イチ押し絵本情報

幸せ分かち合う モーモーまきばのパーティー(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.316)

2020年12月17日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 幸せ分かち合う モーモーまきばのパーティー

今回ご紹介する絵本は、アメリカの絵本作家マリー・ホール・エッツさんによる『モーモーまきばのおきゃくさま』。原書は1958年にアメリカで出版された『COW'S PARTY』。日本には、1969年に山内清子さんの訳で紹介されたロングセラーです。

春の牧場で草を食べていた牛は、草があまりにおいしいので、友だちを招いてパーティーを開くことにしました。馬やヤギ、ブタ、ヒツジ、犬、猫など、たくさんの仲間が集い、歌って踊って楽しみます。でも、ごちそうが草だけだと知ると、草を食べない友だちはみんな帰ってしまって…。

表紙は、明るいサーモンピンク。中央には、黄色と白の花冠をつけたかわいらしい牛が、こちらを微笑みながら見つめています。本編も背景のピンク、黄色、黒の三色刷りで、ラフなスケッチで的確にとらえられた動植物が、生き生きと描かれています。明るく素朴な雰囲気が、すみずみまでいきわたっています。

一方、お話はのどかなだけでは終わりません。家畜小屋中の動物が期待に胸を膨らませてやってきて、牧歌的な雰囲気の中、パーティーは大盛り上がり。しかし、ごちそうが牧場の草だけと知ると、草を食べない動物達は帰ってしまいます。「食」を通じた、動物達生来の違いからくる自然界のリアルな姿が反映されています。

違いからくる共生の難しさという現実が、愛らしいお話の中にさらりと描かれているのです。アメリカのウィスコンシン州の湖や森など豊かな自然の中、生き物を友として育ったエッツさんにとって、あって当たり前のことなのかもしれません。

そんな厳しい現実に直面する中、牛は、馬・ヤギ・羊の子という、草の美味しさを分かち合える友を見つけます。訳者の山内清子さんが巻末の解説で書いているように、「自分のしあわせを分かちあえる友だちを見出したときの喜びは、ひとしお」なのです。そんなありのままの現実の厳しさと喜びが描かれているからこそ、この絵本は今なお、多くの親子に愛され続けているのでしょう。

<ミーテ会員さんのお声>
昨日は家族で、図書館でどっさり絵本を借りてきました。長女が長男のために「絶対面白い、絶対気に入るよ」と選んだのが、落語絵本『ちゃっくりがきぃふ』。長男は最初、いかにも気が乗らなさそうな態度。でも読み出したら、大笑い。最後はみんなで声に出して読んで、大盛り上がりでした。その後、長男が選んだのが『モーモーまきばのおきゃくさま』。書かれているのは、自分と同じものが好きといってくれる人が、そばにいる喜び。まるであつらえたようなタイミングに、我が家の思い出の一冊になりました(1歳10か月と4歳2か月の男の子、7歳2か月の女の子のママ)

アメリカの絵本黄金期を支えたエッツさんの作品は長年愛され続けている作品が多く、ほかに『もりのなか』『わたしとあそんで』を、ロングセラー&名作ピックアップの記事で紹介しています。ぜひのぞいてみてくださいね。


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