イチ押し絵本情報

サンタを信じる心を運ぶ急行「北極号」(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.213)

2018年12月13日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 サンタを信じる心を運ぶ急行「北極号」

今回ご紹介する絵本は、クリス・ヴァン・オールズバーグさんが作・絵、村上春樹さんが訳を手がけた絵本、『急行「北極号」』。1987年に河出書房新社から、2003年に改訳してあすなろ書房から出版された、86年コルデコット賞受賞作品です。

クリスマス前夜、サンタクロースを待つ僕の耳に聞こえてきたのは、鈴の音ではなく蒸気が吐き出される音だった。家の前に停まったのは汽車、急行「北極号」。僕を乗せた汽車は、森を抜け、荒野を走り、山を越えて…。

見開き

「サンタクロースって本当にいるの?」「どうやってたくさんのプレゼントを用意しているの?」「会ってみたい!」…。クリスマスに、世界中の子ども達の心に浮かぶ思いへのひとつの回答が描かれた美しい絵本です。

最初に印象に残るのは、幻想的で力強い絵でしょう。月明かりを頼りに見ているような暗く淡い光の中で描かれ、影の中の多彩な色がパステルで繊細に表現されています。

まるで映画のカメラのように自由自在にアングルが変わります。主人公に寄り、遠景の中にとらえ、高いところから街を見下ろし、子どもの目線からサンタを見上げます。実際作者のオールズバーグさんはコルデコット賞受賞のスピーチで、「私は物語が進展するのを、映画を見るかのように心の目で見るのです。問題は、どの瞬間を切り取り、どの角度から描くべきかなのです」と語っています。

実際に2004年には米国で、「ポーラー・エクスプレス」として映画化されました。また同じオールズバーグさんが作絵を手掛け、こちらもコルデコット賞に輝いた『ジュマンジ』なども映画化されています。多くの人が、作者の頭の中で再生されていた物語を見てみたいと思うのでしょう。

作者が物語を通じて伝えたいことは、最後のページに描かれた鈴と共にひっそりと置かれています。親にも、最初は音が聞こえていた妹や友だち達も聞こえなくなってしまった鈴の音。しかし主人公には大人になった今でも聞こえているのです。先のスピーチで作者は「ファンタジーを信じる傾向にあることは(中略)贈り物です」と語っています。作者の思いは、心からサンタクロースを信じている子ども達だけではなく、大人の心にも届くことでしょう。

<ミーテ会員さんのお声>
息子と一緒にお風呂に入ってたパパが、興奮した様子で出てきた。「風呂の中でしばらく黙ってるな~と思ったらさ、突然『沈黙しか聞こえない』とか言うんだよ。びっくりしちゃったよ!」。もちろん私もびっくり! 「なんて文学的な息子だろう。トンビが村上春樹を産んじゃった!?」と、思ったところで息子が引用した絵本が何か思い当たった。クリスマスプレゼントの『急行「北極号」』だ!(3歳4か月の男の子のママ)

表紙の汽車の絵の背景には、レンガ造りの家が立ち並ぶ、昔風のアメリカの通りが描かれています。作者が子どもの頃過ごした街の風景によく似ているのだそうですよ。


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