毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、国語の教科書にも採用された名作『おにたのぼうし』。あまんきみこさんの文、いわさきちひろさんの絵による、1969年初版のロングセラーです。
どの家からも豆まきの声が聞こえてくる、節分の夜。行き場をなくした鬼の子のおにたは、角隠しの麦わら帽子をかぶり、雪の中を歩いていきます。豆まきをしていない家を見つけて中に入ると、そこには病気のお母さんと、看病をする女の子が住んでいました。おにたは女の子を喜ばせようと…。
節分は、邪気を払い福を招く行事です。邪気の象徴である鬼は、力強く怖ろしいイメージが強いかと思いますが、この絵本に出てくる子鬼のおにたは、そんな鬼の印象とはかけ離れた、気のいい鬼です。子どものなくしたビー玉を拾ってやったり、にわか雨の時に洗濯物を取り込んでおいたりと、自分の近くにいる人間の役に立とうと、人知れず行動するやさしい鬼なのです。
節分の夜にたどり着いた女の子の家は見るからに貧しく、母親が病気で寝込んでいるため、女の子は何も食べずにおなかを空かせています。でも、お母さんに心配をかけまいと、知らない男の子が持ってきた赤飯と煮豆を食べたと嘘をつきます。その嘘を見抜いたおにたは、女の子の嘘を本当のことにしてやろうと、いったん外へ出て、赤飯と煮豆を持って女の子の家を訪ねます。
読み手はおにたのやさしさに共感し、食べ物を持ってきたおにたに女の子が笑いかけるシーンでは「よかった」と安堵することでしょう。でも、そのままハッピーエンドとはいかないのが、この絵本の切ないところ。おにたはきっと、この女の子となら友だちになれるかも、と思ったのかもしれません。扉のページに描かれたおにたは、帽子をとって女の子にありのままの自分の姿を見せて微笑んでいるのですが、おにたはおそらくそんな出会いを望んでいたのでしょう。一方の女の子は、お母さんの病気を悪化させないためにも、邪気払いの豆まきがしたかっただけ。けっして悪気はないのですが、おにたの気持ちを知ってしまうと、あまりに悲しい結末です。
読んだ後で、いろいろなことを考えさせられる物語。いわさきちひろさんならではの淡い水彩画がお話の切なさを引き立てます。毎年、節分の機会に読んであげてはいかがでしょうか。
<ミーテ会員さんのお声>
今日の絵本は、節分にちなみ『おにたのぼうし』。いわさきちひろさんの絵が、やわらかなタッチと色でとても魅力的。絵の力でストーリーもほんわかしちゃいます。「おにたのようなやさしい鬼なら、追い出しちゃうのがかわいそう」と娘。ホントだね! 娘もおにたのようにやさしい女の子でママうれしいな。(4歳11か月の女の子のママ)
作者のあまんきみこさんは絵本のあとがきで、子どもの頃に豆まきをしながら、追い出される鬼を哀れに思った、と書かれています。『おにたのぼうし』はそんな複雑な思いから生まれたのかもしれません。同じくあまんさん作の『ちびっこちびおに』でも、ちびおにが角隠しの帽子をかぶって人間世界に行きますが、こちらでは鬼とばれても人間の子と仲良く遊びます。あわせて読んでみるのもおすすめです。
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