毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、土方久功さんの『ぶたぶたくんのおかいもの』。1970年発行の、50年近く愛され続けてきている絵本です。
初めてひとりでおつかいに行くぶたぶたくん。途中でからすのかあこちゃんに出会い、一緒に歩きます。「ぶたぶた かあこお ぶたぶた かあこお」とおしゃべりしながら。こぐまちゃんにも出会います。買い物は無事終わりましたが…。
この絵本は、最初から一筋縄ではいきません。まず、主人公の「ぶたぶたくん」が、本当の名前ではないと知らされるのです。しかもお母さんまで、本当の名前を忘れて「ぶたぶたくん」と呼ぶ、というのです。一体どんな物語に連れていかれるのか、聞いている子ども達だけではなく、読んでいる大人達も思わず期待するのではないでしょうか?
物語の大筋は、ぶたぶたくんが初めてのお買い物にでかけ、友だちに会ったり、知らない道に出たりしながら、無事家まで帰るというもの。1回目に読む時には、ぶたぶたくんと一緒にドキドキワクワクしながらお話を聞くことでしょう。
2回目以降は、本筋以外のところが気になってくるはず。このお話には、文にも絵にも遊びの要素がふんだんに入っているのです。パン屋のパンがシュールな人の顔になっていたり、八百屋のお姉さんもお菓子屋のおばあさんもユニークそのもの。ぶたぶたくんと友だちのかあこちゃんとこぐまくんのしゃべり方だって、「ぶたぶた かあこお くまくま どたじた どたあん ばたん」です。しっかりした土台のお話の上で、アイデアが自在に飛び回っている、風通しがいいお話なのです。
絵本作家の植垣歩子さんは、この絵本が子どもの頃大好きだったそう。今でも「傍らに置いていて心に迷いがあると開く絵本です。『自分の絵を描けばいい』と、教えてくれる」という特別な絵本だと、インタビューで答えています。
最後のページには、地図とぶたぶたくん達が歩いた道筋が描かれているので、読みながら、あるいは読んだ後にたどることができます。もちろんここにも遊びの要素が。地図の中央に大きく描かれているのは、お話にはまったく登場しない立派な遊具のある公園。きっとぶたぶたくん達は普段、ここで遊んでいるんだろうなと想像が膨らみます。絵本の中で自由に遊ぶ余白がいっぱいがある。そんな大らかな魅力が、長年愛され続けている理由なのでしょう。
<ミーテ会員さんのお声>
娘は赤ちゃんの頃から、古典的な絵が好き。1歳頃は赤羽末吉さんのファンだった。さて、土方久功さんの絵。子どもに媚びた絵ではないですよね。でも絵を見つめる娘は、うれしそうで楽しそう。子どもには、ちゃんとわかっているんだ、と眼力に感心してしまいます。
2度目、3度目とくり返し読むうちに、もっともっと細かい描写にも気付かされる。読めば読むほど味が出てくる「スルメ絵本」 に久しぶりに出合いました♪(3歳9か月の女の子と6歳11か月の男の子のママ)
土方久功さんは戦前、南太平洋の小さな島サトワヌ島などで原住民と暮らしながら彫刻の制作や民俗学的な研究をしていた方。『おによりつよいおれまーい』は、その際に土方さんが採集した昔話だそうです。
無料会員登録後は、過去の「絵本子育て相談室」など、
様々な絵本情報が読み放題!
ぜひミーテにご登録ください♪