毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、姉崎一馬さんによる『はるにれ』。1979年に月刊誌「こどものとも」に掲載され、81年に出版されたロングセラーの写真絵本です。
北海道の草原に1本だけ立つはるにれの大木。その大木の、様々な季節、時刻、天候の中の姿を写した、文字のない写真絵本です。
広い空と広い大地の間に、力強く根を張り、太い幹ですっくと立ち、空に向けてのびのびと枝を伸ばす1本の木、はるにれ。この絵本は文字もなく、イラストもなく、ただ様々な角度からこのはるにれを撮った写真だけで構成されています。大胆な構成ですが、壮大なはるにれの姿と、はるにれにほれ込んだ姉崎一馬さんの思いが、ことば以上に読者に語りかけてきます。
草が枯れ始めた秋の草原に立つ、はるにれの遠景からお話は始まります。そこにいきなり横殴りの風雪。厳しい冬がやってきました。地面は白く覆われ動くものもない雪景色。その時、太陽が昇ってきます。陽の光は、1本1本の枝についた霧氷を、まるで花が咲いたかのように輝かせます。
季節は進み、大地は霧に覆われます。霧が晴れた時、春を謳歌するはるにれと大地の姿が目に飛び込んできます。そして、月と放牧された牛とともに、はるにれは夏を迎えるのです。
この絵本の成功は、このはるにれの木の存在に大きく依存しています。姉崎さんは、福音館書店の「こどものとも50周年記念ブログ」に掲載されたインタビューで「この木を見た時、『あ、僕は長い間この木との出会いを待ってたんだ』とわかった」と語っておられます。
一本の木をフォーカスした本をつくろうと、世界や日本の各地の木を見て回り、北海道で撮影すると決めてからも、候補の木を撮影しては断念する日々が続いたそう。はるにれに決めた後も、思うようなシーンを撮るために、4年近くかかったといいます。この一冊の背後に、どれだけ多くの時間と労力と、数々の掲載されなかった写真があることでしょう。
クライマックスのひとつは、枝に美しく輝く霧氷のシーンです。氷点下30度を下回る極寒の中、何日も木の近くでキャンプをした末に、ようやく訪れたシーンだったそう。「黎明の草原は青一色の無音に近い世界でした(中略)やがて陽が昇ると、すべての枝についた氷が輝きだし、はるにれは一年で最も美しい姿を見せてくれるのでした」(「こどものとも」折込付録より)。
この絵本は文字がないために、どう読んでいいのか悩む方も多いはず。ミーテ会員さんのお声によると「自分の好きだった絵本だと伝えてから見せた」「『寒そうだね』とお互い思ったことを話し合った」「季節はいつだと思う? と聞いた」といった工夫をしたそうです。参考にして、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
<ミーテ会員さんのお声>
四季の移り変わりを木の変化で感じられます。文章はまったくないので、私が感じたことを話しているだけだけど、兄弟ともにほとんどしゃべらずじーっと写真を見ていた。何かを感じてくれたのだといいけど!(1歳5か月と4歳5か月の男の子のママ)
この絵本に出てくるはるにれの木は、現在も北海道の豊頃町にあります。推定樹齢は約140年で、実は2本の木が一体化したものなんだそうですよ! この絵本によって有名になり、町のシンボルとなっています。
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