。お母さんも子どもも笑顔になれる、幸せな時間ですよね。だから、そういう時間はいっぱいあればあるほどいいなと思います。

子どもが生まれてから「ま、いっか」が増えた

絵本作家・青山友美さん

▲取材中、青山さんにだっこされてお昼寝していた2歳の娘さん。途中で起きていたようなのですが、ずっとおとなしくしてくれていました

子どもが生まれたことで一番変わったのは、時間の使い方ですね。うちは娘を保育園に行かせてないので、絵本づくりのための時間がなかなかとれなくて。夫・山本孝も絵本作家で、自宅で仕事をしているんですが、娘がずっと家にいると仕事に集中しにくいので、毎日私が娘を連れて3時間ほど外に出かけてるんです。私の仕事の時間は夜、娘が寝てから。この時間でつくれるよう、仕事のペース配分をしています。

寝かしつけてからそーっと布団を離れて仕事にとりかかるんですけど、ときどき「かーちゃーん!!」って泣かれちゃうことがあって。そんなときは描いてる手を止めて、布団に戻ります。でも、娘が寝たらまた仕事に戻るつもりが、思わず一緒にうとうとして朝まで……ということも(苦笑) なかなか思い通りに時間を使うことはできませんね。

子育てするようになって気づいたのは、「ま、いっか」が増えたこと。前からわりとよく「ま、いっか」って言う方だったんですけど、もっと言うようになりました。子育ても家事も仕事も、こうしないとだめとか、今日はここまで進めないととか、思っているとイライラするだけなので、ひとつでもできればいいや、ぐらいの気持ちでいることにしてるんです。「ま、いっか」と思えると、だいぶ気持ちが楽になりますよ。

あと、基本的にはほとんど娘を叱らないですね。もちろん、危険なことをしそうなときなどは叱ることもありますけど、それ以外ではほとんど叱りません。気が済めばこっちの言うことも聞いてくれるので、とにかく気長に待ちます。待つのは根気がいりますけど、子どもの要求も可能な範囲でかなえてあげた上で、「かーちゃんの言うてること、わかるやんなあ?」と話して聞かせると、結構素直に聞いてくれるんですよ。

時間のやりくりは大変ですけど、娘との今だけの時間を楽しみつつ、おもしろい絵本をつくっていけたらと思っています。


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