絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、ちょっとおとぼけだけれど、楽しいことが大好きな“くろくまくん”を描く「おはなし・くろくま」シリーズが話題の、たかいよしかずさんです。キャラクターデザイナーとしても活躍されるたかいさんが、絵本を通じて伝えたい思いについて語ってくださいました。
今回は【前編】をお届けします。(【後編】はこちら→)
1961年、大阪府生まれ。明治「マーブルチョコレート」キャラクターの「マーブルわんちゃん」、大阪千日前商店街のマスコットキャラクター「みにゃみん」など、多くのキャラクターデザインを手がけるとともに、イラストレーターとしても活躍。主な作品に、「怪談レストラン」シリーズ(松谷みよ子責任編集、童心社)の装丁・挿し絵、『ネコダルマンの宝島』(青心社)、「おはなし・くろくま」シリーズ(くもん出版)などがある。(株)京田クリエーション所属。http://www.nekodaruman.net/
僕は小さいとき、それほど本を読まなかったんですよ。よく読むようになったのは、小学校高学年になってから。担任の先生が、大阪教育大学の美術科を出ていて、図画工作に力を入れられてたんですね。僕は絵を描くのが好きやったから、その先生のことも好きで。あるときその先生が、「図書グラフをつくります」って言いはったんです。1冊読んだら1マス埋めて、棒グラフで誰が何冊読んだかわかるような表が、教室にばーっと貼られたんですよ。
それで、僕は負けん気だけは強かったみたいで、これは読まなあかんわ!ってなって。もともと母親からは、「本を読みなさい」と結構言われてたんですけど、親が読ませたい本って、あんまり読みたくない本だったりするんですよね(笑)だからそれまでは、漫画以外の本なんてほとんど読んだことなかったんですけど、学校の図書室に行ったら、SFものとか、おもしろそうな本が結構あって。そのうちだんだん学校の図書室の本だけじゃ足りなくなってきて、家から3駅向こうにある大きい図書館にも自転車で通うようになりました。
でも、子どものときに一番好きだったのは何かと言えば、本よりもまず、虫と怪獣ですね。よく行ってたんですよ、虫捕り。近所のお墓にくぬぎの木が植わってるんで、その木によじ登って、クワガタとか捕ってました。怪獣は、ウルトラマンですね。すごいテレビっ子で、1日に8時間くらいテレビ見てたんちゃうかなってくらい、テレビ好きだったんです。将来は昆虫博士か怪獣博士かっていうくらい、虫と怪獣がすべてって思ってた子どもでした。
考えてみると、自分が今やってることって、子どものときに好きやったこととか、興味があったこととかにつながってるんですよね。今は、子どもの頃に味わった気持ちをちょっとずつ切り取って、何かものをつくってんねんなって、すごく感じてるんですよ。
▲たかいさんが装丁・挿絵を手がけた「怪談レストラン」シリーズの第一作『幽霊屋敷レストラン』(編集・松谷みよ子、童心社)。
絵本作家になりたいと思ったのは、大学の4回生のとき。教育実習で母校の中学校に行ったんですね。先生になるつもりはあまりなかったんですけど、せっかく教えるんやからと思って、自分なりに2週間のカリキュラムを考えていったんです。でも、学校には学校のカリキュラムがあるから、それを教えてもらわないとって言われて。
2週間やってみて思ったのは、美術の先生やったらやれるかもしれない、でも、今の学校で求められているのは、教科を教えるだけじゃなく、生活指導ができる人なんじゃないかということ。ただ、自分の中には、何かしら子どもたちに伝えたいことがある。それなら将来は絵本作家になって、絵本を通して伝えていこうと決めたんです。それから、イラストレーター、デザイナー、キャラクターデザイナーとしていろいろ仕事をしてきて、ここ数年でやっと絵本を作る仕事にたどりつきました。
その間、二科展やボローニャ国際絵本原画展など、公募展にもたくさん出品しました。公募展に出すとその分、自分の作品がたまっていくので、たまった作品で個展ができるじゃないですか。神戸での個展は、もう15年も続けてるんですよ。10年を区切りにやめようかなとも思ってたんだけど、10年目のとき、「小学生のとき初めて見て、今度社会人になります」って人と出会って、これはやめられへん!と。続けられるってことはほんとに幸せなことやから、可能な限り続けようって思ってます。
そうやって描きためた作品をもとに自費出版でつくったのが、『ネコダルマン ファンタスティックワールド』という絵本です。この絵本がたまたま松谷みよ子さんの文庫にあって、子どもがくすくす笑って読んでいたのを見られたらしくて。それがきっかけになって、童心社さんから「怪談レストラン」シリーズのイラストを担当しないかと連絡があったんです。
最初は、こわいキャラクターは描けないから無理!と思ったんですけど、お話も絵もこわいと子どもが買ってくれないから、ちょっとこわいような、かわいいような、その中間くらいでとのことだったので、引き受けたんです。イラストを描くにあたって、子どもの頃に味わった「怖い」という気持ちを思い出さないと、と思って、今でいう廃墟みたいなところにも行ったりもしたんですよ。全5巻ということで始まった「怪談レストラン」のシリーズは、50巻までいきました。
「おはなし・くろくま」シリーズのくろくまくんとのつきあいは、もう9年目になります。もともとレターセットのキャラクターとしてプレゼンして、ボツになったものだったんですけど、僕はすごく気に入ってたんで、絶対いつか何かに使おうと思っていたんです。
くろくまくんはしゃべらないし、わりと淡々としていて、どんな性格かつかめないところもあるんですけど、好奇心は旺盛ですね。シンプルだけど、表情も豊かなんですよ。
絵本にしても、アニメや漫画やゲームにしても、まずはキャラクターありきだと思うんですよね。キャラクターをつくるってことは、世界観をつくるってこと。そのキャラクターがどんな子で、何をしゃべるのか、どんな行動をするのか、ある程度性格づけをしていくと、あとはもう僕がいろいろ考えなくても、キャラクターが勝手に動いてくれるんです。
僕のつくったほかのキャラクターだと、明治製菓のマーブルわんちゃんは13年、オリジナルで続けているネコダルマンたちは、20年来のつきあいになります。これからももっともっと、たくさんキャラクターをつくっていきたいですね。
……たかいよしかずさんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→)