Vol.22 『てん てん てん』作者・和歌山静子さんインタビュー
赤ちゃんとの絵本の時間を楽しみたい、すべての方へ。選りすぐりの赤ちゃん絵本の誕生秘話や、作家さん・編集者さんが絵本に込めた思いを伺いました。赤ちゃん絵本を楽しむヒントが詰まったインタビュー、今回は和歌山静子さんにご登場いただきます。
※和歌山静子さんは2024年1月8日にご逝去されました。故人のご功績を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。
『てん てん てん』は、福音館書店の赤ちゃん向け月刊誌「こどものとも0.1.2」が始まったばかりの頃に、編集部からの依頼を受けてつくりました。最初の見開きで「てん てん てん」と黒い丸が無作為に並んでいて、ページをめくるとテントウムシになります。次は「ぐる ぐる ぐる」と渦巻きが出てきて、カタツムリ。抽象的な絵と虫の絵を交互にくり返して展開していく絵本です。
虫を題材にしたのは、私自身、もともと虫がすごく好きだったから。カイコやアゲハチョウ、トンボの幼虫など、虫を飼った経験もたくさんあるんですよ。編集部からは、赤ちゃんのための虫の絵本がほしかったんだと喜ばれました。虫の絵って細かく描く方が多いから、なかなか赤ちゃん絵本にはしにくかったんでしょうね。
太い線で力強く描く私の絵は、シンプルで直球勝負の赤ちゃん絵本と相性がぴったり。それ以降、『はしるのだいすき』、『ひまわり』、『どんどこ どん』など、本格的に赤ちゃん絵本の分野で描くようになりました。
0歳の赤ちゃんは、お話よりも絵を目で追って反応するので、『てん てん てん』や『ひまわり』のような絵の多い絵本を選んで、くり返し読むといいですね。それから、よく読んでいる絵本は、表紙が見えるように立てかけて置いておくといいですよ。子どもは表紙を見るたびに、その絵本を読んだ時の楽しさを思い浮かべて、うれしい気持ちになることでしょう。
お母さんが小さい頃に読んでもらった、大切な思い出の絵本を選んで読んであげるのもいいですね。そういう絵本を読むと、自然と声が変わってくるんです。初めて読む絵本と比べると、子どもへの伝わり方も違ってくるはずですよ。
でも実は、子どもにとっては、絵本の内容よりも絵本の時間そのものが大事なんですよね。絵本を読んでもらっている間は、お母さんをひとり占めすることができるでしょう。ひざの上に抱っこして読んでもいいし、寝転んで読んでもいいんですけど、とにかく“自分のためだけのお母さん”でいてくれる時間があるということが、子どもにとってはすごく大切なんだと思います。
私には今、5歳と1歳の孫がいるんですが、息子が以前、『てん てん てん』を読んだ時のエピソードを話してくれたことがあって。当時2歳だった孫が、カタツムリの「ぐる ぐる ぐる」のところで、自分から渦巻きを指でぐるぐるっとなぞっていたと言うんです。音と動きを同時に理解していることがわかって、息子もうれしかったのでしょうね。
絵本の時間は、読み聞かせするお母さんやお父さんにとっても、子どもの成長を実感できる特別なひととき。親子一緒に楽しめば、絆もぐっと深まると思いますよ。
和歌山静子さんの赤ちゃん絵本『てん てん てん』に直筆サインを入れていただきました!
ミーテ会員3名様に抽選でプレゼントします。
プレゼントの応募は締め切りました。当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
和歌山 静子(わかやま しずこ)
1940年、京都市生まれ。武蔵野美術大学デザイン科卒業。1980年『あいうえおうさま』(文・寺村輝夫、理論社)で絵本にっぽん賞、1982年『おおきなちいさいぞう』(文研出版)で講談社出版文化賞絵本賞受賞。主な作品に「王さま」シリーズ(文・寺村輝夫、理論社)、『おかあさんどーこ?』『ぼくのはなし』(童心社)、『てんてんてん』『はしるのだいすき』『ひまわり』(福音館書店)、『おーいはーい』(ポプラ社)などがある。神奈川県逗子市の自宅で「アジア絵本ライブラリー」を運営している。