イチ押し絵本情報

思いやりの心がめぐりめぐって…(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.167)

2018年1月25日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 思いやりの心がめぐりめぐって…

今回ご紹介する絵本は、方軼羣(ファン・イーチュン)さん作、君島久子さん訳、村山知義さん絵によるロングセラー『しんせつなともだち』。1965年に月刊絵本「こどものとも」の1冊として刊行され、1987年に「こどものとも傑作集」としてハードカバー化された作品です。

食べ物のない寒い冬のこと。おなかを空かせたウサギは、雪の中にかぶをふたつ見つけると、ひとつだけ食べて、もうひとつを友だちのロバのところへ届けることにしました。ロバは留守だったので、ウサギはかぶを家に置いて帰ります。外から戻ったロバは、家に置いてあったかぶを見てびっくり。ちょうどサツマイモを手に入れたばかりだったので、かぶはヤギに届けることにしました。そのかぶを見たヤギは…。

見開き

ウサギが親切心で友だちに送り届けたかぶが、友だちからそのまた友だちへ、さらにそのまた友だちへとめぐりめぐって、最後に再びウサギのもとに戻ってくる、というお話です。単純明快なストーリー展開と心あたたまる結末で、50年以上もの長きにわたって多くの親子に愛されてきました。

昔話のような印象を受けますが、原作となったのは中国の作家・方軼羣さんによる創作話。朝鮮戦争の最中、中国の慰問団が前線の兵士に届けたリンゴが、負傷兵や前線の司令部へとめぐって、最終的にまた慰問団のもとに戻ってきたという実際のできごとが基になっているそうです。苦しい戦争を“寒さ”と“空腹”に置き換え、慰問団を主人公のウサギにすることで、幼児向けの昔話風なお話ができあがったというわけです。

この絵本の編集者でもある松居直さんは、著書『絵本の森へ』(日本エディタースクール出版部)の中で、方軼羣さんと上海で初対面した時に聞いた原作の誕生秘話について触れながら、このように語っておられます。

「背景に戦争があったなどとは、わたくしは想像もしませんでした。この物語からは、戦争をイメージさせたり、鼓吹したりするようなものはまったく感じられません。(中略) もしもこの物語が、もっと実話に寄りそって書かれていたら、その生々しい感動は、あるいは時とともに薄れていったかもしれません」

<ミーテ会員さんのお声>
奥付に英語で題名が描いてあったのだが、「A RETURNED TURNIP」(=返ってきたかぶ)。こっちの方がストレートでわかりやすい。ウサギがおなかが空いているだろうからと、留守中の友だちの家にかぶを置いていくのだが、そのかぶが次々とまた別の友だちの家に渡り、結局最初のウサギのところに戻ってくるという話。娘には「みんなが友だちのことを思っているよ。困っている子がいたら助けてあげようね」と話しておいた。(4歳1か月の女の子のママ)

「情けは人の為ならず」とは、まさにこのこと。思いやりの気持ちについて、子ども達にやさしく伝えてくれる名作です。


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