毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介するのは、ジーン・ジオンさんの文、マーガレット・ブロイ・グレアムさんの絵による絵本『はるがきた』です。原書『REALLY SPRING』のアメリカでの初版は1956年。日本では2011年にこみやゆうさんの翻訳で出版されました。2022年2月には、判型をひとまわり小さくした新装版が出版されています(画像とリンク先は新装版)。
なかなか訪れない春にしびれを切らした町の人々は、ある男の子のアイデアで、自分達の手で町を春にすることに! 町中に絵を描いて、春色に塗り替えていきます。町はどこもかしこも生まれ変わったかのように、明るく輝きだしますが、その晩、激しい雨が降り続いて…。春を待ちわびる気持ちや、春が訪れた時の喜びが躍動感たっぷりに描かれた一冊です。
作者のジオンさんとグレアムさんはご夫婦で、『どろんこハリー』でもおなじみのコンビ。翻訳者はご自身を「1930年から60年、70年ぐらいまでの、アメリカの絵本黄金期の作品を掘り起こす考古学者」と称する、こみやゆうさんです。こみやさんがアメリカの古書店で『はるがきた』の原書と出会い、2011年2月に日本語版が刊行されました。
お話は暦の上ではもう春、でもまだ冬の寒さが残るような時期から始まります。街路樹の枯れ枝や大人達が羽織る暖かそうなコートが、町の寒さを伝えています。人々の表情も暗く沈んだ様子ですが、「みんなで町を春にしよう!」と決めてからは、誰もがとびきりの笑顔に! モノクロだった町が黄色、青、緑のペンキで鮮やかに色づいていきます。
後半、突然の雨で町の色がきれいさっぱり流されてしまうというハプニングもありますが、その雨が花や緑を目覚めさせ、本物の春が訪れます。「自分達で町を春にしよう!」という人々の前向きな行動を描くとともに、人間の思い通りにはいかない自然の威力、そして自然がもたらす幸せや希望をも感じさせる絵本です。
<ミーテ会員さんのお声>
お店の壁や大きなビルにどんどんお絵描きするシーンに、娘もワクワクしたようです。せっかく描いた花や緑が雨で流されてしまったのは残念でしたが、娘にも春を迎える喜びが伝わったかなと思います。(3歳11か月の女の子のママ)
翻訳者のこみやゆうさんは、この絵本が日本で出版された直後に東日本大震災が起こったことに触れ、「図らずもこの絵本が、読者に勇気と希望を与えてくれた」とおっしゃっています(こみやゆうさんのnoteより)。きっとこの絵本は、これからも多くの読者に希望を与えてくれることでしょう。
▼こみやゆうさんのインタビューはこちら
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