毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、米国の絵本作家アンドレア・ユーレンさんによる『メアリー・スミス』。千葉茂樹さんの訳で2004年に日本に紹介された絵本です。
月曜日の朝、夜明けはまだまだ先なのに、メアリー・スミスはもうおでかけです。町外れの家を出て、寝しずまった家々を通り越したと思ったら、突然パン屋の前で立ち止まりました。そしてゴムのチューブに豆をこめ、吹いて飛ばし始め…!? この女性は一体何者なのでしょう。
表紙には、でっぷりとした迫力ある女性の横顔。ストローを力を入れて吹いているようで、額にはしわ、頬は膨らみ、鼻は赤みを帯びています。この存在感たっぷりで個性的な女性が、主人公のメアリー・スミスです。
裏表紙を見ると、昔の女性の写真が載っています。付されているのは、1927年という日付と「メアリー・スミス」の名前。つまり、ゴムのチューブで豆を飛ばす女性は想像の産物ではなく、実在したことがわかるのです。
メアリー・スミスが何者なのかは、お話を読んでいくと次第にわかってきます。パン屋や汽車の車掌、市長など、早起きする必要がある人達の家をまわって、ゴムチューブで豆を飛ばして窓にぶつけることで、その人たちを起こしていたのです。まだ正確な目覚まし時計が庶民の手に入らなかった頃に、イギリスのロンドンに実際にあった、人々を起こして回る仕事「ノッカー・アップ(めざまし屋)」を、メアリー・スミスはしていたのです。
今はない珍しい仕事な上、普通は長い棒で窓を叩いていたノッカー・アップに比べても起こし方がユニークだったメアリー・スミス。題材のユニークさが、他の絵本と比べても際立っています。同時に、市長のことばや娘への対応から浮かび上がるのは、皆から感謝される仕事を誇りをもってするメアリー・スミスの姿です。ただの面白い昔の仕事の紹介で終わっていないところが、この絵本の魅力だと言えるでしょう。
<ミーテ会員さんのお声>
長男が最近目覚まし時計で自分で起きられるようになったので、選んだ『メアリー・スミス』。久しぶりにきょうだい3人への読み聞かせです。お寝坊な長女は、「メアリー・スミス、うちにも来てほしい~」だそうです。目覚まし時計がない時代に、人々はどうやって起きていたのか、後ろの解説まで読んで感心しきりでした。(4歳9か月と11歳3か月の男の子、8歳7か月の女の子のママ)
他にもあまり知られていない仕事を描いた絵本として、製本職人を描いた『ルリユールおじさん』や、究極の「好き」が仕事になった人の実話『あたまにつまった石ころが』などがあります。子どもだけではなく、大人にとっても面白い絵本ですよ。
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