毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介するのは、斎藤隆介さんの文、滝平二郎さんの絵による名作『花さき山』。1969年初版のミリオンセラーです。
10歳の少女あやは、山菜を取りに行った山で、白髪の山ンばと出会います。山ンばは、山に咲き乱れる一面の花を指差しながら、やさしいことをすると美しい花が咲くのだと語り始めました。
あやの足元に咲いている赤い花は、あやが母親や妹のことを思って着物を買ってもらうのを辛抱した時に咲いた花。今まさに咲こうとしている小さな青い花は、双子の赤ん坊の上の子が、弟を思っておっぱいを我慢することで咲かせている花…。
教科書で読んだ記憶のある方もいらっしゃることでしょう。やさしさ、けなげさとは何か、美しい花を咲かせた心とは、どんなものなのか…様々なことを考えさせられる、民話風のお話です。
あやや双子の兄の我慢や辛抱を「自己犠牲」と考えると、あまりに切ない物語ですが、この作品が一番伝えようとしているのは、我慢や辛抱という部分ではなく、「誰かを思って行動する」ということの尊さなのではないでしょうか。自分が我慢することで、お母さんは助かり、妹は喜ぶ。あやはそれを自分の喜びにできる、やさしい子なのです。
花さき山の一面の花は、心の美しさの象徴。「情けは人の為ならず」と言いますが、あやのやさしい行いは、美しい花として咲くだけでなく、きっといつかあや自身に返ってくることでしょう。
道徳の授業でも取り上げられるようなテーマのお話なだけに、小さな子どもには少し難しいかもしれませんが、色とりどりの花の美しさを感じるだけでも、意味があるような気がします。滝平二郎さんの、力強くもあたたかみのある切り絵は、幼心にも強い印象を残すはず。大きくなってから、あんな絵本があったな…と読み返すと、子どもの時よりも深い感動を味わえるかもしれません。
<ミーテ会員さんのお声>
初めて娘と一緒に『花さき山』を読んだ。読み終わると「○○ちゃんも、やさしいことしたら、お花さくー?」と娘から質問が。「そうやなぁ、○○ちゃんにも咲くよ」と答えると、「じゃあ、○○ちゃんがやさしいことしたら、お母さんは何て言う?」と聞いてくるので、「んー、うれしいうれしいって、言うよ」。「じゃあ、お父さんはー?」「お父さんも、うれしいと思うよ」。私がそう答えると、満足げなお顔の娘。自分以外の誰かがどう思うのか、それが気になる娘はやさしい、と思う。(2歳10か月の女の子のママ)
山ンばがあやに語って聞かせた話の中には、命をかけて高波を防ぎ、村を守った八郎や、燃え盛る山にかぶさって山火事を鎮火させた三コという、ふたりの大男も登場します。こちらについては、それぞれ『八郎』、『三コ』という作品でじっくりと描かれているので、興味のある方はぜひあわせて読んでみてください。
無料会員登録後は、過去の「絵本子育て相談室」など、
様々な絵本情報が読み放題!
ぜひミーテにご登録ください♪