vol.38佐藤弘道さんの推し絵本
思い出の一冊、大好きな一冊、渾身の一冊など、とっておきの“推し絵本”を紹介してもらうインタビュー「みんなの推し絵本!」。今回は、NHK「おかあさんといっしょ」の第10代・体操のお兄さんであり、現在は全国で親子体操教室を主宰するなど多方面でご活躍のタレント・佐藤弘道さん。昨年発症した脊髄梗塞から復帰後初となる絵本や、読み聞かせについて伺いました。
『ホネキンシアター』は、脊髄梗塞を発症しリハビリに集中していた時期に、「病気の経験を踏まえて、子どもに健康や運動の大切さを伝える絵本をつくりませんか」と、出版社の方からお声がけをいただいたことがきっかけで手がけることになりました。
幼児期に運動遊びに親しんでおくと、一生分の健康の基礎を築くことができます。また療養中に励ましの声を届けてくれたたくさんの方々に、絵本を通じて感謝の気持ちをお伝えしたいという思いもありました。タイトルには、骨と筋肉で「ホネキン」、人生劇場という意味で「シアター」という意味を込めました。
子どもたちに読み聞かせるものですから、例えば「顔の骨・筋肉」ではなく「笑顔をつくる」という役割で紹介するなど、わかりやすい表現を心がけました。また、先生や親など大人にも自分の体に目を向けるきっかけにしてほしくて、骨と筋肉の働きについての知識も盛り込んでいます。
幼児期には、ひとつのスポーツに集中したり体を鍛えたりするより、普段の生活の中で全体をバランスよく動かすことが大事です。絵本では顔の筋肉を使った「笑顔がすてきになるヘン顔体操」や、胸の筋肉に効く「ひらけごま!遊び」など、楽しい表現で具体的な運動メニューを紹介しています。肩車することが親子両方の体側の筋肉を鍛えることにつながるなど、日常に取り入れられることもありますので、実際に体を動かしてみてくださいね。
脊髄梗塞という病気は一生治らないものですが、不具合はありつつも奇跡的に歩けるようになりました。ここまで回復できたのは、医療従事者の方々の献身的なサポートはもちろんですが、子どもたちや園の先生方などファンの皆さまから届いた、たくさんの励ましのおかげです。そして、私自身が子どもの頃から体を動かし続けてきたことも理由のひとつではないかと思っています。私の経験が、この絵本を通じて、子どもも大人も自分の体と向き合い、生涯にわたって健康に過ごすための一助になればと思っています。
わが家では、義理の母がいつも読み聞かせをしながら息子たちを寝かしつけてくれました。『はらぺこあおむし』、『おおきなかぶ』、『100万回生きたねこ』、『ぐりとぐら』、『おばけのバーバパパ』などたくさん読んでくれていたようです。
子どもたちはしかけ絵本が好きでしたが、ふざけ過ぎて破れて壊れてしまったこともありました。それも今ではいい思い出になっています。おかげさまでふたりとも本を読むのが好きになって、家族で外出する際や、病院などで静かにしなくてはいけない時などには、必ず何冊か絵本を持っていっていましたね。
仕事柄、幼稚園や保育園、子ども園にはよく行きましたが、体操の指導前に絵本や紙芝居を読むことも多かったです。工夫した点は「普通に読まない」です。先生たちや親とは違う読み方をすることで、「ちが~う!」と子どもたちからツッコミを受けて、そこから会話のキャッチボールが始まります。時には「『ズコッ!』と読んだら、その場で後ろにゴロンと転がってね!」と伝え、体を動かすことにつなげるなどの工夫もしました。
同じストーリーでも、読む人によってまったく印象が変わるのが絵本の面白さです。読み聞かせに決まりはありません。他のことにもつながりますが、がんばり過ぎない方がいいと私は思っています。まずは自分が楽しむ。大人が楽しんでいるのを見ると子どもたちが興味をもって集まってくれます。集まってくれたら、もうこちらの自由自在です。言葉に面白おかしく抑揚をつけるなどして、一緒に絵本を楽しんでください。ポイントとしては「集中してほしい時ほど小さい声で読む」です。ぜひ、試してみてくださいね。
佐藤 弘道(さとう ひろみち)
1968年、東京都生まれ。1993年4月よりNHK「おかあさんといっしょ」の第10代・体操のおにいさんを12年間務め、その後『あそびだいすき』を含め、計15年間教育番組にレギュラー出演した。現在はタレントとしての活動のほか、全国で親子体操教室、講演会、指導者実技研修会、ファミリーイベントなどを実施している。2024年に脊髄梗塞を発症、奇跡的な回復が話題に。