絵本作家インタビュー

vol.155 絵本作家 くすのきしげのりさん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回は、『おこだでませんように』などの作品で人気の絵本作家・くすのきしげのりさんにご登場いただきます。26年間、小学校の先生として勤めてこられたくすのきさん。作品の中には、教員時代に出会った子どもたちが登場することもあるそうです。子どもの気持ちにやさしく寄り添うストーリーの数々は、どのようにして生まれるのでしょうか。
今回は【後編】をお届けします。(←【前編】はこちら

絵本作家・くすのきしげのりさん

くすのき しげのり

1961年、徳島県生まれ。鳴門教育大学大学院修了。小学校教諭、鳴門市立図書館副館長などを経て、「オフィスKUSUNOKI」を設立。作家として児童文学を中心とした創作活動と全国での講演活動を続ける。『おこだでませんように』(絵・石井聖岳、小学館)、『ふくびき』(絵・狩野富貴子、小学館)、『ともだちやもんな、ぼくら』(絵・福田岩緒、えほんの杜)、『みずいろのマフラー』(絵・松成真理子、童心社)など作品多数。
http://www.kusunokishigenori.jp/

作品づくりで、とくべつ大事な最初と最後

みずいろのマフラー

▲転校生のヨースケと、ぼくらの人間関係を通じて、本当の友だちとは?を考えるきっかけとなる一冊『みずいろのマフラー』(絵・松成真理子、童心社)

今、2年後くらいまでに出版を予定している作品がたくさんあるんですね。進み具合が違うから、何作でも並行して書いていけるんですけど、作品づくりの最初と最後はものすごく大事で、そのときは本当に神経を研ぎ澄まして、吐きそうなくらいに集中して取り組みます。

最初というのは、全体の構想をまとめるときのことです。僕は普段から誰かと話をしたり、いろんなものを見たり考えたりする中で、気になったことをメモで残すようにしているんですね。その中から作品が生まれたりするんですけど、作品として形にしていくときには、朝から嫌な事件のニュースは見ないようにするなどして、気持ちを整えて執筆に臨むことが大切なんです。それさえできれば、このときこの子だったらこう言うだろうな、この子だったらこうするだろうなというように、登場人物が自然と動き出すので、いくらでも書けるようになります。

最後の仕上げ、僕は“作品を研ぐ”と呼んでいるんですが、その研ぎあげるときというのもものすごく大事。ちょっとした風の音すらうるさいなと感じることもあるので、窓を閉めて、余計な刺激はすべて取り払って、静かなところで作業をします。

それ以外は、喫茶店や車の中で書いたり、冬だったらこたつに肩までもぐって書いたり、ぐうたらしながら書いているときもあるんですけどね(笑) 最初と最後だけは、とくべつ大事で、ものすごく大変です。

わかっているつもりでわかっていない、子どもの心の中

僕の作品は、男の子のお話もあれば、女の子のお話もあるし、動物が主人公のものもあれば、ピアノが主人公のものもあります。それぞれ、そこにどういう心の動きがあるか、想像をふくらませて書いていくんですね。

子どもの心に寄り添うことは、トレーニングを重ねればできるようになると思います。想像するトレーニングや、共感するトレーニングです。そこで大事なのは、このくらいの年齢の子どもはこうだ、という風な目で見ないということ。できる限り先入観を持たないようにすることです。一人一人、そのときどきで動いている心があって、いいことも考えれば、いたずらも考えるし、どんどん夢がふくらむこともあれば、がんばったことを認めてもらえずしゅんとしてしまうこともある。一人一人、一つずつ心があって、その心もそのときどきで、いろんなことを考えて動いているんだと捉えることが、とても大事です。

たとえば、うちの娘が3歳ぐらいのときに、指をなめてたんですね。それで僕が「指なめたらいかんよ」と注意したら、「お父さん、指なめてるんと違う、ベロが気持ち悪いから指で触ってるだけ」って言ったんです。最初は屁理屈言って、と思ったんですけど、よく考えてみたら、娘が違うというのも当然なんですよね。指をなめているのと、舌が気持ち悪いから指で触っているのとでは、はたからみたら同じようにしか見えないけれど、娘にとっては全然違うことなんですから。

そういうようなことが、往々にしてあるわけです。だからみなさんには、子どものことについて、もちろん子どもに限らず大人であっても、動植物であっても、さらには無生物であってもそうなのですが、私たちは、わかっているつもりでも、わかっていないことがあるのだということを、わかっておいてほしいなと思います。

ええところ
へなちょこ

▲揺れ動く子どもの気持ちに寄り添い、思いやりと自己肯定感を育てる絵本『ええところ』、自分の弱さと向き合い、前に進む姿を描いた絵本『へなちょこ』(いずれも絵・ふるしょうようこ、学研教育出版)

お父さんお母さんも、一緒に絵本を楽しもう!

ふくびき

▲大好きなお母ちゃんにクリスマスプレゼントを買いに出かけた幼い姉と弟。二人がお母ちゃんに贈った最高のプレゼントとは…?『ふくびき』(絵・狩野富貴子、小学館)

僕も娘が小さい頃は、よく絵本の読み聞かせをしていました。4歳ぐらいの頃には、娘が僕に読み聞かせをしてくれたこともあったんですよ。「ここはポコちゃん、ここはメルちゃん、ここはプーさん、ここはお父さん」とか言って、人形やぬいぐるみと一緒に座らされて(笑) とてもうれしかったので、よく覚えています。

絵本の読み聞かせには、語彙が増えたり、情緒的に豊かになったり、いろいろな知識が得られたりといった、さまざまな効果がありますが、一番大事なのはそんなことよりもまず、絵本を楽しむということです。

お父さんもお母さんも仕事や家事で忙しいと思うんですが、お父さんお母さんが忙しいってことは、実は子どももよくわかってるんですよね。でもだからこそ、子どもが「絵本、読んで」と言ったら、ほんの5分、10分程度なわけですから、そのときはしっかりと一緒に絵本を読んでください。

子どものために読む、ではなく、子どもと一緒にその時間を楽しむ、というつもりで読むといいですね。子どもにとっては、自分とお父さんお母さんをつなぐ大切なものとして絵本が存在することになりますし、お父さんお母さんにとっては、あとで振り返ったときに、人生の中でも本当に大切な、そして幸せな時間として思い出すことができるはずです。


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