絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、しかけ絵本『のりものつみき』や「だーれ?」シリーズなどが世界中で人気の絵本作家・よねづゆうすけさんです。シンプルで色鮮やかなしかけ絵本は、子どもはもちろん大人にも支持されています。絵本作家になったきっかけや、もうすぐ1歳になるというお子さんとの絵本の関わり方を伺いました。(【後編】はこちら→)
1982年、東京都生まれ。東海大学教養学部芸術学科デザイン学課程卒業。2005年イタリア・ボローニャ国際絵本原画展入選。2007年『Bye-ByeBinky』(日本未発売)で絵本作家デビュー。日本語に翻訳された絵本に『のりものつみき』『にじいろカメレオン』『たべもの だーれ?』(以上、講談社)などがある。イラストレーターとしても活躍中。
ウェブサイト:http://yonezoo.com/
▲『Bye-Bye Binky』タイトルを直訳すると『ばいばいおしゃぶりさん』。イタリア、アメリカ、フランス、ドイツ、フィンランドなどで出版されています。
大学生の頃、友人たちとイラストの展示会などをしていた時、絵を見てくれた人に「絵本っぽい絵だね」と言われたことがきっかけになって、絵本づくりを始めました。それまでは、イラストレーターというポジションは考えたことがあったものの、絵本作家ということは考えたことがなかったですね。その絵は今とは作風が違う一枚絵だったんですけど、物語性を感じられたようで、そう言われて初めて「そうなのかな」と思い、絵本をつくってみようと思い立ちました。
その後、つくった作品を絵本のコンペに出すようになり、大学を卒業してすぐに、イタリアのボローニャで開催されている絵本コンペ、ボローニャ国際絵本原画展に応募しました。幸い応募して2回目で入選することができて、入選した年にボローニャの絵本見本市に売り込みに行きました。
その見本市会場はイタリアですが、世界中の出版社がブースを出しているんです。僕は英語がほとんど話せないのですが、売り込みに行った時も、作品を見てもらえばまあなんとかなるだろうと思って、覚えていった英語も、「作品を見てください」と「出版したいです」というふたつぐらい(笑) あとはなんとなく、反応が良かったら、「あとでメールします」と伝えて。メールだったら翻訳サイトとかがあるので、それでゆっくりとやりとりできるかなと思っていました。
そうやって、今もお付き合いしているmineditionというスイスの出版社に出会いました。minedition社は、世界中で本を出版している会社で、日本にも年に3~4回仕事で来る機会があるそうで、その時も編集の方に、イタリアで「日本で会おう」と言われ、その数ヵ月後に日本で再会しました。それが2005年のことです。そして絵本1作目となる『Bye-Bye Binky』がイタリアで出版されたのが2007年になるので、結構時間がかかってしまいましたね。
ストーリーは用意されていたので、僕は絵だけを担当したのですが、僕自身初めての絵本ということもあり、その上、海外作品ということもあって苦戦をしながら仕上げました。あいにくこの作品の日本語版は発売されていません。そもそもそのほかの作品も、まずイタリアやイギリス、ロシアなど海外の10ヵ国ほどで出版されてから、それが日本語に翻訳され、逆輸入という形で日本でも出版されています。
▲「つみきでのりものなにつくる?」とページをめくると、車やロケットが登場!穴あきしかけ絵本。『のりものつみき』(講談社)
最初に日本語版が出た絵本は、2011年に発売になった『のりものつみき』になります。しかけ絵本のキャラクターとしかけのアイデアは自分で出していますが、もともとストーリー絵本をつくることをイメージしていたので、しかけ絵本をつくることになるとは、まったく想像していませんでしたね。
しかけ絵本を手掛けるきっかけになったのは、デビュー作に登場するネコを使って、赤ちゃん向けの絵本、ボードブックをつくることになったから。赤ちゃんが触るので丈夫なつくりにして、しかけもシンプルに、というコンセプトを元に、自分で案を考えていくうちに色々とアイデアが出てきて、そしてそれを提案したらすごく反応が良くて。昔からアイデアを出したり、作業が得意というのがあったので、これは自分でも向いているのかな?と思いましたね。
『のりものつみき』は穴あき絵本で、つみきが並べられたページをめくると、つみきでできた乗り物が出てくるようになっています。大人でも初めて見る人は、何が出てくるのか当てられなかったりするようなんですよね。逆に大人よりも子どもの方が先に、何が出てくるか当てる時もあるから、おもしろいですね。想像力が豊かなのかな。子どもだけじゃなく、大人でも楽しめるつくりになっているので、プレゼントにもよく利用されているそうです。
しかけ絵本は、赤ちゃん向けの絵本ということもあって、意識したのは黒くて太い輪郭線とはっきりした色合い。小さい子でも認識できるように。シンプルだけど大きな驚きを、というのを意識してつくりました。
▲鳥さんたちがぴたっ!とくっつくとどんな形ができ上がる? しかけ絵本。『ぴたっ!』(講談社)
▲ねずみさんが泣くと、どんどんみんな泣きだして……。楽しいしかけ絵本。『えーん えん!』(講談社)
『ぴたっ!』や『えーん えん!』みたいな擬音語は、海外にはないみたいです。だから他の国で出ている絵本のタイトルは、日本語版とはニュアンスが違ったりしているんですよね。その国の文化の違いとかもあるので、自分の中では日本語でイメージしていますが、外国版のタイトルは翻訳の方におまかせしています。いきなり10ヵ国同時に出版したりするので、どこの国でも受け入れられるように意識しなければいけないので、キャラクターづくりには最初手こずりました。
例えば、メロンを描いたら、国によってはメロンを食べない国もあるそうで却下になったり、日本にしかないものは登場させられません。実際に描いたわけではないけど、こたつは日本にしかないからダメと言われました。外国の人から見たら、「なんで机に布団がかかっているのか?」って思うそうで(笑)
うちには今10ヵ月の子どもがいて、結構小さいうちから自分のしかけ絵本を見せていたんですけど、ページをめくって、何かが出てくるってだけで楽しいようです。まだ小さいので、何が出てくるか当てるとかはできないんですけど、めくる楽しさと、何かが出てくるというおどろきを感じる、まずはそこからでいいのかなと思っています。もう少し大きくなったら、当てるということを楽しんでもらえたらいいのかなと思いますね。
だから今は、絵本を読んであげると言うよりは、一緒に絵本を見て遊んでいるような感じですね。絵本をおもちゃ感覚で与えています。見ていると、時期によって好みと言うか、よく触るものがあるんですよね。穴が開いているしかけ絵本を触るのが好きな時もあるし、ただめくるのが楽しいみたいな時もあるし、一週間前はこれが好きだったけど、次はこれが好き、みたいな。どんな好みがあって、どんどん変化していくかがわかっておもしろいですね。
……よねづゆうすけさんのインタビューは後編へとまだまだ続きます。(【後編】はこちら→)