毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、新美南吉さんの童話に黒井健さんが絵をつけた『手ぶくろを買いに』。1988年初版のロングセラーです。
寒い冬が、狐の親子がすむ森にやってきました。冷たい雪で遊んで牡丹色になった子狐の手を見て、母狐は手ぶくろを買ってあげようと考えます。その夜、子狐はひとりで人間の町へ買い物に行くことになり…。
『ごんぎつね』とともに、小学校の国語の教科書にも採用されている新美南吉さんの代表作のひとつです。
雪ですら初めて見た無垢な子狐が、母が「恐ろしいもの」と話す人間の町で、おそらく初めてのおつかいをします。子ども達は自分のことのようにかたずを飲んで話を聞くことでしょう。狐と知りつつ手ぶくろを売ってくれる帽子屋にホッとし、大好きな母狐の元でようやく緊張がとける…。画面は最初から最後まで雪一色ですが、あたたかい読後感が残ります。
読みどころが多く、特に最後の母狐の「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら。」というつぶやきは、大人の心に残るのではないでしょうか。この部分は推敲の跡が残っていて、作者の葛藤が読み取れます。新美南吉記念館の公式ホームページで読むことができるので、興味のある方は、ご覧になってみてください。
また豊かな情景描写も見どころのひとつです。「眼に何か刺さった」と子狐が勘違いする雪のまぶしさ、星が落ちていると思う町の灯、あまりの明るさに驚かされる家の電灯の明かり、狐の毛を銀色に光らせ足あとにコバルトの影をつくる月明かり。光の表現だけとってみても、印象的な表現が並びます。これまで多くの画家がこの作品を描いてきた理由でしょう。
黒井健さんの絵は、日本画のような繊細な色合いと、毛並みのやわらかさまで感じるやさしいタッチが、実に情感豊かです。子狐の小ささや、狐親子に通う情愛が幻想的に描かれていて、新美作品の持つ物悲しく美しい世界にいざなってくれます。
<ミーテ会員さんのお声>
『手ぶくろを買いに』をいつ読むか、ずっとずっと迷ってきました。とっても思い入れがある絵本なので、どんな風に息子と出合わせるかが悩みどころ。まだ字が多すぎるかなと思いつつもネットで注文。届いた袋を開けたところ、息子が一目見て「『手ぶくろを買いに』だ!」「え? 漢字なのにどうして読めるの!?」「幼稚園で昨日読んでもらったよ」。ショック…。
そんなこととはつゆ知らず息子は「読んで!」というので気を取り直して読み聞かせ開始。どうやら幼稚園で読んでもらったのは、いもとようこさんが絵をつけていらっしゃるものだったよう。偶然にせよ連日違うバージョンの『手ぶくろを買いに』を読んでもらい、息子は大満足。私が思うような出合いにはならなかったけれど、「大好きな絵本」と言ってくれたので良かったかな。(4歳10か月の男の子のママ)
他にいもとようこさん、わかやまけんさん、柿本幸造さんなど多くの作家さんが絵を描いているので、比べてみても面白いかもしれませんね。
▼黒井健さんのインタビューはこちら
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