絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、わがままだけど憎めないブタの男の子が主人公の絵本「フンガくん」シリーズでおなじみの、国松エリカさんです。フンガくんの言動に「うちの子と同じ!」と共感したことのある方も多いのでは? 絵本作家になられた経緯やフンガくん誕生エピソード、絵本に対する思いなど、お話しいただきました。
今回は【前編】をお届けします。(【後編】はこちら→)
1962年、大阪府生まれ。デザイナーを経て絵本作家に。絵本のワークショップ「あとさき塾」一期生。1993年、『ラージャのカレー』(偕成社)で絵本作家デビュー。主な作品に「フンガくん」シリーズ(小学館)、「ポーラーちゃん」シリーズ、「ガーコちゃん」シリーズ、『たぬきいっかのはらぺこ横丁』(以上学研)、『うりぼうのごちそうさがし』(佼成出版社)などがある。
小さい頃から絵を描くのが好きで、よくチラシの裏に描いていました。自分ではよく覚えていないんですけど、子どものときの写真を見ると、ふすまとかにも落書きをしてたみたいで(笑) おばがよく福音館の絵本を送ってくれたので、それは今もすごく心に残っています。『三びきのやぎのがらがらどん』や『ながいかみのラプンツェル』など、外国の絵本が多かったかな。その頃に好きだった絵本は、今もやっぱり好きですね。
四姉妹の一番上だったので、子どもの頃からちっちゃい子たちを遊ばせていました。いとこたちの中でも一番年長だったし、近所の子どもたちも自分より年下の子ばかりだったので、好きで遊ばせているというより、必然という感じで。なんだかいつもにぎやかでしたね。
妹たちもいるから「早く自立しないと」という意識も強くて、中学生の頃には絵かデザインの方向で仕事を見つけようと決めてたんです。商業ベースに乗ったものの方が仕事につながるかなと思って、大阪市立工芸高校のデザイン科に進学して、卒業後は家電メーカーに就職しました。
その会社で4年間、家電のデザインの仕事をやったんですけど、自分がやりたいのは生活を便利にするとか、そういうんじゃないなと思い始めて……もっといろんな勉強をしたいという気持ちもあったんですよね。それで仕事を辞めて、アルバイトをしながらイラストを勉強しなおしたんです。その後、東京のデザイン会社に入って、イラストやディスプレイ、デザインなどいろんな仕事をするようになりました。そこでの経験は、すごく勉強になりましたね。
▲カレー作りの名人ラージャのカレーの匂いは、雲まで届き……国松さんのデビュー作『ラージャのカレー』(偕成社)
会社勤めをしながらイラストコンペに出品していたら、あるときそのイラストを編集者の土井章史さんが見てくださったんです。それで、「あとさき塾」という絵本のワークショップを始めるから来ませんか、と誘っていただいて。一期生として入りました。
あとさき塾では、塾生は最初からプロとして扱われます。だから、すごく厳しいことも言われるんですよ。でも、ダミーを持ってこいと言われても、なかなか思いつかなくて……見るのと、自分でつくるのとでは、全然違っていたんですね。やっぱり向いてないのかなと思って辞めようとしたんですけど、辞めるならその前に自分がどこまでできるのか、試してみようと思って。それで描いたのが、デビュー作となった『ラージャのカレー』。カレーの匂いが主人公のお話です。
絵本はそんなに儲かる仕事じゃないんだから、本当に自分が好きなことをやらないと時間がもったいないよって言われていたので、好きなもので描こうと思って、それでカレーにしました。辛いもの、好きなんですよ。それに、子どもはカレーが好きですしね。
今でも自分のことを、作家と名乗るのは違和感があります。一冊終わったら失業するのと同じことですから……たまたま今のところ続いてるっていうのが正確なところかな、と思っています。
いい子じゃない子を描きたいなと思って生まれたのが、フンガくんです。子どもの中の、マイナスな気持ちってありますよね。それを描きたいと思ったんです。
特定のモデルはいないんですけど、昔からちっちゃい子たちの面倒を見る環境で育ったので、子どもがぐずったりするのをよく見てきたんですよね。なので、そのとき見ていた子たちの姿がモデルといえばモデルです。それと、子どもだけじゃなくて、大人の中にも子どもっぽい部分はありますよね。急に機嫌が悪くなってふてくされたりとか。まぁ自分にもありますけど(笑) そういうのもフンガくんのキャラクターに入ってますね。
▲人気の「フンガくん」シリーズ。『フンガくん』、『おこりんぼフンガくん』、『べそっかきフンガくん』、『あわてんぼフンガくん』(いずれも小学館)。ほかに『あまえんぼフンガくん』、『くいしんぼフンガくん』がある。
子どもって、一日のうちに何回も泣いたり怒ったりしますよね。でも、放っておけばそのうちけろっと機嫌を直してたりして。自分でへそを曲げておきながら、なんとなく収拾がつかなくなってしまって、助け舟を待っているってときもあるでしょう。そんなときはいちいちカリカリせずに、ちょっとひとこと言ってあげるだけでもよかったりするんですよね。
読者のみなさんからは、「うちの子そっくり」という感想をよくいただきます。どこの家でも、子どもは不機嫌とご機嫌を繰り返してるんでしょうね。この絵本を読んだお母さんたちが、どこのうちの子もこんな感じなのかと少しでも楽に感じてくれたら、すごくうれしいです。
……国松エリカさんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→)