毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介するのは、筒井頼子さんと林明子さんによる名作『はじめてのおつかい』。1977年の刊行、累計200万部超のロングセラーです。
ママにおつかいを頼まれたみいちゃんは、初めてのおつかいに、思わず飛び上がります。ママに渡された100円玉を2つ握りしめ、坂の上のお店に牛乳を買いに出かけますが…。子どもが初めての経験に向かう気持ちを丹念に、みずみずしく描いて愛され続けている作品です。
5歳のみいちゃんが経験する、初めてのおつかい。ママにひとりでおつかいに行くよう頼まれた時、みいちゃんは後ろ姿が描かれていて表情が見えません。しかし、きっと緊張と不安、そしてママから頼みごとをされた誇らしさが浮かんでいたはずです。
絵本の前半は、俯瞰や視点を低く置かれた絵が多くなっています。風景の中のみいちゃんは小さく、店までの道のりは遠く感じます。子ども達は、みいちゃんと同じ目線、同じ心もとなさを共有しながら進むことになります。
お店への道すがら、自転車が通る、友だちと会う、転んでお金を落とす、おばさんに声が届かない…。大人にとってはささいな、子どもにとっては大きな事件が続きます。ひとつずつは小さくても、それが続くことで、小さな胸に次第に不安が募ってきます。それを打ち破る「ぎゅうにゅうくださあい!」の声。みいちゃんがひとつ成長した瞬間に、多くのママ達が思わず涙をこらえたのではないでしょうか。
最後に、坂の下に見えてくるママの顔。ここまでみいちゃんの気持ちを共有して、かたずをのんで来た子ども達の口から、ホッと安どのため息が出る瞬間です。
このお話は、作の筒井さんとお子さんの体験が元になっているそう。また、筒井さんにとってはデビュー作、絵の林さんにとっても初めての物語絵本でもあったことが、この初々しくさわやかな作品が生まれた理由ではないでしょうか?
<ミーテ会員さんのお声>
図書館で何気なく手にとったが、娘と読みながら途中で涙声になり、最後にはほんとに泣いてしまった。
「ぎゅうにゅう、ください」って小さい声しかでなかったり、おばさんにおしやられちゃったり、最後にがんばって思ったよりずっとずっと大きい声をだせたり、お店のおばさんが何度も何度も謝ってくれたり…。いつか娘も、こんな風に、ぎりぎりがんばって、いろんな思いを経験するんだろうかと思うと、また涙が出てきた。(2歳9か月の女の子のママ)
描かれた家や町、店のなつかしいたたずまい、町の人の小さなやさしさも見どころのひとつです。おつかいのみならず、子どもの初めてを応援したくなる一冊ですね。
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