イチ押し絵本情報

寝ぼけ眼のねずみ・フレデリックの役割とは…(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.264)

2019年12月12日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 寝ぼけ眼のねずみ・フレデリックの役割とは…

今回ご紹介する絵本は、レオ・レオニさんによる『フレデリック―ちょっとかわったのねずみのはなし』。1967年に出版され、谷川俊太郎さんの訳で1969年に日本に紹介されたロングセラーです。

仲間の野ねずみ達が、冬に備えてせっせと食糧を集めているのに、働きもせず、「おひさまのひかり」「いろ」「ことば」を集めている、と言うフレデリック。やがて冬が来て、食糧も尽きた時、フリデリックは…。想像力の大切さが伝わる絵本です。

見開き

冬の前に食糧を集めるものと、働こうとしないもの…というと、多くの方はイソップ寓話の『アリとキリギリス』を思い出すのではないでしょうか。夏の間遊んですごしたキリギリスは、冬になって食糧がなくて路頭に迷う…将来への備えを怠らないようにしようという、教訓が含まれた話です。

しかしこの作品では、一見遊んでいるように見えたフレデリックには、重要な役目がありました。食糧が減り、寒さが募るある日、皆に乞われてフレデリックは語り始めます。他のねずみ達に目をつむるよう求め、彼らの想像力に働きかけて「おひさまのひかり」「いろ」をありありと見せ、集めた「ことば」で詩を披露します。他のねずみ達は「君って詩人じゃないか」と拍手喝采します。

絵本作家のエリック・カールさんは、フレデリックについて「徹頭徹尾、詩人のねずみは、我々はパンのみにて生くるにあらずということを、証明しているのです」と語っておられます。

レオ・レオニさんの作品にはねずみが多く登場します。中でも晩年の『マシューのゆめ』は、絵描きになったねずみの物語で、ご自身の生涯を重ねた作品と言われています。この『フレデリック』でも、小さな存在であるねずみに、レオニさんの思いが、芸術家の社会での役割や芸術を介した人と人のつながりが豊かさをもたらすということが、投影されていると考えていいでしょう。ただし、フレデリックが最後に赤面しながら「そういう訳さ」と短く語ったように、とても控えめに表現されているのです。

米国のグラフィックデザイナーとして活躍していた49歳の時に、『あおくんときいろちゃん』で遅い絵本作家デビューを飾ったレオニさん(出版社によって苗字の表記が少し違います)は、絵本によって様々な表現方法を使っています。

この作品で使われているのは、切り絵のコラージュ技法。絵本に顔を近づけてみると、貼られた紙の厚みや、ねずみ達の体の輪郭は手でちぎった跡が見て取れます。それが絵本に素朴な印象とあたたかみを与えています。寝ぼけ眼のフレデリックが、レオニさんの生み出したキャラクターの中でも特に愛され続けているのは、その辺りにも理由があるのかもしれません。

<ミーテ会員さんのお声>
レオ・レオニさんの展覧会を家族で見にいった。展示がかわいくてテンション上がる~♪ 原画はどれもすばらしく、こうやって色紙を切って貼ってるんだな~とわかって大満足。そこでレオ・レオニ作品を図書館で大量に借りてきた! 余韻に浸れて子ども達も大喜び。読み終わって上の子が「僕はフレデリックだ」と言っていた。ママからすると、下の子の方がフレデリックで、上の子は地道なねずみの方な気が。どちらにしても、それぞれ大事な役割を果たして、このねずみ達のように仲良く協力し合ってくれたら理想的だなぁ。(3歳9か月の女の子と5歳8か月の男の子のママ)

「みんなのレオ・レオーニ展」は、全国を巡回中で、この後、鹿児島の長島美術館(2020年1月19日(土)まで)と、沖縄の県立博物館・美術館(2020年2月28日(金)~5月10日日)で開催。

▼「みんなのレオ・レオーニ展」
https://www.asahi.com/event/leolionni/

▼谷川俊太郎さんのインタビューはこちら
「言葉はスキンシップ 子どもを膝に乗せて絵本を読んで」


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