毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介するのは、グリム童話にスイスの作家フェリクス・ホフマンさんが絵をつけた『おおかみと七ひきのこやぎ』。日本では1967年に、瀬田貞二さんの訳で初版発行されています。半世紀にわたって多くの親子に愛されてきたミリオンセラーです。
おおかみにくれぐれも気をつけるように。お母さんやぎはこやぎ達にそう言って、森に食べ物を探しに出かけます。するとまもなく、おおかみが七ひきのこやぎをねらってやってきました。こやぎ達は、しわがれ声や黒い足をしっかり見抜いて、おおかみを追い払いますが、おおかみはきれいな声と白い足で再びこやぎ達の家にやってきます。とうとうおおかみにだまされて家の扉を開けてしまったこやぎ達は、次々と丸飲みにされてしまい…。
『おおかみと七ひきのこやぎ』は様々な形で絵本化されていますが、最も多くの人になじみ深い作品と言えば、やはりこのフェリクス・ホフマンさんが手がけた『おおかみと七ひきのこやぎ』でしょう。ホフマンさんはわが子や孫への贈り物として、たびたび手描きの絵本をつくっていました。『おおかみと七ひきのこやぎ』も元々は、三女スザンヌのために描かれたものだったそうです。
昔話ならではの勧善懲悪の展開で、おおかみは徹底的に悪として描かれています。お母さんやぎだけは二足歩行で、エプロンをつけていますが、顔や手足はリアルに描かれており、こやぎ達も過度にかわいらしく描かれてはいません。おおかみも鋭い目や長い舌、大きな口から見える牙、とがった爪など、いかにも獰猛な風貌。あまりに恐ろしくて怖がる子もいるかもしれません。でもだからこそ、子どもはドキドキしながらも物語の世界に引き込まれていくのでしょう。
ラストも原作に忠実です。お母さんやぎはおおかみのおなかを、はさみでじょきじょきと切り開き、たっぷりと石を詰めて素早く縫い合わせます。目を覚まして、水を飲もうと井戸に近づいたおおかみは、石の重みに引っ張られて溺れ死んでしまいます。悪者を退治して、喜ぶお母さんやぎとこやぎ達。衝撃のエンディングに、子どもには残酷なのでは…と読み聞かせを躊躇する方もいるかもしれません。
巧みな構図や深みのある色合い、瀬田さんの読み心地のいい名訳も、この絵本が長らく愛されてきた理由のひとつ。本物志向の方におすすめしたい昔話です。
<ミーテ会員さんのお声>
絵本をテーマの公開講座に参加してきました。『おおかみと七ひきのこやぎ』については、「観察者の視点、こやぎの視点が入れ換わりつつ描かれていて、『これならこやぎは騙されちゃう!』と感情移入しながら見ていける」とのこと。帰宅後に読み直してみたら、ほんとだほんとだ。絵からいろんなイメージが伝えられていたんだなぁと、改めてびっくりでした。もっともっと絵本の時間を楽しみたいな、と思えました。(2歳6か月の女の子のママ)
このお話にはお父さんやぎが登場しませんが、おおかみが家に入ってくるシーンと裏表紙に、それらしきやぎの絵が描かれています。お父さんやぎはひょっとすると、おおかみに襲われて亡くなったのでは…という説も。そのつもりで読んでみると、またぐっと味わい深くなりますよ。
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