イチ押し絵本情報

まっくろなネリノだからこそできたこと(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.151)

2017年9月28日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 まっくろなネリノだからこそできたこと

今回ご紹介する絵本は、ヘルガ・ガルラーさんの『まっくろネリノ』。1968年にオーストリアで刊行された絵本です。

きれいな色の鳥の兄弟の中で、ひとり真っ黒なまっくろネリノ。兄さん達は、ネリノが「あんまりに真っ黒だから」と遊んでくれず、いつもひとりぼっち。そんなある日、兄さん達が行方不明になってしまって…。

見開き

黒や暗い色合いの背景に、まっくろネリノと兄さん達が並んでいます。ページを開いて目につくのは、兄さん達の明るい紫、ピンク、グリーン、蛍光イエローの姿。そんな中ひとり離れた所に立つまっくろネリノ。その黒い姿は時に背景の中に消えて、ギョロ目だけが宙に浮いているかのように描かれています。兄弟間での存在感の薄さがそのままあらわれているかのようです。

外見が他とは違うことによって、まっくろネリノは兄さん達から仲間外れにされています。本人も真っ黒なことにコンプレックスをもっていて、「薬を飲めばきれいになれるのかな?」とまで思い詰めています。皆が寝静まった夜、ひとり目を覚まして枝の先に立つ姿に、寂しさがひしひしと伝わってきます。

そんな時起きるのが、兄さん達がそのきれいさゆえに鳥かごに捕まえられてしまう事件。唯一難を逃れたまっくろネリノは、自分の黒さを生かして闇に紛れて、兄さん達を助けます。

最後の「もう まっくろくろだって、ちっとも かなしいことなんか ないんだ」というセリフに、兄さん達を助けた誇らしさ、共に遊べるうれしさが感じられ、読み聞かせを聞く子ども達も自分のことのようにうれしい気持ちになるのではないでしょうか? 同時に、色を変える必要はなく、真っ黒なままの自分に価値があるんだよ、という作者の強いメッセージも伝わってきます。

このメッセージと共に、絵の鮮やかな色合いも、愛され続けている理由のひとつでしょう。黒が基調の背景に、多彩で鮮やかな色のパステルが映えて、50年近く前の絵本とは思えない瑞々しさです。本職がデザイナーという作者のセンスが感じられます。

<ミーテ会員さんのお声>
私が小さい頃に大好きだった絵本です。黒い画面いっぱいに、色とりどりのかわいい鳥が目に鮮やかで。まっくろネリノの気持ちにうるうるして、何度も何度も読みました。

大好きな絵本を息子にも読んであげたくて。0歳の頃は、まだ早かったようだけど、目で鳥を追う。1歳の頃はそんなに興味を示さず、チラッと見る程度。そして2歳…突然、何度も何度も「よんでくだしゃい」となりました! 年齢によって、受け取り方、興味の示し方が、こんなに違うのね。他にも好きな絵本はありますが、『まっくろネリノ』だけは、「読んでほしい!」というすごい勢いを感じます。息子の成長を感じた一日でした。(2歳4か月の男の子のママ)

「そのままの自分でいいんだよ」とそっと伝えたい時に読んであげたくなる絵本です。


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