イチ押し絵本情報

のんびりユーモラスな、かばくんの一日(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.72)

2016年3月17日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 のんびりユーモラスな、かばくんの一日

今回ご紹介するのは、岸田衿子さんと中谷千代子さんによる名作『かばくん』。1962年に月刊絵本「こどものとも」の一冊として刊行され、1966年に書籍化されました。欧米でも翻訳され、高い評価を受けているミリオンセラーです。

動物園に朝が来た。「起きてくれ、かばくん」と男の子とかめが、かばの親子に語りかけます。動物園でのかばの一日を、動物達の目線で追ったお話。美しいイラストとのんびりしたかばくんの言葉が、こちらまでゆったりとした気分にしてくれます。

見開き

ストーリーは、動物園のかばの朝から夜までを、動物の目線で追ったシンプルなもの。しかしその間に、ひょうひょうとしたおかしみと、のんびりとした空気が流れています。文章は美しく簡潔なことばでつづられていますが、読むとたくさんの不思議や謎が残るナンセンスさを持ち合わせています。男の子がかばくんに話しかけることばは「起きてくれ」でも「眠いなら 眠いと 言ってくれ」などと、何だかおかしな雰囲気。抜け感が絶妙で、もう一度聞いてみたくなります。


『かばくん』の詩は、「どうぶつの12カ月」というレコードの歌詞の為に書かれたもので、動物園では寝てばかりいるかばに「起きてくれ」と呼びかける内容だったそうです。絵本にするにあたって岸田さんと中谷さんで話し合い、動物園でのかばの一日にし、子どもの飼育員のような立場の男の子と、ひとりでは…ということで連れを、かばと一緒に泳げるかめにしたそうです。(『月刊絵本「こどものとも」50年の歩み おじいさんが かぶを うえました』福音館書店)

また、この絵本を忘れられない一冊にしているのは、表紙のかばくんの圧倒的な存在感でしょう。中谷さんは、上野動物園に通ってかばを繰り返し描かれたそう。物語に流れるのんびりとしたユーモラスな雰囲気は、この大きくて表情豊かなかばの姿に負うものが多いでしょう。ちなみに中谷さんは、子どもの頃は動物が苦手だったというから驚きですね。

<ミーテ会員さんのお声>
卒乳して以来、寝る前に必ず要求されるようになった絵本です。「ゆりかごのうた」→「ねこ ときどき らいおん」のうた→『かばくん』。なんでこの流れなのかわからないけど、お乳をがまんして、聞きながら寝る姿に成長を感じました。

図書館で大判の『かばくん』を見つけたときも大興奮して、広げてみていました。 動物の中でもかば(必ずかばくんというけれど)が好きみたい(2歳1か月の男の子のママ)

穏やかなことばと、かばの大らかな姿に、心が安らぐ不思議な一冊ですね。かばくんの姿が忘れられなくなった方は、併せて続編の『かばくんのふね』をどうぞ。大雨で洪水になった動物園で、かばくんが活躍します。


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