絵本作家インタビュー

▲地球の問題と世界の子どもたちのお話『もったいないばあさんと 考えよう 世界のこと』（講談社）

もったいないばあさんのモデルは、実は観音様なんです。最初につくったときは、目が黒丸の点だったんですね。でも、「もったいないばあさん」の名前に見合うくらい、インパクトのあるキャラクターを作ってきてください、と編集者さんに言われて。そんなときちょうど、テレビか何かで仏像を見て、これだ！と。どこを見ているかわからないけれども、全部見てますよという半眼がぴったりと思ったんです。

厳しいことを言って、一見こわそうに見えるけれど、本当は愛あふれる優しいおばあさん。こういう生き方ができたらいいなっていう、理想像でもあります。

ケチんぼのおばあさんだね、なんて言われることもありましたけど、「もったいない」と「ケチ」は違うと思うんですよ。もったいないばあさんが「もったいない」と思うのは、感謝の気持ちや、人やものを大事に思う優しさ、愛情があるからこそ。でも、ケチっていうのは執着なんですね。自分のものを人にあげたくないとか。そこが違うんです。それをわかりやすく伝えるために、「がちゃばあ」というかたき役のキャラクターを登場させています。

▲楽しくてかわいい、赤ちゃんからの絵本『おべんとうバス』（ひさかたチャイルド）

うちの息子は今10歳。小学校５年生です。今振り返ると、２歳ぐらいの頃って確かすごく大変だったんですけど、一番かわいかったんですよね。もちろん今もかわいいですし、そのときどき、いつもかわいいですが、その頃の子どもって、「お母さん命！」。それがとっても幸せでした。子育て真っ最中のお母さんたちには、その幸せをかみしめながら、今の時間を楽しんでいただけたらいいなと思います。

息子が小さかった頃は、息子を主人公にした紙芝居をよくつくっていました。なんとかレンジャーとか、ウルトラマンとか、ヒーローが全部出てくるようなお話をコピー用紙にマジックで描いて、紙芝居形式で読むんです。すごく喜んでましたね。絵本だと、『ねないこだれだ』や『三びきのやぎ』『めっきらもっきらどおんどん』など、自分で文章を覚えているくらい好きな絵本がいくつかありました。

みなさんもたぶんそうされていると思うんですけど、子どもをひざの上に座らせて、読み聞かせをしていました。家でだからこそできるスタイルですよね。読み聞かせのひとときって、かけがえのない時間だと思うんです。子どもが小さいときしかできない、幸せな時間。お母さんのぬくもりを感じながら絵本を楽しんでいると、会話もあったかい。そういう幸せな時間のために絵本をつかっていただけたら、私もうれしいです。

▲チョコレートでできた雪だるまのお話『チョコだるま』（ほるぷ出版）

絵本をつくっていて思うのは、根底に流れるメッセージが本当にいいものでありたいなってことです。愛情でもユーモアであっても、想像力をはぐくむものでも、小さい頃の思い出として残るような本。子どもたちが大人になったとき、自分の子どもにも読んであげたいと思ってもらえるような絵本がつくれたらいいなと思います。

『かぼちゃものがたり』と『ハートリペアショップ』の２冊は、子どもが生まれる前につくった絵本ですが、それ以降の、子どもに向けてつくった『もったいないばあさん』や『おべんとうバス』などの絵本は、作風ががらっと変わったねといわれることがあります。でも、自分としては、どれも自分らしいと思う大好きな作品です。昨年出した『チョコだるま』は、どちらかというと子どもが生まれる前の作風に近いかもしれません。あまり決め付けずに、いろいろなタッチでも作品をつくっていく中で、どれも真珠さんらしいねって感じていただけるようになればと思ってます。

絵本になればいいなと思っているお話はいっぱいあるんですが、絵本だけじゃなくいろいろなことをやっているので、今はなかなか集中してつくる時間がとれなくて…。でも、できることからひとつひとつベストをつくして、絵本づくりも続けていきたいです。