絵本作家インタビュー

vol.4 絵本作家 田中清代さん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェ インタビュー」。今回ご登場いただくのは、繊細な線で描かれる大胆な構図や不思議なストーリーが魅力の絵本作家・田中清代さんです。表紙をはみ出るほどに大きく描かれたトマトが印象的な代表作『トマトさん』の制作裏話や、絵本作家になるまでの道のり、自然あふれる里山での暮らしなどについてお話しいただきました。
今回は【前編】をお届けします。 (【後編】はこちら→

田中清代さん

田中清代(たなか・きよ)

1972年、神奈川県生まれ。絵本作家、銅版画家。多摩美術大学油画・版画専攻卒業。在学中に絵本の制作を始める。1995年、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展でユニセフ賞受賞、翌96年同展で入選。作品に『おきにいり』(ひさかたチャイルド)、『おばけがこわいことこちゃん』(ビリケン出版)、『みつこととかげ』『トマトさん』(福音館書店)、『ねえ だっこして』(文・竹下文子、金の星社)、『おかあさんとさくらの木』(文・柴わらし、ひくまの出版)などがある。
http://www.oyikakanat.com/

お絵かき大好き少女が絵本作家になるまで

小さい頃から絵を描くのが大好きでした。描いた絵を父や母に見せると褒めてもらえたので、たぶんそれで絵を描くのが好きになって、好きになるとさらに工夫して描くようになって。小学校の頃は、学校の絵のコンクールなどで毎回賞をいただいてました。でも実は、先生には「もっとのびのびと描きなさい」なんて言われてたんです。わりと技法とかにこだわって、ある意味子どもらしくない、大人びた絵を描いてたんでしょうね。ちょっと自信過剰になってたところもあったかもしれなくて、親にはあんまり自信満々になるなみたいに言われてましたよ(笑)

絵本に本格的に興味を持ち始めたのは、小学校高学年くらいのことですね。学校の図書館でよく児童文学の本を借りて読んでたんですよ。絵を描くのが好きだったので、自然と児童文学の挿し絵に目がいくようになりましたね。

中学の頃には雑誌『MOE』や『詩とメルヘン』などを読むようになって、ますます絵本の世界に惹かれていって。高校は芸術専攻があるところに入学して、絵の勉強をしはじめました。その高校の図書館には、絵本がいっぱいあったんですよ。今にして思うと「なぜ高校の図書館にそんなに絵本が……?」とちょっと不思議なんですけどね。とにかく絵本がいっぱいあって、そこでいろんな絵本と出会いました。

大学では油絵と版画を学んだんですが、もともと好きだった子どもの本に関係することも学びたくて、絵本研究会というサークルに入りました。年に3回展覧会をやるので、そこに出すために大学時代に5~6冊絵本をつくりましたね。それからボローニャ国際絵本原画展に出品して入選したりして……そのあたりからですね、絵本作家としての道を本気で考えるようになったのは。

デビュー作『みずたまのチワワ』(文・井上荒野)が出たのが1997年。初めて自分の絵が絵本として印刷されたのを見たときは、うれしいのと同時に、「あ~、すっごく私の絵だな」なんて自分の絵を再認識しました。それからもう10年以上になります。暮らしは結構厳しいんですけど、それでも編集の方をはじめ、いろんな方との出会いの中で絵本作家としての仕事を続けてこられたので、恵まれてるなと思ってるんです。だからそれを無駄にしたくないし、ちゃんと生かしたい、応えたいって思ってます。

絵本を探すなら図書館に行こう!

図書館で本を読んでいたことが今の仕事につながっているくらいですから、やっぱり図書館は昔から大好きでした。一番よく足を運んでいたのは中学・高校時代。いつも一人で行ってましたね。静かな図書館で本に囲まれていると、なんだか落ち着くんです。よく読んでいたのは、松谷みよ子さん、佐藤さとるさん、いぬいとみこさんとか。あと海外の翻訳もののファンタジーも好きでした。

書店って、どこに行っても同じような絵本が置かれてるじゃないですか。スペースも限られてますし。でも図書館だと、蔵書がいっぱいあるから、書店では出会えないような絵本に出会えるんですよね。すごく昔に絶版になったおもしろい絵本が見つかったりもするし、書店では手にとらない絵本でも、図書館なら気軽に手にとれるし。いろんな本との出会いはまるで宝探しのような感じで、わくわくしますよね。

だから絵本を探すなら、まずは図書館がおすすめですね。インターネットで手軽に情報が得られるのも便利ですけど、やっぱり図書館に行って、子どもと一緒にリアルに絵本をめくってみたりするのが楽しいんじゃないかなと思います。

絵本の読み聞かせは“ライブ感”が魅力

子どもたちに向けての読み聞かせ会も、ときどきやってます。読む前は「ちゃんと聞いてもらえるかな?」とちょっと心配になったりするんですが、読み始めるとすごく集中して聞いてくれるんですよね。集中して聞いてくれるのが、絵本そのものの力なのか、作者が読んでるから気迫みたいなものが伝わってるのか……どっちが理由なのかは、わからないんですけど(笑)

でも実は、読み聞かせは、聞くほうが好きなんです。自分で読むよりも誰かに読んでもらった方が、絵本の内容がすーっと入ってくるんですよ。それからやっぱり、肉声ですよね。ビデオやDVDだと、再生すれば自動的にナレーションが流れてくるじゃないですか。でも絵本の場合は、誰かが声をあげて読まないと始まらない。そして誰かがページをめくらなければ先にも進まない。そういう“ライブ感”がいいんですよね。

私は趣味でウクレレや歌もやってて、仲間とライブとかもしてたんですけど、そのときしか生まれない音だったり言葉だったりを聴けるっていうのは特別な感じがします。次の曲何かなって待つときのわくわく感と同じように、次はどんな絵本を読んでもらえるのかなって待っているのは、子どもでも大人でも楽しいですよね。


……田中清代先生のインタビューは後編へとまだまだ続きます。 (【後編】はこちら→


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