イチ押し絵本情報

紫色のクレヨンで描く、豊かな想像の世界(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.272)

2020年2月13日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 紫色のクレヨンで描く、豊かな想像の世界

今回ご紹介する絵本は、クロケット・ジョンソンさんによる『はろるどとむらさきのくれよん』。 1955年に米国で出版され、日本では72年に岸田衿子さんの翻訳で紹介されたロングセラーです。

ある晩、ハロルドは月夜の散歩がしたくなりました。そこで紫色のクレヨンで月や道を描いて、散歩に出発します。ハロルドがその大きなクレヨンで描いたものは現実となり、その世界の中で、ハロルドは気の向くままに楽しい旅を続けます。想像力の無限の可能性と、すばらしさを伝えてくれる絵本です。

白い空間いっぱいに、紫色のクレヨンでいたずら書きをする、3~4歳の男の子・ハロルド。ふと、月夜の散歩がしたくなります。月夜の散歩には、月と散歩する道が必要だからと、大きなクレヨンで描き始めます。遠くの道は細く描かれ、遠近感が生まれます。そこをハロルドは当たり前のように歩き出します。魔法使いも呪文もなしで、現実から空想の世界へと足を踏み出すのです。

ハロルドの想像は紫色のクレヨンで描くことで命を吹き込まれ、次々と現実化していきます。ただし、道もリンゴの木もドラゴンも、白い背景に紫色の太い線で描かれただけのシンプルなもの。ハロルドだけではなく、お話を聞く子ども達にも想像力が求められます。ただし、子ども達はごっこ遊びをする時の要領で「これは道ってことね」と了解しながら、自然体のままお話にのめり込んでいくのです。空想と現実を自由に行き来する子どもの想像の世界が、生き生きと再現されているのです。

そして大事なのは、ハロルドが最後には自分の家に帰ってくること。世界を創造し、トラブルにもすべて自分の機転で対処した自立心あふれるハロルドが帰るのは、ママの腕の中ではありません。それでも、疲れ果てて帰るのは、あたたかいベッドが待つ自分の家。そこでようやく、お話を聞く子ども達も安心し、そして再びハロルドと一緒に冒険するためにもう一度お話を聞きたいと思うのです。

「はろるど」のシリーズは『はろるどのふしぎなぼうけん』や、小宮由さんが訳した『はろるどのクリスマス』など全部で7冊(邦訳は5冊)。ハロルドともっと一緒に不思議な冒険をしたい方は、ぜひ続きも読んでみてくださいね。

<ミーテ会員さんのお声>
図書館で借りたビデオの「ハロルドまほうのくにへ」を親子で気に入ったので、シリーズの絵本をあるだけ借りて来ました。これはいい!!! 上の娘も「ハロルドは絵が上手だねー」と感心しきり。親子のお気に入りになる予感。娘はあんまりお絵描きが好きな方じゃないので、これでどんどん描くことの楽しさを覚えていってほしいな♪ 手元に置いておきたくなったし、原書も読んでみたくなった!(1歳3か月と4歳10か月の女の子のママ)

『かいじゅうたちのいるところ』で有名なモーリス・センダックさんは、若かりし頃、週末の度にクロケット・ジョンソンさん夫妻の家で過ごしていたとか。ふたりについて「週末の親であり、僕を芸術家へと育ててくれた」と語っているそうですよ。


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