絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回は、カラフルな色彩にシンプルでキュートなイラストのタッチで人気の、かしわらあきおさんにご登場いただきます。制作プロダクションに所属され、キャラクター開発などのプランナー、デザイナー、そして絵本作家として活躍されているかしわらさんの、子ども時代のエピソードや、さまざまな作品についてお話をお聞きしました。
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1969年、兵庫県生まれ。神戸デザイナー学院・グラフィックデザイン科卒。クリエイティブディレクターとして京田クリエーションに所属し、絵本作家としても活動。2004年「えいごえほん」シリーズで絵本デビュー。絵本には「いっしょにあそぼ」シリーズ(学研教育出版)や、「ゆびあそぶっく」シリーズ(ひかりのくに)など、乳幼児向けの作品多数。2012年『ちょんちょんちょん(ゆびあそぶっく)』(日本出版販売株式会社)で「第1回デジタルえほんアワード グランプリ」受賞、「ほんとのおおきさ」シリーズの4冊が(学研教育出版)で2009年、2010年、2012年の「Parents' Choice Award ノンフィクション部門・金賞」受賞。
かしわらあきお公式ブログ「かっしー日記」: http://kassinikki.jugem.jp/
絵本づくりのプロセスについては、僕の場合は、電車の中などでフッと浮かんだ文字や単語をもとにアイデアをふくらませていきます。社内吊りや聞こえてくる会話からインスピレーションを受けたりして頭に浮かんだ言葉を、文章にはしないでとりあえず書き留める。後からそれらを眺めて、「これをキャラクターにするならどういう形?」から始まって、「これ、どうなっていくんやろ~」と楽しみながら妄想していく(笑) 初めから「おもしろいものを考えよう!」と狙ったら案外ダメで、意外なところから入る方が、いい着地ができるような気がします。
絵本売り場には、最初は勉強がてら行ってましたが、絵本の数の分だけきちんと世界が広がっていることに気づきました。絵本の表紙は、別世界に行くための扉、ページをめくるだけで違う世界に行ける…絵本が持っている、そんな感覚が好きで、今ではひんぱんに通っています。
絵本づくりの楽しい点は、自分が想像すること全部を実現できるボーダーレスな世界で、「何でもできる」ところですね。一般のデザインはルールに沿ってきちんと仕上げるための約束ごとがいろいろあるけれど、絵本は自由。どんなアイデアでも盛り込めます。
苦労する点は、やはりアイデアが出ない時でしょうか。アイデアって気持ちに左右されるので、落ち込んでいる時は暗い話しか浮かばないし、気持ちが上がっている時はおもしろいアイデアが出たりする、そんな波がありますよね。まぁこれに関しては、きっとどんな仕事でもあてはまる話なのでしょうね。
じつは絵については、「イラストレーター」というソフトを使って、下書きなしで描いています。下書きをしてから描くと、なんだか線が整理されてしまうんですよね。その時の「意外性」を大事にしています。アイデアをふくらませていく時と同じように、下書きをして本番に臨むと、着地点も自分の中の想像を超えてこないんです。だから、なるべく意外な表現ができるよう、心がけています。あ、下書きが必要な時はもちろん描いてますよ(笑)
僕の作品を手に取った人たちに、ワクワク・ドキドキ、楽しい気分になってほしいです。ワクワクは、子どもの健全な成長にとても良いことだと思うので、たくさん盛り込むようにしています。
お気に入りの作品は、やはり一番は『しましまぐるぐる』。誌面は、はっきりとした色と特徴的な形で構成されていて、生まれて間もない、視力が定まっていない赤ちゃんにもわかりやすい内容です。数々のデザインを手がけてきた中でも、自分のデザインでやりたいことがダイレクトにできたと思える作品です。
今までにシリーズで5冊出ており、4冊は赤、黄、オレンジ、緑と、色ごとに分けられています。好きな色や気分で選んでも楽しいですね(笑)
▲赤い丸、赤いりんご、黒いながぐつ、白いねこ。黄色と黒のしましまハチが、バナナ、プリンにぶんぶん。みかんのかわいいキャラクターが隠れたりジュースになったり。緑のかわいいカエルがぴょんぴょん!赤ちゃんくぎ付けの楽しい絵本。『あかあかくろくろ(いっしょにあそぼ)』『ぶんぶんきいろ(いっしょにあそぼ)』『みかんオレンジ(いっしょにあそぼ)』『けろけろみどり(いっしょにあそぼ)』(学研教育出版)
ひかりのくにさんから「指を使って遊ぶ絵本ができないでしょうか」と依頼をいただいてつくった絵本が「ゆびあそぶっく」シリーズ(ひかりのくに)です。指で遊ぶという行為は、かなりおもちゃに近いので、おもちゃっぽいデザインにしました。本当に楽しい絵本ですので、イラストの配置や言葉選びはリズム感を大切にし、紙面からもその楽しさが溢れ出してくるよう何度もやり直しをしながらの制作でした。
いろいろな指の動きが楽しめるものが5冊、口で吹いて遊ぶものが1冊、シリーズとして計6冊出ています。読みものではないので「一緒に遊べて使いやすい」と、お父さん方に人気があるとお聞きしました。
▲言葉に合わせて、指で絵を押して、なぞって、たたいて遊ぶ参加型絵本。『ちょんちょんちょん(さわっておしてゆびあそぶっく)』『つつつつつー(なぞってたどってゆびあそぶっく)』『ぽんぽんぽん(たたいてはずんでゆびあそぶっく)』『ひょいひょいひょい(つまんでひっぱれゆびあそぶっく)』『な~でなで(なでてさすってゆびあそぶっく)』『ふーふーふー(ふいてとばしてくちあそぶっく)』(ひかりのくに)
読み聞かせについてはうちの場合、妻の方が積極的で、僕は寝る前にたまに、でした。絵本をきっちりと読む時もありましたが、自分でつくった話を聞かせることも多かったですね。子どもたちは即興で作ったでたらめな僕の話でも、集中して聞いていました。おそらく「読み聞かせ」は、お話の内容より、親の声を聞かせてあげることが大事なんだと思います。
今後も、絵本に関しては、ワクワクできる作品をつくっていきたいですが、絵本に限らず、いろいろなことにトライしたいです。たとえば、『ほんとのおおきさ動物園』(学研教育出版)という図鑑では、やわらかいタッチの文字やイラストをレイアウトし、図鑑をハードな写真集ではなく、絵本っぽく親しみやすい雰囲気に仕上げました。
こんな風に、「情報」をデザインによっておもしろく人に伝え、世の中を少しでも楽しくするお手伝いができたらと思っています。先日手がけた、長野市の名産品・えのきだけをモチーフにしたキャラ『えのたんとキノコフレンズ』があるのですが、このようなみんなが笑顔になれるものをたくさんつくっていきたいですね。
▲動物や昆虫の全身写真を大きく拡大し、からだのつくり・しくみを、インパクトのあるビジュアルで紹介する、新しいタイプの図鑑。『ほんとのおおきさ動物園』 『もっと!ほんとのおおきさ動物園』 『ほんとのおおきさ水族館』 『ほんとのおおきさ・なかよし動物園』 『ほんとのおおきさ特別編・元気です!東北の動物たち』 『もっと!ほんとのおおきさ水族館』 『びっくり!ジャンボ昆虫園』 (学研教育出版)