毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、米国の児童文学作家ポール・フライシュマンさんと、イラストレーターのケビン・ホークスさんによる『ウエズレーの国』。1999年に千葉茂樹さんの訳で日本に紹介されたロングセラーです。
ウエズレーの住む町では、家の形はどれも同じで、男の子は頭の両側をツルツルにそりあげるのが常識。一方へんてこな髪形で、ピザもコーラも嫌い、サッカーにも興味がないウエズレーは、みんなから浮いていました。そんなウエズレーが夏休みの自由研究としてひらめいたのが、自分だけの文明をつくること! ある日ウエズレーの畑に、誰も見たことがない新しい作物の種が風に乗って飛んできて…。
濃く青い空と巨大チューリップのような赤い植物をバックに、自然由来の簡素な服の少年が遠くを見つめる…。一見爽快感にあふれる夏らしい表紙の絵。ただじっくり眺めるうちに、一体この植物は何なのか、いつの時代のどこの世界の話なのか(後ろにある家は現代の郊外の家に見える)、少年は何を見つめているのかと、次から次へと疑問が沸き上がってきます。
謎だらけの表紙に似合って、主人公も個性の塊です。まずこの町の常識との相性は最悪。部屋を見れば、本人がつくったと思われる不思議な発明物に占拠されていて、好きとなったらのめり込む創造的なタイプだとわかります。そして夏の自由研究が、自分だけの文明をつくること。個性的すぎ、壮大すぎる、と常識的には思ってしまうところです。
そんな心配をよそにウエズレーは、学校で習った知識を元にしつつ、好奇心と行動力で不思議な植物を育て上げ、探求心と発想力で不思議な植物から様々なものをつくりだしていきます。食料、衣服、時計、遊び、家、最後には言語まで。自分の中にある可能性をいかんなく発揮して、家の庭につくりだした世界を「ウエズレーの国」という意味のウエズランディアと名付けます。
読み聞かせを聞く子ども達にとって、想像したことを、自分の力だけで現実にしていくさまは痛快そのものでしょう。物語にグイグイと引き付けられ、ウエズレーのように現実で何かをつくりだしてみたいと思う子どもも少なくないはず。ウエズレーのみならず、子ども達の中にある可能性を引き出す一冊となっているのです。
<ミーテ会員さんのお声>
本屋で「夏休みにおすすめの本」とあったので購入。一通り読んでみて、子ども達には少し早い気がしてしまっておいた。が、上の子が見つけ出してきたので、読み聞かせることに。驚いたことに、最近の本の中では一番興味を引いたようで、連日で読むようせがまれる。途中、ウエズレーの日時計が出る場面で「ひどけいってなに?」と聞いてきた。簡単に説明してあげて、「明日一緒につくってみる?」と聞くとうなずいた。夏休みらしいいい経験ができそう。読み終わった後「ぼくの国があったらいいのに」と言っていた。(7か月と5歳11か月の男の子のママ)
ポール・フライシュマンさんは、児童文学の『種をまく人』で知られる作家で、絵本だと他に『おとうさんの庭』などが日本に紹介されています。ケビン・ホークスさんは、『としょかんライオン』の絵を手掛けられています。だいぶタッチが違うので、見比べてみると驚きますよ。
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