絵本作家インタビュー

vol.2 絵本専門店「トムズボックス」の代表 土井章史さん

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェ インタビュー」。今回は、東京・吉祥寺の小さな絵本専門店「トムズボックス」の代表・土井章史さんにお話を伺いました。絵本編集者歴20年・絵本店経営15年の土井さんが考える、絵本の魅力、絵本の楽しみ方とは?

土井章史

土井章史(どい・あきふみ)

1957年、広島市生まれ。東京・吉祥寺の絵本専門店トムズボックスを経営するかたわら、フリーの絵本編集者として300冊以上の絵本を企画編集。若手作家の育成にも力を注いでいる。編著に『長新太―ナンセンスの地平線からやってきた』(河出書房新社)。

ワクワクドキドキできる、それが絵本の魅力

▲入り口の看板には、井上洋介さんが考えたお店のマークが

吉祥寺駅から徒歩7分ほど、東急百貨店裏手の細い道を入ったところに絵本専門店トムズボックスはあります。紅茶店の奥にあるため、知らなければなかなかたどり着くことのないお店ですが、わざわざ遠くからこの店に来る人もいるとか。店内に所狭しと並ぶ絵本の数々は、絵本編集者でもある土井さんがこだわって集めた絵本ばかり。

『ムニャムニャゆきのバス』(偕成社)

「大好きな作家は、『キャベツくん』『おしゃべりなたまごやき』などで有名な長新太さん、『くまのこウーフ』の絵や『まがればまがりみち』『でんしゃえほん』の井上洋介さん。その2人を頂点に、片山健さん、スズキコージさん、荒井良二さんといった絵本作家が好きなんです」

『ムニャムニャゆきのバス』など、長新太さんの絵本に編集者としてかかわってこられた土井さんは、絵本の魅力を「ワクワクドキドキできるところ」と語ります。

「大人が読んでいても、子どもの頃のワクワクドキドキした気持ちを思い出しますよね。特に長新太さんや井上洋介さんの、子どもが持ってる天性のナンセンスなところを感じさせる絵本はすごく魅力的。子どもにも大人にも、こういうナンセンス絵本を喜んで読んでもらえるとうれしいですね」

絵本は親子のスキンシップのためのツール

▲お店には約3000冊の絵本が並んでいます

土井さんが子どもの頃は、今ほどいろんな絵本はなかったといいます。そのかわりにあったのが、おばあちゃんが語ってくれた昔話。

「子育てには絵本が絶対必要ってわけじゃないんです。3歳ぐらいまでで一番大切なのは、親子のスキンシップ。スキンシップは子どもに『戻ってくる場所があるんだ』と実感させて、心を安定させます。絵本はあくまでも、そのためのツールなんですよ。だから別に既成の絵本じゃなくても、手作りの絵本だっていいし、お父さんお母さんがつくったお話を聞かせるだけでもいいんです。

やってほしくないことは、平仮名を覚えさせるためのお勉強のツールとして絵本を使うことですね。もし子どもが集中できずに途中で絵本を閉じてしまったとしても、むりやり読ませる必要はないんです。子どものペースで楽しく読むことが大切ですし、親も子どもとのスキンシップを楽しみながら読んでほしいなと思います」

たった1冊でもいい お気に入りの絵本を見つけよう

▲土井さんの大好きな絵本作家による作品展も開催。4月は片山健さん

気に入った絵本があると、何度も何度も「もう1回」とせがまれることがありますが、「『こればっかり』と嫌がらずに何度も読んであげて」と土井さんは言います。

「1冊でもお気に入りの絵本があれば、その子は幸せ。何冊も何冊も、たくさんの絵本を読む必要はないんです。同じ絵本を何度も何度もせがまれたら、何度でも何度でも読んであげてほしいですね」

また、絵本の選び方について伺ったところ、「なんでもいいと思うんですが、あえて言えば、親の既成概念で選ばないことですね」とのこと。

「ベストセラーのこれとこれは必ず読ませないと、なんて決まりはないんです。ブックリストとか店員のおすすめとか、帯に『いい絵本』と書いてあるとか、どうしてもそういうのに頼りがちだと思いますが、できればそういうのに頼らないで、それぞれの親の価値観や子どもの価値観で選べるといいですよね。

図書館でいろんな絵本を手にとって、その中で子どものお気に入りの絵本が見つかったら買えばそれでいい。成長してきたら、子ども自身に選ばせてあげるのが理想ですね」

お子さんにとってのとびきりお気に入りの1冊、みなさんも見つけてみてくださいね。

トムズボックス
http://www.tomsbox.co.jp/
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-14-7
営業時間:午前11時~午後8時 木曜定休
 ※2019年に、杉並区西荻北3−11−16に移転。営業時間などの詳細はホームページ。

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