スペシャルインタビュー

月光荘画材店オーナー・日比ななせさん スペシャルインタビュー

今回のインタビューは、ミーテの「親子のきずなづくり応援プロジェクト」の考えに共感いただいた月光荘画材店オーナー・日比ななせさんにご登場いただきます。月光荘さんは、日本で最初に子どもたちのための絵の具をつくられた伝統ある画材店。今回は、創業以来貫くものづくりや子どもたちへの思いについてお話いただきました。

日比ななせさん

日比 ななせ(ひび ななせ)

東京都生まれ。東京・銀座の老舗画材専門店「月光荘画材店」の創業者・橋本兵藏の娘で、現在は2代目オーナーとして、月光荘画材店や併設ギャラリーの経営やオリジナル製品の企画開発に携わる。
月光荘画材店 http://gekkoso.jp/

創業96年、銀座の月光荘画材店

月光荘画材店

▲店名は、歌人の与謝野鉄幹・晶子ご夫妻が、創業者の故・橋本兵蔵を可愛がり、「大空の月の中より君来しや ひるも光りぬ夜も光りぬ」と詠んで「月光荘」と名付けたのが由来だそうです

月光荘画材店は、大正6年(1917年)に父・橋本兵藏が始めました。今年で創業96年になります。

当時は画家、音楽家、小説家、歌舞伎役者など、さまざまなジャンルの文化人が集う“サロン”が流行っていたんですね。縁あって歌人の与謝野鉄幹、晶子ご夫妻が中心になっていたサロンに出入りしていた父は、サロンに集う才能あふれる方たちから、たくさんの刺激を受けていたようです。

そういった交流の中で父は、画家たちが絵の具の入手に苦労していることを知ったんですね。その頃は国産の絵の具なんてない時代でしたから、画材はほとんどフランスから取り寄せなければならなかったんですが、船便なので数ヶ月かかっていたんです。せっかく描く意欲が湧いてきても、色が足らなくて数ヶ月待たなければいけない……それを知った父は、自ら画材店を開くことにしたんです。

もともと父は、子どもの頃から虹の色に魅せられて、虹にのぼってみたいと駆け出していくような人でしたから、そんな素敵な色を画家たちだけでなく子どもたちにも届けたいという思いがあったんでしょうね。それで、オリジナルの絵の具の研究開発にも力を注いでいきました。

「月光荘ピンク」と呼ばれるコバルト・バイオレット・ピンクは、1971年の世界油絵具コンクールで1位を受賞して、ル・モンド紙に「フランス以外の国で生まれた奇跡」と身に余る評価をいただいたんですよ。

職人が一つ一つ丁寧につくりあげた製品の数々

月光荘画材店

▲店内に所狭しと並ぶオリジナル製品の数々。有名小学校・中学校でも長年使われているそうです

月光荘で扱っているのは、絵の具以外のものもすべてオリジナルの製品。筆一本にしても木炭一本にしても、職人が一つ一つ丁寧につくりあげたものばかりです。指の先にそのまま絵の具が乗ってキャンパスに色が降る……そんな感覚を大切にしたいと思うと、やはり手づくりのものに行きつくんですよね。

手にとって使っていただければ、安くつくられた量産品や輸入品にはない良さを感じていただけると思います。数多くの幼稚園や学校でお使いいただいている理由も、そこにあるのではないかと思っています。

お客様が、自分の心に本当にしっくり来るものを求めて、時間をかけてじっくり吟味して選ばれている姿を見ると、いい作品が生まれたらいいなと心底思うんです。オリジナルの製品だけで店を続けていくのは大変なことですが、喜んでくださるお客様がいる限り、誇りを持ってこのスタイルを続けていきたいですね。

子どもたちにこそ“本物”を与えよう

絶対音感を身につけるなら小さいうちからって申しますでしょう? 色の感覚も同じで、小さいうちから身近にきれいな色があれば、自然と身についていくものなんです。

ですから、「子どもには安いものでいい」なんて考える方もいるかもしれませんが、むしろ子どもたちにこそ“本物”を与えなくてはいけないと思うんですね。感性が育まれる大切な時期だからこそ、本物の色、本物の道具を使っていただきたいんです。本物を使うことで養われた色の感覚は、一生の宝になるはずです。

大量生産でなく、手間隙かけて思いを込めて製品やお客様と向き合っていくというのは、子育てと一緒だなと思うんです。私も3人産んで育てましたが、子育てって本当に大変ですよね。私の場合、主人の仕事の関係でヨーロッパやアメリカに住んでいたりもしたので、文化が全然違うところでの子育てに、いろいろと苦労もしました。今子育てをされている若いお母さん方のことも、心から応援してあげたいなって思っています。

月光荘に来られるお客様の中には、絵本作家として活動されている方もいらっしゃいます。月光荘の画材を使って生まれた絵本が、たくさんの親子に読まれていることを考えると、とてもうれしいですね。絵本は色の感覚や芸術的な感性だけでなく、心を育んでくれるものです。親子一緒の絵本の時間を、ぜひ大切にしていただきたいですね。

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