絵本作家インタビュー

vol.95 絵本作家 青山友美さん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、『うみのいえのなつやすみ』や『ぼくのしんせき』などの絵本で注目を集める絵本作家・青山友美さんです。絵本作家・山本孝さんの奥様で、2歳の娘さんのお母さんでもある青山さん。絵本作家になられたきっかけや絵本の制作エピソード、子育てについてなど、いろいろとお話を伺いました。
今回は【前編】をお届けします。(【後編】はこちら→

絵本作家・青山友美さん

青山 友美(あおやま ともみ)

1974年、兵庫県生まれ。大阪デザイナー専門学校編集デザイン科絵本コース卒業。メリーゴーランドの絵本塾で学ぶ。主な絵本に『狂言えほん しどうほうがく』(文・もとしたいづみ、講談社)、『うみのいえのなつやすみ』(偕成社)、『ぼくのしんせき』(岩崎書店)、『ねこはなんでもしっている』(イーストプレス)、『たかこ』(文・清水真裕、童心社)、『せつぶんのひのおにいっか』(講談社)などがある。

進学を考える中で知った、絵本作家という職業

狂言えほん しどうほうがく

▲コホンと咳をすると暴れだす馬と、いばりんぼうの殿様のお話『狂言えほん しどうほうがく』(講談社)。文はもとしたいづみさん

子どもの頃、私の一番好きな教科といえば、体育でした。走ったりボールを追いかけたりするのが好きで、中学ではバレーボール部に所属して、練習に励んでたんですよ。でも身長が低かったので、バレーボールについては早々に見切りをつけてしまいました。

体育の次に好きなのが国語で、三番目に好きなのが図工・美術。将来のことを考えたとき、国語が好きでも何になれるのか想像がつかなかったので、なんとなく絵の道に進んでみようかなと思うようになったんですね。

美大への進学を考えたこともあったんですけど、専攻学科が油絵とか日本画とかに分かれているのを見て、画家になるつもりもないしなぁ……と。そんなとき、専門学校の冊子の中に、“絵本コース”という文字を見つけたんです。私は子どもの頃ほとんど絵本を読んでいないので、絵本作家という職業があること自体、そのとき初めて知ったんですけどね(笑)

専門学校を卒業してからは、バイトをしながら絵本作家を目指しました。映画館や画材屋さんなど、何かしら絵本の制作のためにプラスになりそうなところを選んでバイトしてましたね。その間、三重県にあるメリーゴーランド主宰の絵本塾にも通いました。

転機になったのは、東京に出てきてから開いた個展。私はお話づくりが苦手なので、絵本のダミーをつくって出版社に持ち込む、という形で絵本作家になるのは、難しいと思ったんですね。それで、個展でいろんな人に絵を見てもらえたらどうかと思って、一念発起して個展を開催したんです。その個展にいろんな編集者さんが来てくださって、そこでの出会いをきっかけに、絵本作家デビューすることができました。

今は、10年ほど住んだ東京を離れ、神戸で子育てをしながら絵本をつくっています。なかなか絵本づくりのための時間を確保できないのがつらいところですが、マイペースに続けていけたらと思っています。

描きたい絵からお話をつくった『うみのいえのなつやすみ』

うみのいえのなつやすみ

▲海辺の夏の楽しさがつまった絵本『うみのいえのなつやすみ』(偕成社)

私はお話づくりが苦手で、毎回頭を悩ませてるんですね。できれば、ほかの作家さんの書かれたテキストに絵を描くだけの方がいいなと思ってるんですけど、そんな気持ちとは裏腹に、なぜか自分の作・絵で絵本をつくる機会が多いんですよ(苦笑)

お話をつくるときはたいてい、描きたい絵をひとつイメージすることから始めます。その絵の前後を想像していくことで、お話をつくっていくんです。なんというか、無理やりこじ開ける感じですね(笑) こういう絵を見開きで描きたいと思ったら、その絵が描けるようにお話をつくるんです。

『うみのいえのなつやすみ』も、そんな風にしてつくった一冊です。海をテーマとした個展を開いたとき、見に来てくれた編集者さんが「海の絵本をつくりたいね」と言ってくださって。それで、松林を抜けて海へと向かうという一枚の絵の前後を広げていくことで、お話をつくっていきました。

もともと海のそばで育ちましたし、今も海のそばで暮らしているので、私にとって海はすごく身近なもので、描きたくなるモチーフだったんですよね。『うみのいえのなつやすみ』では主人公・なっちゃんが、いとこの家族が経営する海の家に遊びに行くんですけど、私も子どもの頃、よく父と海水浴に行って、海の家でお昼を食べたりしていました。

貝殻を拾って帽子の中に集めたり、新しい友だちと出会ったり……いくつかのエピソードを盛り込むことで、お話に広がりができたと思います。今まで見てきた海の景色が、この絵本をきっかけに一冊にまとまって、うれしかったですね。

親戚一同が勢ぞろい!『ぼくのしんせき』

ぼくのしんせき

▲お盆に親戚が勢ぞろい! わくわくどきどきの再会を描く『ぼくのしんせき』(岩崎書店)

いつもお話づくりには苦戦するんですけど、『ぼくのしんせき』だけは、前からあたためていたお話が元になっているんです。

もともとは、いとこ同士のお話を考えてたんですね。女の子と男の子のいとこが久しぶりに会って、誰だっけ?ってなるような、そんなやりとりを描くつもりだったんです。それで、一応その二人がどういうつながりか、矛盾のないようにしておこうと思って、家系図を描いて編集者さんに見せたら、「いとこだけじゃなくて、この家系図に出てくる人たち全員登場させましょうよ!」と言われてしまって。え、何十人もいる親戚一同を、全員ですか!? って感じだったんですけどね(苦笑)

それからは、家系図の中の一人ひとり、顔や名前、特徴、他の人との関係 ――この人とこの人は兄弟だから似てることにしよう、みたいなことを掘り下げて決めていきました。たくさんの人が登場するので、これで合ってるかな?と何度も何度も確認しながら描いたのをよく覚えています。

実は私自身、親戚がすごく多いんですよ。父は7人兄弟、母は4人兄弟、しかも両親ともに末っ子なので、親戚一同集まると、私が一番年下だったんですよね。私が生まれたときには、おじさんなんだかいとこなんだかって人が、もう何十人といて。お正月の集まりでも、たまに近所の人もまじってたりするんです。その人のことを覚えてても、次の年になったらいなかったりして、あの人誰やったんやろ?みたいな(笑) 自分の親戚を把握できるようになったのは、わりと大人になってからでした。

『ぼくのしんせき』では、そんな親戚一同が集まったときのがちゃがちゃした雰囲気がいい感じで描けたんじゃないかなと思っています。


……青山友美さんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→


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