イチ押し絵本情報

ゆきむすめのはかなさが、切ない余韻残す(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.372)

2022年1月27日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 ゆきむすめのはかなさが、切ない余韻残す

今回ご紹介する絵本は、内田莉莎子さんの再話、佐藤忠良さんの絵による『ゆきむすめ』。1963年に月刊絵本「こどものとも」の一冊として刊行され、1966年に出版されたロシアの民話を元にしたお話です。

子どものいないおじいさんとおばあさんが、ある日、雪で女の子をつくりました。すると突然ゆきむすめはにっこり笑い歩き出しました。おじいさんとおばあさんは大喜びして、娘としてかわいがります。でも、春がきても娘は家の中に閉じこもってばかり。やがて夏になり…。

見開き

雪でつくった雪だるまや雪ウサギが動いたらいいなぁ…。そんな誰もが思い当たるような願いがかなうのが、絵本の世界。さらに子どもがほしいという願いまでかなったおじいさんとおばあさんは、このゆきむすめを目に入れても痛くないほどかわいがります。

 

雪でつくられた娘は、賢く美しく育っていきます。しかし、春が来て夏が近づけば雪が消えるのは自然の摂理。他の雪よりも長く地上に留まっていたゆきむすめも、たき火にはかなわず、湯気となり、空へと立ちのぼってしまうのです。

さて、表紙のおじいさんとおばあさんの姿に、見覚えがある気がしませんか? 内田莉莎子さんと佐藤忠良さんは、ロングセラーの『おおきなかぶ』を手がけたおふたり。どちらの作品も、大きく育ったかぶや春が来ると消える雪といった、自然に対する純粋な驚きが根底に流れています。ただ読後感は大きく違います。『おおきなかぶ』はおおらかなユーモアに思わず笑顔に、一方『ゆきむすめ』は、切なくはかない印象が残ります。

ゆきむすめが消えてしまった喪失感に、ぼう然と絵本を閉じると、裏表紙の雪が降り積もった小屋の絵が現れます。夏の後には、秋、そしてまた冬が訪れます。もしかしたら、おじいさんとおばあさんは、またゆきむすめに会える日が来るかも…。そんな想像も許容する余韻が、このお話の大きな魅力なのかもしれません。

<ミーテ会員さんのお声>
図書館で何冊か借りた中の一冊。最後のページを読みながら、何で消えちゃったのかわかるかな…と思い娘を見ると、横で口をわなわなふるわせて、目に涙を浮かべていたので、びっくりしました。本当に、絵本っていろいろな世界に連れていってくれるんですね。(3歳3か月の女の子のママ)

同じ民話を元にした絵本に、岸田衿子さんの作とスズキコージさんの絵による『ゆきむすめ―ロシアの民話』などがあります。比較して読んでみるのもいいかもしれませんね。


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