毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、ジャニス・メイ・ユードリーさんが作、モーリス・センダックさんが絵を手がけた『きみなんかだいきらいさ』。1961年に米国で出版され、75年に日本で翻訳されたロングセラーです。
僕・ジョンはジェームズといつも仲良しだったよ。クルクルクッキーも半分こ、傘も入れてあげたし、水ぼうそうだって仲良く一緒にかかったんだ。でも今日は違う。ジェームズなんか大嫌いさ。だから、今からジェームズのうちに行ってそう言ってやるんだ!
表紙にはひとつ屋根の下で憎たらしい顔をして見せ合うふたりの男の子。めくってもめくっても、木の下でにらみ合い、傘の下でいがみ合い。百面相でけんかしています。
ふたりのけんかの原因は…というと、クレヨンを貸してくれなかったり、砂を投げてきたり。読み聞かせを聞くほとんどの子ども達が同じような体験をし、嫌な思いをしたり、させたりしてきたことでしょう。ですから、子ども達は真剣にふたりのけんかの行方を見守り、一緒に怒り、一緒にホッとするのです。この時、絵本が手のひらサイズであることも重要です。まるで、僕だけ、私だけに、そっと友だちとのけんかの話を教えてくれたよう。
絵を手がけたセンダックさんは、『かいじゅうたちのいるところ』で有名な作家です。この作品も含めて、センダックさんの描く子どもは、大人が期待するかわいらしさや素直さとは無縁です。ささいなことでけんかし、すねて、「ごめん」とはそう簡単に言わない…つまり現実的で等身大の子どもの姿です。
勢いのあるペン画に、黒、赤、緑の3色とシンプルなので、一見何気なく、さらっと描いたよう。ですが、子どもの表情がひとつとして同じものがないこと、そびやかした肩、背中、手足の動き、ふたりの距離などすべてが、瞬間瞬間の子ども達の心情を伝えて余りあることを見れば、周到に描かれていることがはっきりとわかります。
そして天気が回復し、子どもの心にも劇的な変化が起きて、仲直りの瞬間が訪れるのです。何度見ても驚かされる、実際の子どもの心の素直さと回復力。それが見事に表現されていると言えます。この絵本を読んだ後は、子ども達のけんかをあともう少し見守ろうと思わされます。そして子ども達は、「大嫌い」と大声で言い合える、そして「ごめん」なしでも自然と仲直りできちゃう、そんな友だち関係を、けんかのたびに深めていくのでしょう。
<ミーテ会員さんのお声>
私の大好きなセンダックさんの絵本! ジョンは仲良しのジェームズとけんか。絶交を宣言して、どんなにひどいやつかたっぷり説明します。そして「さいならあ!」「さいならあ!」の後に、「ねぇ、ジェームズ!」「なんだい?」「ローラー・スケート やらない?」「オッケー!…」。そうそう、子どもってこんな風に簡単に仲直りするんだよなぁ。セリフは短いけれど、気持ちがたっぷりこもってていいんです。(2歳5か月の男の子のママ)
同じふたりの作者が手掛けた作品に、『ムーン・ジャンパー』があります。こちらはモノクロとカラーの絵が効果的に使われた幻想的な作品で、だいぶ趣が違っています。ぜひ合わせて読んでみてくださいね。
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