毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、神沢利子さんと平山英三さんによる絵本『ぽとんぽとんは なんのおと』。1980年2月の月刊「こどものとも」に掲載されて以来、多くの親子に愛され続けたロングセラーです。
冬ごもりの穴の中で、熊の坊やがかあさんに、外から聞こえてくる音のことを尋ねます。「かーんかーんって何の音?」「ほっほーほっほーって何の音?」。春を待つ熊の親子の姿をあたたかく描いた絵本。
雪が降りしきる外とは違いあたたかく安全な穴の中から、双子の子熊は外から聞こえる音に耳をすませます。「かーん かーん」「ほっほー ほっほー」。何の音かをたずねる子熊に、母熊は答え、そして続けます。「でも大丈夫。(中略)坊やはゆっくりおやすみね」。そのやさしい語り口に、子ども達は子熊と同じように、母熊にすっぽり包まれているような安心感をおぼえることでしょう。
音がひとつ聞こえるごとに、季節は移り行きます。最初は雪が降り積もる寒い冬だった景色が、鳥が鳴き、雪が溶け始め、次第に春が近づいてきます。視覚ではなく、聴覚と嗅覚で感じる春の気配。見えないからこそ余計に想像力を刺激し、親子熊と共に春を待ちわびる気持ちが高まります。
絵を手掛けた平山英三さんは、「春近い山のクマの親子の話ですが、これはまた、春をむかえる雪国の母と子の話でもあると思いました。(中略)雪の中の話でありながら、あたたかく感じられるのは、そういう春をむかえるときの気持が描かれているからだと、私は思います」と語っています(「こどものとも年中向き」2002年1月号折込付録)。雪に覆われた森の、穴の中の話であるにも関わらず、あたたかく、物語の最後の明るさが心に残る名作です。
<ミーテ会員さんのお声>
子熊がかあさんに「〇〇っておとがするよ。〇〇って、なんのおと?」と、いろいろな音を聞いていく話。静かさを表す「しーん」は日本特有の擬音で、外国にはないと聞いたことがある。よく考えれば、音がないのに擬音があるというのも不思議な話だ。子どもにも「しーんって何?」と聞かれた。雪の降る「しんしん」という音も説明するのが難しかった。(3歳11か月の男の子のママ)
幼少期に樺太の自然の中で過ごした神沢利子さんの描く動物は、どれも身近な友だちのひとりのように描かれています。同じく熊が登場する本では『くまの子ウーフ』が有名ですが、神沢さんと平山さんの作で『いちごつみ』という絵本もあります。合わせて読んでみてくださいね。
無料会員登録後は、過去の「絵本子育て相談室」など、
様々な絵本情報が読み放題!
ぜひミーテにご登録ください♪