絵本作家インタビュー

vol.3 絵本作家 いしかわこうじさん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェ インタビュー」。今回は、ユニークな発想と暖かい色彩のイラストで広告や雑誌、WEB、キャラクターデザインなど幅広いジャンルで活躍するイラストレーター&絵本作家・いしかわこうじさんにご登場いただきます。ご自身もミーテ会員とおっしゃるいしかわさん。ミーテをどんな風に活用されているのか、49万部突破の人気シリーズ「かくれんぼ」かたぬき絵本はどのようにして生まれたのか、いろいろとお話を伺いました。
今回は【前編】をお届けします。 (【後編】はこちら→

いしかわこうじ氏

いしかわこうじ

1963年、千葉県生まれ。絵本作家、イラストレーター。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。1987年、第9回講談社童画グランプリで大賞。2004年、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展で入選。紙で作った小さな犬『ペーパーわんこ』と世界中を旅して撮影するプロジェクトを展開中。作品に『どうぶついろいろかくれんぼ』『のりものいろいろかくれんぼ』(ポプラ社)、『ちゅうたのはてなえほん1 このしっぽだあれ?』(講談社)、『世界を旅するペーパーわんこ』(河出書房新社)など。フランス・台湾・韓国など海外でも翻訳版が出版されている。 http://www.kojiishikawa.com/

時間をかけて楽しめる、それが絵本

小さい頃の僕は、お絵描きや工作、折り紙などが大好きな子どもでした。特に「色」というものに人一倍関心がありましたね。それで、高校ぐらいから絵描きになりたいなと思っていて。大学卒業後、イラストレーターとして仕事を始めたんですが、実は絵本づくりは、その頃からずっとやりたいと思ってたんですよ。でも、イラストレーターとして第一線でやれるレベルになりたいっていうのが目標としてあったので、しばらくはイラストの仕事に夢中になっていました。

ただ絵っていうのは、わりと瞬間的に楽しむものなんですよね。

▲ボローニャ国際絵本原画展に入選した“ペーパーわんこ”「コタロウの旅」

1枚1枚ぱっぱっと見ていく感じで。だから音楽とか小説とかみたいに、もう少し時間をかけて楽しんでもらうには、どうしたらいいんだろうっていうのがずっと頭にあって。

それで、2000年頃に始めたのが「ペーパーわんこ」という立体の犬のシリーズです。工作絵本みたいな感じのものなんですけど、そのペーパーわんこの写真をおはなしみたいにまとめたものが、ボローニャ国際絵本原画展に入選したんですね。ボローニャでは絵本作家として活動している人との出会いもあったりして、その頃からまた絵本づくりを考えるようになりました。絵本なら、ゆっくり時間をかけて、しかも何度も楽しんでもらえますからね。

年齢も国籍も関係なく楽しめる絵本を作りたい

▲ページをめくると何かが現れる!「かくれんぼ」かたぬき絵本シリーズ

『どうぶついろいろかくれんぼ』などの「かくれんぼ」かたぬき絵本シリーズは、鮮やかな色の中から形が現れる瞬間を体験できるような絵本を作りたい、というのが最初のコンセプトでした。結構アートっぽい実験的な絵本になりそうな気がしていたんですが、いろんな人の意見を聞きながら試行錯誤していくうちに、とてもポピュラーな絵本に仕上がったんです。

かたぬきがパッと重なった瞬間にピタッと決まるときの気持ちよさって、年齢は関係ないと思うんですよ。プリンの型をプルンッて出したときの感覚と同じで、大人でも子どもでもただ単純に気持ちいい。おじいさんに見せても、おもしろいねって言ってくれるんです。今、11カ月になる娘がいるんですが、娘は穴に手を入れたりして遊んでますね。穴を使って自分でページをめくってみたり。そういうおもちゃみたいな要素もあります。言葉がわかる子ならクイズみたいにしてもおもしろいし、「ねこってcatっていうんだ」と英語の勉強にしても楽しいし。いろんな年齢の人が楽しめる絵本にしたつもりです。

このシリーズはフランスや韓国でも出版されたんですが、形でパッとわかるから、どこの国の人でも楽しめるんですよね。文章だけじゃなくて、絵や色、形などで見せていく本っていうことで、年齢も国籍も関係ないというのが絵本の魅力だと思いますし、そういう絵本をつくっていきたいなと思っています。

ミーテはいろんな絵本との出会いの場

実は僕もミーテの会員なんです。絵本作家としても、子育て中のお父さんとしても、いろいろ参考になることが多くて、楽しませてもらってます。

ちっちゃい子がいると、絵本の売り場に行くのも大変だったりするじゃないですか。ベビーカーだと狭くて入れなかったりとかね。それに、本屋さんに行ったとしても、平積みになっている絵本ならまだしも、棚に差してある本を1冊1冊手にとるのは大変。だから、気になる絵本があると、他の人がどういう風に読んだのか感想を読んで、それを参考に絵本を買うこともありますよ。たまに、表紙だけ見てネットで注文して、思ってたのとちょっと違ったなんてこともありますからね。

この人の好きな本なら気に入るかも……といった感じで、いろんな絵本と出会えるのもいいですよね。本屋や図書館で絵本を探すのとはまた一味違う出会いがある。それってとてもうれしいことですよね。

絵本作りについてはまだまだわからないことだらけで、1冊1冊、未知の世界を切り開いている感じですが、やりながら勉強して、人の意見も聞いて、いろんなジャンルに長く読まれる絵本を残していきたいというのが僕の夢です。ミーテ会員のみなさんも、いろんなジャンルの絵本を読んでみてくださいね。


……いしかわこうじ先生のインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→


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