イチ押し絵本情報

「てん」から始まる、自由な自己表現(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.160)

2017年11月30日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 「てん」から始まる、自由な自己表現

今回ご紹介する絵本は、ピーター・レイノルズさんの『てん』。2004年に日本に紹介され、全国紙の書評に載るなど評判になったロングセラーです。

お絵かきの時間は終わったけれど、ワシテの前にあるのは、真っ白な紙。何もかけないという彼女に、先生が「何かしるしをつけてみて」と言います。苦しまぎれにかいたのは、マーカーを紙に押し付けてつけた、小さな小さな「てん」。でもそれは、ワシテが大きく変わるきっかけになるのです…。

見開き

絵をかくのが嫌いどころか、かくこと自体をボイコットしている少女ワシテ。口先だけのことばは、不機嫌な顔で武装した彼女の心に響きません。そんなワシテに先生がかかせたのは、「なにかのしるし」と名前のサイン。そして、何も言わず、その「絵」を立派な額縁に入れて飾る、という行動に出るのです。

その行動が、ワシテの心に火をつけます。開けたこともない水彩絵の具のセットを開けて、さまざまな色、大きさの「てん」を、ほとばしるようにかき始めます。

作者のピーター・レイノルズさんは、この作品について、自身のサイトの中で「『てん』は、芸術に関するお話というだけではありません。自分自身を表現する勇気を応援するものなのです」と語っています。ワシテは、「てん」から始まり、学校の展覧会で評判になる絵をかくようになります。自分を、自分らしく自分が納得するように表現を始めたワシテの物語です。

それと同時に、先生のワシテとの関わり方に、学ぶことが多いと感じる人もいます。先生からワシテ、ワシテから線をまっすぐ引けない男の子へ贈られた、応援の力。そんな気持ちのリレーの物語でもあるでしょう。それは、ピーター・レイノルズさん自身が、中1の時の数学の先生からもらった勇気でもあると、献辞にかかれています。

もうひとつの魅力は、自在な線画についた鮮やかな色。特にワシテのかく「てん」の鮮やかさでしょう。水彩と紅茶を使ってかかれているそう。規格から外れたワシテを表現する「てん」は、一般的な絵の具だけでは表現できないと思ったのかもしれませんね。

<ミーテ会員さんのお声>
間違えるのが苦手で、なかなか絵をかけない長女のために購入。絵をかくようにはならないけれど、「この点の色が好き」と言ってこのところ毎晩持ってくる。一緒に眺めている下の子が、この絵本を出すと手足をバタバタさせてうれしそうにする。「赤ちゃんは水玉模様が好き」って誰かが言ってたけど、そのせいなのかな?(10か月と5歳3か月の女の子のママ)

姉妹本にあたる『っぽい』は、今度は絵をかくのが好きな子が、「何をかいたものかわからない」と言われてかけなくなってしまう…というお話。『てん』が響いたら、図書館などで探してみてくださいね。


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