イチ押し絵本情報

赤い風船が、気づけば蝶や花に変わる不思議(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.332)

2021年4月15日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 赤い風船が、気づけば蝶や花に変わる不思議

今回ご紹介する絵本は、イタリアの絵本作家イエラ・マリさんによる『あかいふうせん』。1967年に出版され、1976年に日本に紹介された、ロングセラーの字のない絵本です。

子どもがふくらませた赤い風船は、空を旅しながら、リンゴから蝶、蝶から花と次々と変身します。今度はなにに変わるのかな?

見開き

子どもの口先から、小さく鮮やかな赤色の丸が生まれます。風船ガムのように見える小さい丸は、次第に画面いっぱいにふくらみ、口から離れて飛び去ります。赤く大きな丸の下に、髪の毛ほどの細い黒い線が描き加えられ、これは風船だったのかと気づかされます。

赤い丸は留まることなく、少しずつ変化していきます。丸がくぼみ、背景に木の枝が描かれると、ほんの少し前まで風船だったものが、リンゴに見えてきます。切れ目ができて触覚や体が足されて蝶に、さらにくぼんでおしべとめしべが描かれると花に…。ページをめくるたびに、前の形から少し変化し、気づけばまったく違うものになっている。その不思議さに、子ども達はページをめくるたびに驚くことでしょう。

また赤いものは風に吹かれたり、飛んだり、人に運ばれたりして、ページからページへと移動していきます。もちろん静止画ですが、アニメーションを見ているかのような途切れない動きが感じられます。文字がないことでよりかきたてられた想像力で、描かれていない絵と絵の間を補っているからです。美しい色合いとはっきりとした絵で0歳から楽しめますが、想像力がついてきた頃に読み直すと、また違う反応を見せることでしょう。

表紙は緑地に赤のみ、中面の絵は白い背景に黒く細い輪郭線と赤のみと、非常にシンプルです。唯一の色味である赤は、くすみのない鮮烈な赤。主人公である「赤」に目線が向かうよう考え抜かれた、洗練された絵本と言えます。同時に、背景に描かれた草むらや虫達は、緻密でリアル。「芸術的でかつ科学性も失わない」と高く評価されてきた理由がわかるというものです。

<ミーテ会員さんのお声>
ひたすら『あかいふうせん』を読んでほしがります。先日のイベントでもらった実物の赤い風船を見るたびに、この絵本を持ってきます。なぜか、途中の風船が飛んでいくシーンのところで、息子的にはお話はおしまいらしく、表紙に戻って「もう一回」。エンドレスの攻撃に私が疲れ果てたので、今日の読み聞かせ担当はパパです。(1歳1か月の男の子のママ)

イエラ・マリさんの絵本は、ほかに『木のうた』や、夫でプロダクトデザイナーのエンゾ・マリさんとつくった『りんごとちょう』『にわとりとたまご』などがあります。いずれも字のない絵本です。あわせて読んでみてはいかがでしょうか。


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